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【日本ダービー写真展】『王者の眼』&『勝者の拳』ロジャーバローズ、レイデオロら――下野雄規カメラマン作品集 (無料公開)

  • 2020年05月26日(火) 18時01分
いよいよ今週末に迫った日本ダービー。今年はJRA史上初の無観客での開催となります。そこで、おうちにいながらでもダービーの興奮と感動を味わっていただこうと、4名の競馬カメラマンによるWEB写真展を開催します。

今日から2日間登場するのは下野雄規カメラマン。作品テーマは『王者の眼』(5/25公開)と『勝者の拳』(5/26公開)です。

『王者の眼』ではウオッカやオルフェーヴルなど名馬の美しい瞳にフォーカス。『勝者の拳』では、勝利したジョッキーたちの熱いガッツポーズをお見せします。


5/26公開分


馬ラエティBOX
2018年 ワグネリアン&福永
1番人気に支持された皐月賞は7着。福永騎手はその敗因について、「自分の過信があった」と振り返り、ダービーでの巻き返しに燃えていた。が、レースまでの約1カ月半、「皐月賞前とは一変して、全然取材がこなくなった(笑)」という。その空気感通り、5番人気まで評価を下げた日本ダービー。しかも、引き当てたのは8枠17番。逆にこれで腹を括った。難関といわれる1コーナーで、外から積極的にポジションを取りに行く好騎乗。皐月賞は過信に泣いたが、ダービーは自信でつかみ取った。19回目の挑戦で悲願のダービー初制覇。力強いガッツポーズとともに、祐一スマイルが弾けた。


馬ラエティBOX
2019年 ロジャーバローズ&浜中
勝利の感想を問われ、「あ、勝っちゃったよ、と思いました」と、率直に振り返った浜中騎手。ダービーでの2ケタ人気馬の勝利は(ロジャーバローズは12番人気)、1966年のテイトオー以来53年ぶり、グレード制導入以降は初の快挙だったのだから無理もない。しかも、「今年はダービーに乗れないな…」とあきらめていたところで、四位騎手の騎乗停止により、たまたま巡ってきたパートナーだ。とはいえ、初騎乗となった前走京都新聞杯で馬の特徴をつかみ、持ち味を存分に生かした好騎乗だった。一度はリーディングに輝きながらも、その後、低迷期を経験した浜中騎手。復活の狼煙ともいえる雄叫びだった。


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2017年 レイデオロ&ルメール
サトノダイヤモンドとともに挑んだ前年のダービーでは、ハナ差で涙をのんだルメール騎手。しかも勝ったのは、かつて自身が手綱を取っていたマカヒキだった。そんな過程がありながら、ゴール直後、勝った川田騎手に「おめでとう」と声を掛け、すかさず握手を求めたジェントルマン。2017年のレイデオロでは、道中で一気にポジションを上げたのち、その場でピタリと折り合いをつけるという高度な技術を見せつけ、見事にダービー初制覇。いつも冷静なジェントルマンが、右手の拳を二度三度、力強く握りしめた。


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2015年 ドゥラメンテ&デムーロ
デムーロ騎手にとってドゥラメンテは、JRAの通年免許を取得して最初の年に出会ったパートナー。ダービーはすでにネオユニヴァースで勝っていたが(2003年)、当時は短期免許で、騎乗も限定的な身。ネオユニヴァースのダービーとドゥラメンテのそれは、プレッシャーという意味でまるで別物だったという。その証拠に、派手なガッツポーズはなく、左手を握りしめるのが精一杯。「いろんなことが頭に浮かんで、ガッツポーズまで頭が回らなかった」と振り返った。


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2005年 ディープインパクト&武豊
ダービーという一世一代の大舞台で、単勝1.1倍、実に73.4%の単勝シェア率を誇ったディープインパクト(ディープ史上最高は、菊花賞の79.0%)。武豊騎手のプレッシャーたるや、いかばかりだったか。武豊騎手といえば、この時点でダービーを3勝していたが、思えば悲願のダービー制覇となったスペシャルウィークのときから涙はなし。このときも、爽やかな笑顔とともに、スタンドの観客に向けて右手を握りしめた。プレッシャーから解き放たれた名手のガッツポーズ、まるで絵画のような美しさだ。


5/25公開分


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2016年優勝馬 マカヒキ
前年10月の京都芝1800mでデビュー。直線は持ったままで先頭に立ち、ほとんど追うところなく2馬身半差の圧勝を飾った。初戦の鞍上はミルコ・デムーロ騎手で、その楽勝っぷりは、ゴール板を待たずに馬の首を撫でたほど。その後はルメール騎手に手が替わり、若駒S、弥生賞と2連勝。皐月賞(2着)からコンビを組んだ川田将雅騎手とともに、世代の頂点を極めた。昨年のジャパンCでは、最後方から追い込んで4着。早々に引退してしまうダービー馬が多いなか、7歳になった今もなお活躍を続ける息の長いダービー馬だ。


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2014年優勝馬 ワンアンドオンリー
1990年のツルマルミマタオー(4着)から、挑み続けること19回。その間、ダンスインザダーク、ハーツクライ、リーチザクラウン、ローズキングダムで4度の2着を経験してきた橋口弘次郎調教師にとって、ダービーの頂はまさに悲願だった。その悲願を成就させたのが、ハーツクライ産駒のワンアンドオンリー、そしてダービー時の父の鞍上、横山典弘騎手。いつにない積極策で好位を進み、直線では1番人気イスラボニータとの長い叩き合いの末、世代の頂点に立った。「もう勝てないかと思った…」と喜びを噛みしめた橋口調教師。その後は苦戦が続いたが、名伯楽の夢を叶えた孝行息子だった。


馬ラエティBOX
2011年優勝馬 オルフェーヴル
今となっては信じられないが、皐月賞の時点では“4番人気”の存在だったオルフェーヴル。それが、東日本大震災の影響により、東京競馬場で開催されたその皐月賞で3馬身差の圧勝を飾って以降、混戦ムードだった牡馬クラシック戦線ににわかに“一強ムード”が漂い始めた。迎えたダービーは、単勝3.0倍の1番人気。のちの怪物としてはやや不本意な支持率も、土砂降りの不良馬場をモノともせず、直線は力強く抜け出してきて2冠を達成。不動の一強を決定づけた。とはいえ、結果的にこのダービーは本格化前。怪物伝説の序章にすぎなかった。


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2007年優勝馬 ウオッカ
「初めて跨ったときから“この馬は違う!”と思った。ワクワクしたよ」と四位騎手に言わしめ、桜花賞前からダービー挑戦プランが上がっていた天才少女が、並み居る男馬たちを従えてトップゴールをはたした2007年。64年ぶりとなる牝馬の勝利に、競馬場は例年とは違うどよめきに包まれた。「いい勝負ができる自信はあったけど、まさか勝てるとは思わなかった」と振り返った四位騎手だが、計時した上がり33秒フラットは、レース全体の上がりを1秒以上上回る極上の切れ味で、歴史的名牝の誕生を強烈に印象づけた。


馬ラエティBOX
2006年優勝馬 メイショウサムソン
ディープインパクトの衝撃から一年。2006年のダービーは、競馬場全体が温かい祝福ムードに包まれた。勝ったのは1番人気メイショウサムソン。1000m通過62秒5という超のつくスローペースのなか、道中は内々4、5番手を進み、直線は逃げ粘るアドマイヤメインをクビ差競り落とした。着差こそわずかだが、最後は鞍上・石橋守騎手が手綱を抑える余裕の勝利。サムソンの勝負強さに懸けた好騎乗で、パートナーを二冠馬に導いた。デビュー22年目でダービージョッキーの称号を手に入れた石橋騎手だったが、ガッツポーズなし、涙もなし。粛々と勝利を噛みしめる姿が、逆にダービーというレースの重みを感じさせた。



【本人コメント】

 ダービー当日は、カメラマンにとっても緊張感のある一日です。「ちゃんと撮れますように」と祈りつつ、撮影場所の確保のためにいつもより早く競馬場に入るのですが、僕らフリーのカメラマンは、どうしても後ろのほうになってしまう。つまり、カメラを構える位置が普段とは違うんですね。

 そんななか、ダービーで多いのが、外から差してきて届かない…というケース。「あ、あそこから差し切るな」と思ってレンズを外に振っても、実際はもっと手前にゴールがあって、失敗してしまうケースもあります。

 ロジャーバローズが勝った昨年も、ヤラかしてしまったカメラマンは多いはず(笑)。「絶対に失敗できない」という意識のなか、そういった難しさがあるので、ダービーはより緊張感が高まるんですよね。

 また、すべてのレースにいえることですが、あらかじめ狙いを定めた馬の直線の進路をシミュレーションして、それによってレンズを使い分けています。GIの場合は、そのジョッキーがどんなガッツポーズをするのかも大事な要素。なぜなら、レンズ選びを間違うと、ガッツポーズがはみ出してしまうんですよ。

 たとえば、蛯名騎手や横山典弘騎手は、喜びが爆発すると馬の上で立ち上がることがあるので、レンズによっては馬が入らない…なんていうことも(笑)。そういう判断ひとつをとっても、ダービーはより精度を上げて挑まなくてはいけませんし、やっぱり特別な一日です。無事に終わったら、本当にホッとしますね。

 ただ、ホッとひと息ついていると、あれよあれよで目黒記念(笑)。当然、目黒記念も大事なレースなので、とにかく最後まで気が抜けない一日です。

【プロフィール】
1969年、神奈川県生まれ。東京工芸大学卒業。一級建築士を取得後に独立するが、建築に興味を持てず、子供の頃から好きだった競走馬の姿を写真に収めたくてカメラマンを目指す。1996年、JRAのプレス章を取得。netkeiba発足時の社長に声を掛けられてからはnetkeibaをメインに撮影。他に、クラブ法人数社の撮影も請け負う。

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