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東京に巻き起こったロードカナロア旋風

  • 2020年05月18日(月) 18時00分

先週の血統ピックアップ


・5/17 ヴィクトリアマイル(GI・東京・芝1600m)
 好位を追走したアーモンドアイが直線で楽々と抜け出し、サウンドキアラ以下に4馬身差をつけて圧勝しました。前日の雨の影響で第4Rまでは稍重。そして、軽く仕掛けた程度でレコードタイムに0秒1差まで迫りました。絶対能力の違いとしか言いようがありません。

 2009年にウオッカが後続に7馬身差をつけましたが、今回のパフォーマンスはそれ以来のものです。ウオッカは牝馬ながら日本ダービー、ジャパンC、天皇賞・秋などを制覇し、牡馬に交じって繰り返しGIを勝ちましたが、こうした女傑は、牝馬という枠内に留まる馬と比べて格段に強いということです。

 アーモンドアイの母フサイチパンドラはエリザベス女王杯の勝ち馬でオークス2着。そのスタミナの影響で2400mまでこなし、ロードカナロア産駒のなかで距離適性に関してはサートゥルナーリア(母がオークス馬)と並んで例外的な存在です。ただ、やはり父のスタンダードな適正距離である1600mでは驚異的に強く、この距離では昨年の安田記念のような致命的な不利を被らないかぎり負けようがないでしょう。

・5/16 京王杯スプリングC(GII・東京・芝1400m)
 大外枠から果敢にハナを切ったダノンスマッシュがステルヴィオ以下の追撃を振り切って逃げ切りました。3歳夏から芝1200mを使い続けてきたので、それ以外の距離で走るのは1年10ヵ月ぶり。そして、スタートから逃げたのはデビュー以来初めて。これまでのダノンスマッシュの殻を破る新しいスタイルでの勝利でした。

 東京芝1400mはロードカナロア産駒の成績が優秀ですが、1着ダノンスマッシュ、2着ステルヴィオ、3着グルーヴィットと、上位3頭を独占しました。同産駒の重賞1〜3着独占は初めてです。

 ロードカナロアはサンデーサイレンスを抱えた繁殖牝馬との間に優れた産駒を出しているのですが、ダノンスマッシュは母スピニングワイルドキャットが輸入牝馬なので、サンデーサイレンスを持っていません。同産駒の収得賞金上位10頭中、サンデーを持たない馬はダノンスマッシュのみです。重賞勝ち馬11頭中、サンデーフリーの配合馬はダノンスマッシュとイベリスの2頭しかいません。この配合馬は父の最大の長所であるスピードを活かすタイプがほとんどです。

今週の血統注目馬は?


・5/23 高尾特別(2勝クラス・東京・芝1400m)
 東京芝1400mに良績のある種牡馬はロードカナロア。先週の京王杯SCで1〜3着を独占したようにこのコースでは強く、連対率は29.7%。2010年以降、当コースで産駒が20走以上した101頭の種牡馬のなかでトップの成績です。当レースには3頭登録していますが、注目はココフィーユとリリーバレロ。いずれも前走このクラスで3着と好走しており、今回は勝ち負けに持ち込めるでしょう。

今週の血統Tips


 過去10年間にオークス馬は11頭誕生しています。アパパネとサンテミリオンが2010年に同着優勝しているからです。激しい叩き合いの末、ゴール前でサンテミリオンが出ているようにも見えたのですが、長い写真判定の結果、同着となりました。クラシックの同着優勝は史上初です。

 桜花賞を勝っていたアパパネは、10月の秋華賞も勝って牝馬三冠を達成しました。一方、サンテミリオンは6歳1月まで走ったものの一度も馬券に絡むことなく尻すぼみのまま引退しました。

 繁殖牝馬としてもアパパネがリードしており、これまでにデビューを果たした3頭はいずれも勝ち上がっただけでなく、ジナンボーが新潟記念で2着、ラインベックが東京スポーツ杯2歳Sで3着となっています。それらの全妹で現2歳のアカイトリノムスメは牧場の評価が高く、POGでも人気馬となりそうです。

 サンテミリオンの仔はいまのところ4頭デビューしましたが、JRAで勝った馬はいません。ただ、現2歳のシャドウモノリスという牡馬はロードカナロア産駒で、配合的に優れていると思われるだけに個人的には期待しています。母が大一番で生涯最高のパフォーマンスを披露したように、繁殖牝馬としても一発大物を出せるのではないかという予感がします。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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