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日本ダービーで騎乗してみたい馬をジョッキーに直撃!

  • 2020年05月26日(火) 18時00分
 いよいよダービーウィークを迎えました。無敗の皐月賞馬コントレイルに注目が集まる今年の日本ダービー。もはや一強ムードすら漂いますが、ライバルたちも虎視眈々とダービー馬の座を狙っています。こんな時、ジョッキー心理はどのようなものなのでしょうか。

 今回の「ちょっと馬ニアックな世界」では地方競馬の園田・姫路の騎手たちに「日本ダービーで乗ってみたい馬は?」と質問。そこから見えてきたのは「サリオスは“アレ”次第では逆転可能と思って乗ってきそう」という騎手同士の駆け引きや、「ダービーで●●を味わってみたい」という憧れなど十人十色の心境でした。

 そして一昨年、大反響をいただいた石堂響騎手による架空実況も登場します!


下原理騎手はコントレイル「枠は真ん中から内がいい」


 まずは2017年全国リーディングに輝いた下原理騎手(兵庫)。

馬ニアックな世界

▲日本ダービーで乗りたい馬はコントレイルと答えてくれたのは下原理騎手(写真右)


「枠もかなり関係すると思います」と前置きした上で「コントレイルに乗ってみたいです」と話しました。

「皐月賞はコントレイルもサリオスもめっちゃ上手く乗っていましたが、後ろからレースを運んだコントレイルが差しているので、キレ味はコントレイルの方が上かなって思います。上がりを伸ばす競馬に徹していて、オークスの松山くん(デアリングタクト)に内容がそっくりですよね。馬の力を信じて乗るっていう。

 でも、日本ダービーで外枠に入ったら心境的にどうなるのかな?と思います。皐月賞くらいのキレ味を生かそうと思ったら、僕なら極端な外枠は嫌でしょうね。ベストは真ん中から内くらいがさばきやすそうです」

 さらに枠の並びについて、こんな想定をしました。

「もしもサリオスが内枠で、コントレイルが極端な外枠なら、サリオスは逆転可能やと思って乗るんじゃないでしょうか。皐月賞3着のガロアクリークも枠が悪かったわりには流れに乗せてスムーズに走って上がりの脚も良かったと思いますし、枠や流れ次第で皐月賞上位5頭はチャンスがあると思います。コントレイルは力が一枚抜けているかもしれないですけど、競馬は分からないですからね」

 いかに枠順が大切かということが伝わってきます。一強ムード漂うコントレイルに現時点では乗ってみたいとのことですが、実際に下原騎手自身、6月11日の兵庫ダービー(園田1870m)では重賞4勝馬のステラモナークに騎乗予定。

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▲兵庫ダービーではステラモナークとタッグを組む


 前走・のじぎく賞はまさかの敗戦(5着)を喫しましたが、「他地区からの遠征馬もいましたし、2走前よりハミもちょっと噛んでしまった部分もあったと思います。切り替えて、兵庫ダービーはがんばります!いかに楽にテンが入れるかでしょう」と、逃げ馬の相棒とのプランを練っていました。

吉村智洋騎手もコントレイル!「どこからでも競馬ができる馬」


 続いては、こちらも全国リーディングに2018年に輝き、昨年はJRA札幌競馬場でワールドオールスタージョッキーズにも出場した吉村智洋騎手(兵庫)。

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▲下原騎手に続きコントレイルに騎乗したいと答えた吉村騎手


 開口一番、「コントレイルに乗りたいです!」と、ここでも皐月賞馬の名前が挙がりました。まずは皐月賞の振り返りから。

「皐月賞はサリオスの方が強いんちゃうかなと思っていたんです。レースではサリオスは内々でロスのない立ち回りで、直線に向くまで脚も溜められていました。『完璧に乗っていて、これで負けたら仕方ないんじゃないかな』と思うような騎乗に対し、コントレイルは横綱競馬で完封。直線半ばから馬体を併せて抜け出したのを見て、コントレイルの強さを感じました」

 ホープフルSまでは好位でレースをしていたコントレイルが後方待機からでも皐月賞を勝ったことに、ジョッキーとして可能性を感じるようです。

「どの位置からでも競馬ができるってことですよね。正直なところ、ジョッキーとしてはめちゃくちゃ楽です。それでも、レース前はいろんなケースを考えます。生き物ですし、枠にもよります。たとえば普段はゲートで大人しい馬でも、隣の馬がちょっとうるさかったりすると集中力を欠いて一緒に暴れて、出遅れてしまうこともあります。特に大レースはみんな仕上げてきていて馬もピリッとしていますから、ちょっとしたことでカッとなってしまうことがあります。そういうことを考えても、どこからでも競馬ができるっていうのはかなりの強みで、そんな馬に乗ってみたいですね」

 吉村騎手自身は昨年、念願の兵庫ダービー初制覇。

「ダービーを獲っていない時より気持ちに余裕が生まれました」という言葉からは、武豊騎手や四位洋文騎手のように日本ダービーを初制覇すると翌年も連覇した名手が頭に浮かびます。JRAと地方、立場は違えど、そういった騎手心理というのがあるのかもしれません。

 吉村騎手は今年の兵庫ダービーは重賞・園田ジュニアカップを制したイチライジンとのコンビ。「この馬の性格的に、内枠を引いた方がいいと思います」と控えめなコメントながらも、一発やってくれそうな気もします。

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▲園田ジュニアカップを制したイチライジンとのコンビで一発を狙う!


鴨宮祥行騎手もやはり…


 小見出しからお察しいただける通り「コントレイルに乗ってみたいです」と、3名とも同じ馬を指名。ただ、鴨宮騎手の場合、本当は別に乗ってみたい馬がいるそうです。

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▲鴨宮騎手もコントレイルを希望!


「逃げ馬に乗ってみたいんです。どれだけゲートが速いのかを感じてみたくて、日本ダービーとは関係ないですけどモズスーパーフレアに一番乗ってみたいんです。でも、今年の日本ダービーは確固たる逃げ馬がいなさそうですね。

 コントレイルは皐月賞のような末脚が広い東京の直線ではどんな感じなのかなって。たぶん1番人気になるでしょうが、『日本ダービーの1番人気ってどんなんなんかなぁ?』って思います。そのプレッシャーを味わってみたいです」

 これまで白銀争覇(笠松)のエイシンエンジョイやイヌワシ賞(金沢)のモズオトコマエなど重賞で1番人気に支持され、勝利しました。しかし、「エイシンエンジョイはゲートが決まれば勝てると思っていたのでプレッシャーは『全くない』と言えば嘘になりますけど、あまりなかったです」

 ジョッキーとして、ダービーのような大舞台で1番人気のプレッシャーを味わうことは一つの憧れなのかもしれません。

 ちなみに鴨宮騎手、5月上旬に放送されたTBS「炎の体育会TV」にミカエル・ミシェル騎手、ライル・ヒューイットソン騎手、関本玲花騎手とともに出演。「Twitterのフォロワーが2000人くらい増えて、最近は何をつぶやいても通知がすごいことになります」と反響の大きさに驚きを隠せない様子です。

 兵庫ダービーは兵庫チャンピオンシップ(JpnII)で5着だったガミラスジャクソンに騎乗予定。「道中、内を回ることができればチャンスが出てくると思います。こないだは久しぶりにスタートが決まったので、兵庫ダービーもスタートを決めて、無理に引き下げずに出たなりの位置で乗りたいです」

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▲ガミラスジャクソンとのコンビで兵庫ダービー制覇を狙う


お待たせしました!今年もジョッキーによる架空実況



 最後に、「レース実況がアナウンサー並み!」と評判の石堂響騎手(兵庫)。当初は「乗りたい馬について電話取材でお話を聞かせていただけますか?」と話を進めていたのですが、話の流れとノリで(?)、架空実況をしてくださることとなりました。

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▲プロ顔負けのレース実況で話題の石堂響騎手


 ただ、一昨年と違って自身でカメラを回しながらの架空実況。それでいて、実際の走破タイムに近い時間で架空実況をしていて、年々、騎乗技術だけでなく実況技術も上げているようです。石堂騎手の多大なるご協力とサービス精神に感謝です。というわけで、どうぞ!



 乗りたい馬に選んだのはサリオス。

「コントレイル一強ムードやと思うので、それを負かす乗り方をしてみたいです。皐月賞を見た印象では、キレ味勝負では分が悪そうなので、コントレイルより前につけたいです」とのこと。

 みなさんはどの馬でどんなレースをしてみたいと思い描きますか?

 年に一度の「ダービーウィーク」はこうして想像を膨らませて過ごすのも楽しいですね。

競馬リポーター。競馬番組のほか、UMAJOセミナー講師やイベントMCも務める。『優駿』『週刊競馬ブック』『Club JRA-Net CAFEブログ』などを執筆。小学5年生からJRAと地方競馬の二刀流。神戸市出身、ホームグラウンドは阪神・園田・栗東。特技は寝ることと馬名しりとり。

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