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無観客から早4カ月...馬券売上げ健闘も、関連産業に猛威を振るう"コロナショック"

  • 2020年06月29日(月) 18時00分
教えてノモケン

▲2月末から無観客開催が続く中央競馬(写真は中京競馬場、撮影:高橋正和)


 2020年の中央競馬は、6月28日の宝塚記念で折り返し点を迎えた。新型コロナウイルス感染問題が全世界に深刻な影響を及ぼしている中で、国内外の競馬も非常態勢を強いられてきた。国内では2月末から中央、地方とも無観客施行となり、4月5日に政府が全国に緊急事態宣言を出した(5月25日までに全国で解除)後も、辛うじて開催を続けてきた。無観客施行は既に4カ月となるが、競馬産業でも施行者とそれ以外で明暗が分かれた。

 中央は4カ月間の売り上げが前年比5.5%減にとどまり、地方競馬は3〜5月の3カ月でむしろ前年比19.8%増。1日平均でも14.5%の大幅増を記録した。一方で、関連産業の苦境は深い。生産界は4月以降の一連の市場が全て中止され、一部はオンライン入札で代替された。また、今や競馬施行のインフラの役割も担う競馬専門紙への影響は深刻で、競馬場や場外発売所所在地でも、直接雇用や人出の消失による地域経済へのダメージも大きい。今回はこうした業界への影響を整理する。

中央は5月後半から復調


 中央では5月後半になって、確かな回復の流れが見えてきた。ヴィクトリアマイルが行われた5月第3週は、土日とも前年を上回った。中山が降雪の影響で続行競馬となった3月最終週を別にすれば、土日連続の前年対比プラスは、無観客態勢入り後初めてだった。東京、京都、新潟の3場で施行されたこの週は、土曜の16日が前年比約32億3183万円の大幅プラス。17日も約6億6377万円のプラスだった。ライトファンの参加が多い日曜に苦戦するのは、無観客態勢下の一貫した傾向で、特にGI当日の落ち込みが目立った。

 だが、17日はヴィクトリアマイルの舞台だった東京こそ約1億3620万円の減少だったが、残る2場が補った。23、24日も同じパターンで、ダービー前日の30日も約5億5387万円増。さすがに日本ダービー当日は約16億2406万円の減だったが、安田記念のあった6月1週は5月3、4週と同様、土日ともプラス。6月28日の宝塚記念は、4月以降のGIではヴィクトリアマイルに次いで2度目のレース単体前年比プラス。3年ぶりに200億円の大台を回復した。

教えてノモケン

▲今春のGIで前年比の売り上げが最も伸びたのは宝塚記念(提供:デイリースポーツ)


 昨年の年間売り上げのほぼ3割を占めた現金発売が消失した中で、JRAのような巨大施行者が前年超えの業績を出すのはほとんど奇跡だが、5月後半からはダービー当日のような特異日を除けば常態化した。無観客態勢入り前の2月23日時点で、電話・ネット投票の会員数は440万7119人だったが、6月21日には482万1503人と、41万4384人(9.4%)増えた。ただ、会員増だけでは3割の空白が埋まるはずはなく、客単価も増えている。

 今年に入ってから6月28日までの売り上げは、前年比3.2%(約493億4707万円)の減だが、もともと今年は昨年と比べて売り上げが伸びにくい開催日程が組まれている。例えば、1月6日が昨年は日曜で今年は月曜。また、昨年は4月末の連休に絡めた祝日開催が組まれ、今年より200億円以上多い売り上げを記録していた。こうした点を考慮すれば、実質的な減少幅はもっと小さく、現在の流れなら今後はさらに前年実績に近づくはずだ。

地方は軒並み大幅増


 一方、地方競馬は無観客入り直後の3月こそ、1日平均の売り上げが前年を6.2%下回ったが、4月は19.7%増に転じ、5月は27.6%とさらに伸び率が拡大した。3〜5月の売り上げは約1942億1713万円で、前年比19.8%増。1日平均でも14.5%増だった。3月に1日平均が前年を割ったのは、南関東が前年比17.7%も落ちたためだった。地方全体の半分近くを占める南関東の不振は、全体の数値を押し下げる。他の施行者と比べて場外施設が多いことが、コロナ局面では裏目に出た。

 だが、それも束の間で、

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1964年1月19日、東京都出身。87年4月、毎日新聞に入社。長野支局を経て、91年から東京本社運動部に移り、競馬のほか一般スポーツ、プロ野球、サッカーなどを担当。96年から日本経済新聞東京本社運動部に移り、関東の競馬担当記者として現在に至る。ラジオNIKKEIの中央競馬実況中継(土曜日)解説。著書に「競馬よ」(日本経済新聞出版)。

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