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世界へ活躍馬を輩出する「ドーヴィル1歳セール」展望

  • 2020年08月05日(水) 12時00分

注目は“凱旋門賞連覇”トレヴの全妹


 9月24日(木曜日)から26日(土曜日)までの3日間にわたって仏国のドーヴィルで開催される、「アルカナ・ドーヴィル・セレクト1歳セール」の上場馬カタログが解禁になった。

 例年ならば8月半ばに行われるのが恒例となっているセールだが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今年は6週間ほど遅れての開催となる。

 例年だと、8月1歳市場に引き続いて催されるV2セールの開催が今年はなく、V2セールを吸収しての開催となった。カタログ記載馬492頭は、昨年の8月1歳セールとV2セールの合計上場頭数である486頭から、6頭の微増となっている。3日間開催のうち、初日と2日目がセレクト・セッションで、3日目がオープン・セッションという仕分けとなっている。

 ドーヴィル1歳セールの出身馬は、ここ1年も世界各国で顕著な活躍を見せている。

 19年のG1仏ダービー馬で、今年春にもG1ガネー賞を制したソットサス(牡4、父シユーニ)は、17年の8月1歳市場にて34万ユーロ(当時のレートで約4451万円)で購買された馬だし、20年のG1仏1000ギニー勝ち馬ドリームアンドドゥ(牝3、父シユーニ)は、18年の8月1歳市場にて8万ユーロ(当時のレートで約1021万円)というお手頃価格で購買された馬だ。

 世界を股にかける活躍を見せ、昨年秋に豪州のG1マッキノンSを制し待望のG1初制覇を果たしたマジックワンド(牝5、父ガリレオ)は、16年の8月1歳市場にて140万ユーロ(当時のレートで約1億6100万円)というセッション最高値で購買された馬だった。

 米国では、昨秋のG1BCマイルを含めて3つのG1を制しているユニ(牝6、父モアザンレディ)が、15年の8月1歳市場にて4万ユーロ(当時のレートで約558万円)というバーゲン価格で購買されている。

 今年のカタログには、ガリレオ、ドゥバウィ、シユーニ、フランケル、キングマン、シーザスターズ、ロペデヴェガ、ルアーヴルといった欧州が誇るトップサイヤーの産駒が並んでいる他、今年の1歳が初年度産駒となるアルマンゾル、アロゲート、チャーチル、リブチェスター、カラヴァッジョらの産駒もスタンバイしている。中でも、16年の全米3歳チャンピオンで、昨年秋の当歳セールで初年度産駒が平均価格31万1250ドルという超高値で売却されながら、今年6月に急逝したアロゲートの産駒は、稀少価値が付加されるだけに、マーケットがどのような評価をするかが興味深い。

 そして、カタログ記載馬492頭のうち、2割弱にあたる96頭が母親がブラックタイプ勝ち馬。更に、G1勝ち馬の弟・妹が22頭も含まれており、例年以上の品揃えとなっている。

 前述した当セール出身のG1勝ち馬の弟・妹も上場されていて、例えば、上場番号199番の牡馬(父ガリレオ)はマジックワンドの全弟だし、上場番号251番の牝馬(父ドゥバウィ)はソットサスの半妹。上場番号274番の牡馬(父アルマンゾル)はユニの半弟だし、上場番号277番の牡馬(父グレンイーグルス)はドリームアンドドゥの半弟だ。

 粒揃いの上場馬の中でも、目玉商品になる可能性のあるのが、上場番号269番の牝馬(父モティヴェイター)だ。本馬は、G1凱旋門賞連覇の偉業を成し遂げたトレヴの全妹にあたるのである。トレヴ自身は1歳時は華奢な馬で、ドーヴィル10月1歳市場に上場されるも2万2千ユーロ(当時のレートで約236万円)でも買い手がつかずに主取りになったという逸話を残しているが、果たして妹はどんな評価を受けるのか。

 この他、この春に豪州で2つのG1を制したアデイブの半妹にあたる上場番号39番の牝馬(父ドリムアヘッド)、母がG1ファルマスS(芝8F)勝ち馬ジオフラという上場番号100番の牝馬(父ガリレオ)、G1ジャックルマロワ賞(芝1600m)勝ち馬アルワケールの半弟にあたる上場番号144番の牡馬(父フランケル)、G1コロネーションS(芝7F213y)など2つのG1を制しているウォッチミーの半弟にあたる上場番号286番の牡馬(父エルヴストローム)らが、購買者たちの注目を集めることになりそうだ。

 上場馬の質が良く、その一方でマーケットはソフトなものとなりそうなだけに、購買側から見れば「買い時」だと思うのだが、日本人にとってポイントとなるのが渡航制限だ。現段階(8月4日)で、仏国は日本人の入国を受け入れており、入国後に検疫期間を設ける必要もないが、日本帰国時には自宅などで2週間の待機期間を過ごすことが義務づけられている。そして、こうした渡航条件は、両国の感染状況を踏まえて改訂される可能性があるので、最新情報に注意したいところだ。

 いずれにしてもアルカナ社は、参加者にマスクもしくはフェイスシールドの着用を義務付ける他、ソーシャルディスタンスの確保、施設のこまめな消毒など、様々な感染防止対策を整えて運営にあたる方針を示している。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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