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下馬評を覆した驚きの圧勝劇

  • 2020年06月29日(月) 18時00分

先週の血統ピックアップ


・6/28 宝塚記念(GI・阪神・芝2200m)
 外をマクって進出したクロノジェネシスが直線で後続を引き離し、2着キセキに6馬身差、3着モズベッロにさらに5馬身差をつけ、悠々とゴールを駆け抜けました。戦力拮抗の下馬評を覆す驚きの圧勝劇でした。当日の馬場状態は、稍重からいったん良馬場まで回復したものの、レース前に降った雨の影響で再び稍重に悪化しました。ただ、レースから受ける印象はそれよりもはるかに緩く、実質的には重〜不良ぐらいのコンディションではなかったかと思います。そのため、道悪適性、通ったコースによって大きく明暗が分かれる形となりました。

 前に行った馬、内を通った馬はほぼ全滅。上位3頭は馬番が二桁で、中団から後方に控え、終始馬群の外を回ったという共通点があります。4着サートゥルナーリアは5番枠だったため、スタートから3〜4コーナーの中間あたりまで内に閉じ込められて馬場の悪いインコースを走らされ、スタミナを消耗してしまいました。

 勝ったクロノジェネシスは京都記念で重馬場を、秋華賞で稍重をこなして優勝しており、レース前から道悪巧者という評価でした。ヴィクトリアマイルを勝ったノームコア(父ハービンジャー)の半妹で、父バゴは凱旋門賞馬。同馬はクロノジェネシスのほかに菊花賞馬ビッグウィーク、ダートグレード競走で活躍したトロワボヌールなどを出しています。2代父ナシュワンは英二冠馬で、決め手に乏しいステイヤーですが、そうした重厚なヨーロッパ血統が道悪でプラスに作用した部分は大きいでしょう。

・6/28 新馬戦(阪神・芝1800m)
 ダノンザキッドが直線で楽々と先頭に立ち、手綱を抑えたまま後続に3馬身差をつけました。4コーナーを回った直後、外側から内側に切れ込んだため、テンバガー、パタゴニア、ダンツテリオスなどがその煽りを受けました。勝ちっぷりは今年の2歳戦のなかで最も印象的で、普通に追われていれば大差勝ちになっていたのでは、という楽勝でした。

 父はジャスタウェイ、母の父はダンシリ、母エピックラヴは現役時代に芝1800mの仏G3を勝ちました。2018年のセレクトセール当歳に上場されたとき、初仔のミッキーブリランテ(シンザン記念3着)はまだデビュー前だったので、1億円(税抜)という落札価格は純粋に馬のデキに対する評価でしょう。ジャスタウェイ産駒で新馬戦を楽勝した馬といえばクラシックで好走したヴェロックスを思い出します。

今週の血統注目馬は?


・7/4 開成山特別(1勝クラス・福島・芝2600m)
 登録馬の父のなかで福島芝2600mに強い種牡馬はオルフェーヴル。過去11戦4勝(勝率36.4%)という成績を挙げています。このレースにはカンバラ、ナムアミダブツ、ファンタスティックと3頭が登録しています。なかでもカンバラは前走、同じ1勝クラス(芝2300m)で2着。先に行く脚質なので東京→福島のコース替わりはプラスです。大穴はブライトアクトレス。その父スクリーンヒーローは福島に限らず芝2600mで連対率29.2%と優秀。これまでダートでしか走ったことがありませんが、長期休養明け2戦目で、血統的に芝はまったく問題なし。一発があっても不思議ありません。

今週の血統Tips


 宝塚記念を勝ったクロノジェネシスはノームコアの半妹で、前述のとおり姉妹ともどもGIウィナーです。6月20日、英アスコット競馬場で行われたコロネーションS(英GI・芝7f213yds)は、アルファセントーリ(カルティエ賞最優秀牝馬)の半妹アルファスター(父シーザムーン)が制覇し、姉妹制覇を成し遂げるとともにGIウィナーとなりました。

 注目すべきはその血統。2代母イーストオブザムーンは仏二冠牝馬にしてジャックルマロワ賞を制した名牝。同馬は大種牡馬キングマンボの半妹で、その母は偉大なミエスク(仏英米でG1を10勝)です。ミエスク牝系といえば日本ではリアルスティールとラヴズオンリーユーの兄妹が有名。もちろん、キングカメハメハ(その父キングマンボの母がミエスク)の血統にも含まれています。

 アルファセントーリとアルファスターの姉妹は、ヨーロッパで大成功しているサドラーズウェルズ-ガリレオの血を持っていないので、繁殖牝馬としても成功するのではないかと思います。姉アルファセントーリはこの4月、初仔となるガリレオの牡駒を産みました。ミエスクが誕生して37年になりますが、その影響力はいまなお絶大です。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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