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アーモンドアイへの好奇心「あそこまでの馬は緊張するやろうなぁ」

  • 2020年06月02日(火) 18時01分
今週の『太論』は、ユーザー質問3連発。「風が強いとペース感覚が乱される?」「パドックや返し馬で、馬の異変はどの程度わかる?」といった質問に対し、ジョッキーならではの“感覚”を明かしてくれました。また、「現役馬で乗ってみたい馬は?」という質問も。はたして小牧騎手の答えは!?(取材・文:不破由妃子)

※このインタビューは電話取材で実施しました。

「アイツは怖がりやな」と言われても、自分の身は自分で守る


──今回は、定期的に届くこんな質問から。「毎回『太論』楽しみにしています。小牧さんに質問ですが、現役馬で乗ってみたい馬はいますか? また、過去の馬で乗ってみたかった馬はいましたか? 同い年の小牧さんを応援しています。これからも頑張ってください!」

小牧 そうやなぁ。ベタやけど、やっぱりアーモンドアイには乗ってみたいねぇ。スタートとか、いろいろ難しそうやけど。

──有馬記念で見せたような繊細な部分もありますしね。

小牧 そうやねん。あれだけ走ることに加えて、気のいい牝馬やからね。なんぼ能力が抜けているといっても、あそこまでの馬となると緊張するやろうなぁ。「出るとこなかったらどうしよ…」とか考えだしたら、眠れなくなりそうや(笑)。あと、オークスを勝ったデアリングタクト。あの馬も乗ってみたい。それにしても、松山はよう捌いてきたね。

──ホントですね。ものすごく落ち着いた騎乗だったと思います。

小牧 せやね。あの馬も走るわ。どんな場面でも怯まんと、根性がある。最近あんまり後半のレースに乗っていないから、オークスのときも家に帰ったらたまたまいい時間でね。ビールを見ながら観戦してました(笑)。ホンマはね、ジョッキーとしてここにいちゃいけんよなぁなんて思いながら。まぁ乗ってみたいということでいえば、なにはともあれアーモンドアイやね。あの馬はケタが違うわ。

──今週の安田記念も、勝つか負けるかではなく、どんなパフォーマンスで勝つのかといった感じですよね。続いては、「いつも大変楽しく拝読しております。さて、4月の最終週の競馬は風が強く、加えて非常に波乱の結果が多かったと思います。以前、どなたか(確か騎手の方)のお話で、「風が強い日はペースが読みづらい」という内容があったのですが、実際に風が強いとペース感覚が乱されるものなのでしょうか。それが結果に直結する訳ではないかと思いますが、騎手目線での感覚を教えていただけると幸いです」

小牧 風の影響はけっこうあるよ。ペース云々もそうやけど、いつだったか福島に乗りに行ったとき、風がものすごい日で、吹き飛ばされそうになった覚えがあるわ。競輪だって、風の影響があるわけやから、馬なんてもっとやわ。ジョッキーとしては、そういう風の抵抗とかも考慮して乗らなアカンよね。

──質問にあるように、実際にペース感覚は乱されるものですか?

小牧 そうやね。向かい風の場合、当然、馬もスピードが落ちるから、確かにペースが読みづらいかもしれんね。体内時計が狂ってくるというか。

──そういえば小牧さん、以前テレビ番組の体内時計勝負みたいな企画に出演されてませんでしたっけ?

小牧 ああ、大昔ね。確か1ハロンを13秒できっちり走れるか…みたいな企画やったな。あの頃はまだ園田にいる頃で、調教の時計に関してはとにかく曾和先生が厳しかったから。もうね、叩き込まれたわ(苦笑)。ただ、調教とレースはまた違って、レースで正確に判断するのはなかなか難しいけどね。

──風の影響は別として、騎乗馬の完歩が大きいか小さいかによってもペース感覚は変わってきますよね?

小牧 うん、変わるね。走る馬は、だいたい遅く感じるもんやねん。調教で「遅いなぁ」と思っても、上がってきたらいい時計が出ていたりするから。やっぱり能力が高い馬は、それだけフットワークが伸びやかっていうことやろうね。

──では最後の質問です。「4月26日の落馬事故は、小牧騎手ももう少しのところで巻き添えに遭うところでした。人間も同じで、突然の故障は誰にも予想はできず、危険を回避する咄嗟の判断も必要だと思いました。パドックや返し馬で、馬の体調はどの程度わかるのでしょうか?」

小牧 この前の場合やったら、全然わからんと思う。そうやってまったく兆候がなくてもね、ポッキリいってしまうことがあるねん。それが一番怖い。もちろんね、パドックや返し馬で異変を感じることはあるよ。そういう場合、僕らもちゃんと報告して、取り消してもらうからね。

──そうですよね。過去の経験として、パドックなどでおかしいなと思いつつ出走して、実際に骨折してしまったこともあるのでしょうか?

小牧 あるある。若い頃は何度もあるよ。それで何回も落ちたし、つらい思いもたくさんした。だからこそ、今はちょっとでも違和感を感じたら、取り消してくれってお願いするもんね。

──若手は言い出せなかったり、経験の浅さゆえ、自分の感覚を信じられなかったりするでしょうからね。

小牧 そうそう。ちょっとおかしいなと思っても、経験を積まないと確信できんからね。最近は歩様がしっかりした馬が多いからほとんどないけど、僕はちょっとでもおかしいと思ったらすぐに報告するし、レース中であってもやめる。結果的になんともなくて、「アイツは怖がりやな」とか「アイツはすぐにレースをやめる」とか言われても、それはそれでいい。なんせ自分の命に関わること。自分の身は自分で守らなアカンからね。
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太論 / 小牧太
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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