スマートフォン版へ

早世した母譲りのスピード能力が本格化

  • 2020年06月08日(月) 18時00分

先週の血統ピックアップ


・6/7 安田記念(GI・東京・芝1600m)
 中団を追走したグランアレグリアが直線で馬場中央から先頭に立ち、外から伸びたアーモンドアイに2馬身半差をつけて快勝しました。桜花賞を勝った際は1分32秒7というレースレコードを樹立しましたが、続くNHKマイルCであっさり敗れたように、心身ともに未熟なところがありました。

 しかし、休み明けだった昨年暮れの阪神Cを5馬身差で圧勝し、3月の高松宮記念は道悪と距離不足にもかかわらずハナ差の2着(3位入線から繰り上がり)と健闘。今回の馬体重は492kgと、デビュー時よりも34kgも成長していました。馬が化けてきている可能性があります。2着との「2馬身半差」は、平成以降ではウオッカの3馬身半差(08年)に次ぐ2位タイです。

 ディープインパクトにとってグランアレグリアは、11年のリアルインパクト、17年のサトノアラジンに次ぐ3頭目の安田記念優勝馬。母タピッツフライは北米でジャストアゲームS(米G1・芝8f)、ファーストレディS(米G1・芝8f)などを制した芝の一流馬で、芝8ハロンを1分32秒34で勝ったようにスピード能力の高い馬でした。

 わずか5年間の繁殖生活(2018年に死亡)で名前のついた馬は2頭しかなく、残りの1頭であるブルトガング(父ディープインパクト)は、昨年6月に新馬戦を勝ったあと腰フラで早世しました。つまりタピッツフライの血を引く馬はグランアレグリアしか存在しません。秋のキャンペーンも楽しみではありますが、なんとか無事に繁殖牝馬となってほしいものです。

・6/7 新馬戦(東京・芝1600m)
 中団につけたサトノレイナスが直線で外から伸びて勝ちました。単勝1.4倍の断然人気でしたが、着差は3/4、クビ、とわずか。今年のPOGの牝馬のナンバーワン候補として、ほとんどのドラフトで1位指名されたであろう人気馬です。

 牝馬限定戦であったことも考慮すると、勝つには勝ったけど……という辛勝でしたが、鞍上のルメール騎手によると「内の馬を怖がっていた」とのこと。このあたり、調教だけでは分からない部分ですが、搭載しているエンジンはこんなものではないので、競馬に慣れてくれば派手な勝ち方をしてくれるのではないかと思います。

 弥生賞を勝ったサトノフラッグの全妹で、母は亜オークス(G1・芝2000m)、亜1000ギニー(G1・1600m)などを制し、3歳牝馬チャンピオンとなったアルゼンチン生まれの名牝です。「ディープインパクト×ノットフォーセール」の組み合わせはダノンファンタジー(阪神ジュベナイルフィリーズなど重賞4勝)と同じ。距離は万能でしょう。

今週の血統注目馬は?


・6/13 甲武特別(1勝クラス・阪神・芝2400m)
 2010年以降、阪神芝2400mで産駒が20走以上した25頭の種牡馬のなかで、キングカメハメハは連対率25.2%で第3位。今回のレースに登録がある同産駒はヒートオンビート。前走、未勝利戦を勝ったばかりで、今回は昇級初戦+古馬と初対決。決して楽な競馬にはなりそうもないのですが、本馬の母は桜花賞馬マルセリーナで、京成杯を勝ったラストドラフト(父ノヴェリスト)の半弟でもあります。ここは一発があっても不思議はありません。

今週の血統Tips


 イギリスの牡馬クラシック第一弾の2000ギニー(芝8ハロン)が6月6日、英ニューマーケットで行われ、4番人気のカメコが外から鋭く伸びて優勝しました。勝ちタイムの1分34秒72はレースレコード。アメリカ産馬の優勝は2008年のヘンリーザナヴィゲイター以来12年ぶりです。父キトゥンズジョイは大種牡馬サドラーズウェルズのアメリカで発展している一分枝で、米リーディングサイアーの座に二度就いています。ヨーロッパでは2018年にロアリングライオンがG1を4勝し、カルティエ賞年度代表馬に選出されました。同馬は種牡馬となったもののわずか1世代の産駒を残して早世。ヨーロッパの馬産にとって大きな喪失となりました。カメコが今後出世し、その穴を埋める存在となってほしいものです。

このコラムをお気に入り登録する

このコラムをお気に入り登録する

お気に入り登録済み

netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

バックナンバー

新着コラム

アクセスランキング

注目数ランキング