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競馬開催に続き、動き出した競走馬の流通

  • 2020年06月10日(水) 12時00分

未曾有の事態にセリ会社同士が共栄共存の道を模索


 仏国のセリ会社「アルカナ」が、8月開催が恒例となっていた「ドーヴィル8月1歳セール」を、今年は6週間延期し、9月24日から26日まで「ドーヴィル9月1歳セール」として催すことを発表した。

 米国のファシグティプトンが既に、8月の「サラトガ1歳セール」を中止し、代替として9月9日と10日にケンタッキーで「2020セレクテッド・イヤリング・ショーケース」を催すと発表しており、欧米の代表的なリゾート地を舞台とする2つの名物セールが、今年はいずれも8月のカレンダーから消滅することになった。サラトガからドーヴィルへというのが、8月上旬から中旬にかけての競馬サークルの流れだっただけに、ぽっかりと空いてしまった8月半ばのスケジュール帳を見て、気の抜けた思いをしている競馬人も多いことと思う。

 新型ウイルスの影響で止まってしまっていた競馬開催が、5月2週目頃から徐々に動き出し、新たに編成し直されたプログラムに沿って、各国で競馬番組が進行しつつある中、冒頭で記したようにここへきて、各国のせり市場主催者から、新たなセール開催日程が続々と発表になっている。競馬同様に止まっていた競走馬の流通も、ようやく動き出すメドが立ちつつあるのだ。

 8月のサラトガ1歳セールとともに、7月にケンタッキーで開催を予定していたジュライ1歳セールも中止し、9月の「セレクテッド・イヤリング・ショーケース」に一本化することを決めたファシグティプトンだが、2歳セールに関しては、6月29日と30日にメリーランド州で「ミッドランティック2歳トレーニングセール」の開催を予定している。もともとは5月18日と19日に予定されていたもので、6週間延期しての施行となる。

 ファシグティプトン主催の2歳セールといえば、フロリダを舞台とした4月の「ガルフストリーム2歳トレーニングセール」が有名だが、今年は開催が中止となっており、「ミッドランティック2歳セール」のカタログには「ガルフストリーム2歳トレーニングセール」に上場予定だった馬も複数含まれている。

 ファシグティプトン社はさらに、10月12日と13日にメリーランドで開催予定だったミッドランティック1歳セールを、こちらは1週間前倒しにし、10月5日と6日に開催すると発表した。というのも、メリーランド州のピムリコ競馬場を舞台としたG1プリークネスSが、例年の5月から今年は10月3日に移設されることが決まったためで、3日の競馬から中1日を置いてセールへという、人の流れを重視することになったものだ。

 実を言えば、OBSがフロリダで10月6日から8日まで1歳セールを開催する予定だったのだが、こちらは逆に1週間後ろにずらして、10月13日から15日の開催となった。ファシグティプトンとOBSの間で、日程のスワップが成立したのである。日頃は何かにつけて張り合うことが多いのがセリ会社同士だが、新型ウイルス感染拡大という未曽有の事態に直面し、互いに協調し共存共栄の道を模索する姿勢が目立っている。

 8月の「ドーヴィル8月1歳セール」を9月に延期することを発表したアルカナは、2歳トレーニングセールをゴフスUKと共同開催とし、7月1日にドンカスター競馬場で行うことも、あわせて発表している。5月9日にドーヴィルで行う予定だった「アルカナ5月2歳セール」が中止となってしまったアルカナは当初、愛国にあるゴフスの本体と提携する道を模索した。というのも、欧州における2歳トレーニングセールの主要コンサイナーは、愛国を拠点としていることが多く、人的移動が著しく制限されている中で、愛国での開催が最も合理的との判断があったためだ。具体的には、ナース競馬場で公開調教を行なった上で、6月29日と30日にキルデアにあるゴフスで2社合同の2歳セールを行う線で各所の調整に入ったのだが、愛国における厳格な入国規制が緩和する見込みが立たず、やむなく愛国開催を断念。代わって浮上したのが英国のドンカスターを拠点とするゴフスUKとの提携で、最終的には、6月28日に公開調教を行ない、7月1日がセールという日程を決定するに至った。

 4月の「アスコット2歳セール」と「クレイヴン2歳ブリーズアップセール」、5月の「ギニーズ2歳ブリーズアップセール」がいずれも延期となった、ニューマーケットを拠点とする老舗のタタソールズ社も、アルカナと同様のジレンマを抱えた。タタソールズも一時期、愛国を拠点とする馬は愛国のフェアリーハウス競馬場で公開調教を行ない、セールはオンラインのみで行うプランも含めて、様々な可能性を探った。だが最終的には、本拠地であるニューマーケットで、通常通りのライブセールを開催することを決めている。「アスコット2歳セール」と「クレイヴン2歳ブリーズアップセール」を合体させたセールを、6月22日にニューマーケットで公開調教を行なった上で、6月25日に行うことを決定。

「ギニーズ2歳ブリーズアップセール」は、7月8日から10日までニューマーケットで開催される「ジュライ・セール」の、初日に組み込まれる方針が示されている。タタソールズ主催の1歳セールは、10月6日からの「オクトーバー1歳セール・ブック1」を皮切りに、当初のスケジュール通りに開催される予定だ。パリロンシャンの凱旋門賞を観て、翌月曜日にニューマーケットに移動し、火曜日からニューマーケットのセールというのが、10月上旬の競馬サークルの流れで、この時期までには何としても移動制限が解除され、筆者もこの流れに乗りたいと、切に願っている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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