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【オークス】無敗の3冠牝馬誕生のチャンスが出てきた

  • 2020年05月25日(月) 18時00分

騎手のウデが光りどの馬も能力は出し切っている


 圧倒的な支持をうけたデアリングタクト(父エピファネイア)が、道中ハラハラさせるシーンを連続させながら、無敗のまま2冠達成。【4-0-0-0】となった。

 無敗のオークス馬は、5連勝クリフジ、4連勝ミツマサ、8連勝ミスオンワード、4連勝カワカミプリンセス、そして昨2019年の4連勝ラヴズオンリーユー。史上6頭目になる。

 ビッグレース制覇には、「道中なにもかもうまくいった。幸運もあった」。そんなコメントが珍しくないが、デアリングタクトは1-2コーナーにかけ、外から来られて狭くなり下がる場面が少なくとも2回あった。外に出そうとした最後の直線もかなりきびしかった。近年では、もっともヒヤヒヤさせた人気馬のオークス制覇だった。

 そのため、2着ウインマリリン(父スクリーンヒーロー)との差は半馬身だったが、その強さは文句なし。この時点でアーモンドアイ(GI7勝)、ジェンティルドンナ(GI7勝)などとは比較はできないが、まだまだ無敗のまま突き進む可能性は高い。

 これまで、3歳牝馬3冠を達成した馬は史上5頭。その5頭のオークス終了時点の成績は、1986年メジロラモーヌ【7-0-0-2】、2003年スティルインラブ【4-1-0-0】、2010年アパパネ【5-1-1-0】、2012年ジェンティルドンナ【4-1-0-1】、2018年アーモンドアイ【4-1-0-0】。みんな敗戦を喫した経験があった。

 デアリングタクトには「無敗の3冠牝馬」となるチャンスが出てきた。男馬では1984年のシンボリルドルフ、2005年のディープインパクトが無敗の3冠馬に輝いているが、これだけ強い牝馬が続出する時代であり、3冠目の秋華賞は未知の距離ではない2000m。大きく期待したい。

 下がってしまい、「危ないのではないか」と思える位置取りになったが、松山弘平騎手(30)は少しも動揺する場面がなかった。2コーナーあたりで腹をくくったのだろう。慌てて動かなかったのはデアリングタクトの傑出した能力を信じていたからではあるが、ビッグレースであれだけ落ち着いて騎乗できるのはすごいことだ。

 前後半「1分12秒5-1分11秒9」=2分24秒4の流れは、3分割した中盤の800mが「50秒4」に落ち着いたためスローにも近い展開で、レースの上がり3ハロンは「34秒2」の高速決着。馬群の中なので推定だが、デアリングタクトは「11秒0-10秒8-11秒3」のラップで33秒1だった。芝状態、ペース、位置取りが関係するが、2018年アーモンドアイの33秒2、2005年シーザリオの33秒3がこれまでの傑出した勝ち馬の記録なので、苦しい馬群を割ったデアリングタクトの「33秒1」は史上最速に相当する爆発力といえる。

写真提供:デイリースポーツ


 2着ウインマリリンは、この距離で無類のしぶとさが全開したこともあるが、ベテラン横山典弘騎手のここ一番でのウデが光った。

 外の16番枠から押して出たわけでもないのに1コーナーではもう2番手。ペースが落ちた向こう正面で先頭のスマイルカナと離れたが、動かない(動けば後続の格好の目標になる)。好位勢がスパート態勢に入った4コーナーではインで一旦下げるかのように息を入れて控え、坂上から再スパート。最後は差し返すようにラチ沿いから伸びて2番手に上がった。あれで差されては仕方がない。

 ウインマイティー(父ゴールドシップ)は、多少カリカリしていたが、中間ビシビシ追ってプラス6キロ。馬体減の馬が多い中、自己最高の474キロ。すばらしい状態だった。

 好位のインで折り合って直線スパートし、残り1ハロンで先頭。早とちりのわたしは、「ウインマイティーが勝ってしまう」と思った。デアリングタクトに驚異の脚を使われ、巧みに脚を残していた同オーナー、同生産牧場のウインマリリンに差し返されて3着だが、こちらもベテラン和田竜二騎手のすばらしい騎乗。能力は出し切っている。

 4着リアアメリア(父ディープインパクト)は、レースを覚えさせたい2-3戦目がうまくいかなかったが、オークスに向けての立て直しに成功。今回が本来の姿、というよりさらに上を望める馬だろう。パドックでも前回までのイライラがなかった。秋には大きく変わる。

 逆に同厩のクラヴァシュドール(父ハーツクライ)は、あくまで結果的にだが、前回が体調ピークだった気がした。

 ミヤマザクラ(父ディープインパクト)は、デキ絶好、距離の不安もないと思えたが、少し行きたがったためか案外の7着。力負けというより、もともと3歳春の東京2400mはみんなが力を出し切れるほど甘い条件ではないから、仕方がない。

 2番人気で11着のデゼル(父ディープインパクト)は、同じくここが3戦目で17着のアブレイズ(父キズナ)とともに、浅いレース経験と、エース級と厳しいレースをしていない死角が出てしまった。近年はキャリア、ローテーションを問わないビッグレースの勝ち馬が続出している。

 今年はデアリングタクトが4戦目、昨年のラヴズオンリーユーも4戦目だった。近いうちに3戦目でオークスを制する馬が出現するだろうが、そのハードルはかなり高いかもしれない。

 デゼルには、経験の浅い馬に外から次々に来られる最内枠はもっとも不利、の定説も当てはまってしまった。春の東京に移った1953年以降、2着は5回もあるので単なるジンクスではあるが、1番枠の馬は68連敗となった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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