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【日本ダービー】より速く、より強くなれと鍛えあげられた日々

  • 2020年05月30日(土) 12時00分

速いペースで厳しい流れに堪えてこそ価値がある


 ダービー・シーズンになれば、バラ。東京競馬場のバラ園もいまが盛りの筈。だが仕方ない。目にやきつけてある情景を糧に、今年は、いつもと異なる検討をするのも一興だ。ちょうど庭には、ホタルブクロがいつも通りふくらみ始めている。大きな釣り鐘状の花で、葉はハート形。赤紫と白とがあるが、袋のような花にホタルを入れて遊んだことが名前の由来だそうだ。山野に咲く多年草で、寒さに強く、暑さにも堪えるという育てやすさ。加えて、日陰でも育つ逞しさ。これほど扱いやすい草花は少なく、しかもその姿で楽しめるのもうれしい。一転して、ダービーにこれをもとめてみた。

 より速く、より強くなれと鍛えあげられたこれまでの日々。彼等の登って行かねばならぬ坂道は、まだまだ果てることなく続く。だがこの瞬間を戦った彼等の蹄跡は、なにごとにもかえがたい彼等自身の血の証しとなっていく。“負けないで、最後まで走りぬけて”、音楽ユニットZARDの歌詞が浮かぶ。

 ダービーは、速いペースで厳しい流れに堪えてこそ価値がある。それで勝ち切った馬の将来は、大きく開けてきた。それでも伏兵が出るところに難しさがある。昨年など、緩みないペースの皐月賞を走り切った4戦全勝のサートゥルナーリア、これとクビ差の勝負で2着に入ったヴェロックス、そして3着のダノンキングリーがダービーの1〜3番人気だったが、速いペースを2番手でじっくり見ていた12番人気ロジャーバローズが持久力勝負で長くいい脚を発揮し、3強を下して勝っていた。単勝1.6倍の皐月賞馬がスタートで後手を踏んだことで、他の2強が後方を気にしながらの戦いになったのが痛く、道中の位置どりの順に入ることになっていた。いくら末脚に自信があっても、特に今の東京は行ったものが残るケースが多い。伏兵がいるとすればそこではないか。

 3戦全勝の皐月賞馬コントレイルは、その圧巻の末脚が見事で、好位でスムーズに立ち回れたサリオスが恵まれていたのとは対照的だった。ただこの本命馬はスタートひとつのところがある。杞憂に終ることを願いたい。そこで日陰でも育つ逞しさにも注目しておく。

 ダービーに9年連続出走の池江きゅう舎のヴェルトライゼンデは、急成長していて展開のスキを突ける一頭。東京コース2戦2勝で皐月賞をパスしてここ一本に備えたワーケア、ダービーで時折穴をあける一番枠のサトノインプレッサは、ゆったりした流れでこの枠が生きることが考えられる。あと、母がディープインパクトの半妹というヴァルコスを少し。いずれにせよ、必死に闘志をかき立てて駆け抜けるダービー・ダンディーズに熱い声援を送ろう。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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