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地元馬が20年ぶりの快挙を達成した北海道SC

  • 2020年06月11日(木) 18時00分

無観客でも1レースあたりの売上げレコードを更新


 先週の4日(木)、門別競馬場で、交流重賞「北海道スプリントカップ」(JpnIII)が行なわれた。このレースには当初15頭が出走を予定していたが、2番ジョウランが出走を取り消し、14頭によって争われた。

 中央からショーム(横山武史騎手)、ノボバカラ(桑村真明騎手=北海道)、マテラスカイ(武豊騎手)、スズカコーズライン(酒井学騎手)の4頭が参戦し、他に大井からハヤブサマカオー(阪野学騎手=北海道)、岩手からスティンライクビー(阿部龍騎手=北海道)の2頭も遠征してきており、多彩な顔ぶれとなった。

 これらを迎え撃つ地元勢は、ニットウスバル(五十嵐冬樹騎手)、メイショウアイアン(落合玄太騎手)など8頭。無観客ながらホッカイドウ競馬にとっては今年度初めてとなる交流重賞であり、注目を集めていた。

生産地便り

地元勢有力候補のメイショウアイアン


 距離1200m、外回りコース。2コーナーポケットからの発馬である。午後8時。気持ち良く晴れ渡った夜空の下、定刻通りにスタート時刻を迎えた。

 1番人気はマテラスカイで2.0倍、続いてスズカコーズラインが4.3倍、ショーム5.4倍、ノボバカラが6.8倍と続き、例によって上位を中央馬が占めた。過去19年間、このレースは中央馬が連勝し続けているため、人気はどうしても中央馬に偏ってしまう。

 地元勢では、5番人気にニットウスバルが10.8倍、6番人気にメイショウアイアン20.0倍、7番人気にソルサリエンテ(宮崎光行騎手)が42.7倍で、後はいずれも50倍以上の配当だ。

 ゲートが開き、各馬が一斉に飛び出す。まず先手を切ったのは予想通りマテラスカイ。スズカコーズライン、ハヤブサマカオー、スティンライクビーあたりがそれに続く。向こう正面から3コーナー、そして4コーナーと回ってくるも、マテラスカイが快調に飛ばし、最内を先頭で直線に向かってきた。このまま楽勝ペースかと思われた矢先、スズカコーズラインと地元勢メイショウアイアンが逃げるマテラスカイにじわじわと差を詰めてくる。

 残り1ハロンで、完全にこの3頭による三つ巴の争いになった。最内を進むマテラスカイの武豊騎手が、外側から襲いかかる2頭に視線を送りながら必死で追うが、抜け出せない。3頭が完全に横並び状態でゴール板を駆け抜け、一瞬どの馬が勝ったか分からなかった。

生産地便り

3頭が完全に横並び状態でゴールイン


「勝ったかもしらんぞ」と興奮気味に声を張り上げる一団がいた。メイショウアイアンの田中淳司厩舎スタッフたちであった。

 際どい勝負になり、写真判定にずいぶん時間を要していたが、結果は、ハナ差で1着メイショウアイアン、2着が同着でマテラスカイとスズカコーズラインの中央勢が入り、その後は2馬身差でニットウスバル、そこから4馬身差の5着にノボバカラという着順で確定した。

 レース後のインタビューで手綱をとった落合玄太騎手は「去年はがんばってくれたんですが2着でしたので、勝てて本当に嬉しいです。マテラスカイだけ捕まえてくれと思いながら追っていたんですが、馬が頑張ってくれました」と快挙を振り返っていた。

生産地便り

インタビューは距離を空けて実施された


 またメイショウアイアンを管理する田中淳司調教師は「最高に嬉しいです。年齢のいっている馬なのでいかに衰えを出さないように調整して行くかがひとつのポイントでした。一度叩いて良い感じに今日のレースを迎えられたので納得できる仕上げになりました。勝てて感無量です。10歳のおじいちゃんなので、今後は無理なローテーションを組まずに一戦一戦を戦いたいと思います」とコメントしていた。

生産地便り

地元勢20年ぶりの優勝であった


 メイショウアイアンは父マヤノトップガン、母デヒアバーズ、母の父デヒアという血統の牡10歳馬。中央でデビューし、36戦4勝の成績を残した後、2018年6月よりホッカイドウ競馬に転厩。地方所属馬となってからはこれで17戦6勝2着5回、通算では53戦10勝の成績となった。インタビューにもあったように、メイショウアイアンは昨年、同レースに8番人気ながら2着と健闘しており、今年はその雪辱を果たしたことになる。

 なお、この日の門別競馬場の1日の売り上げはあっと驚く10億2959万5480円。昨年の北海道スプリントカップ実施日(2019年6月6日)が7億361万1660円であったことを考えると、実に3億円以上の増加である。まさしく驚異的な伸びと言えるだろう。北海道スプリントカップ1レースの売り上げも5億4096万4400円と、ホッカイドウ競馬における1競走の売り上げレコードを更新した。

 稀に見る接戦で見応えのある交流重賞となった今年の北海道スプリントカップだが、これで観客がいればどれほど盛り上がったことかと思う。それにしても、何とも恨めしいコロナウイルス。再び競馬場にファンの歓声が戻って来るのは果たしていつのことになるだろうか。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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