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【レパードS】レコード決着の裏に垣間見えたGI級の素質

  • 2020年08月10日(月) 18時00分

敗戦を糧に秋以降の成長を期待


 JRAの3歳ダート重賞は限られるので、第一回(2009年)に出走のトランセンド、ワンダーアキュートを出発に、ミラクルレジェンド、ホッコータルマエ、インカンテーション、ケイティブレイブ…など、後のGI級の出世レースに相当するのがこのGIII。

 珍しく馬場状態が不良のままだったので、勝ったケンシンコウの1分49秒2(前半1000m通過60秒7-上がり48秒5-36秒6)はコース、及びレースレコードだった。好時計の出やすいコンディションでもあり数字通りには評価できないが、追い詰められることもない完勝だった。レパードSを2馬身半差以上の差をつけて制した馬は、トランセンド(ジャパンCダート2連覇などダート10勝)、インカンテーション(フェブラリーS2着などダート11勝)、アジアエクスプレス(朝日杯FSのほかダート3勝)であり、GI級のパワーを備える素材とすることはできる。

 父パイロ(その父Pulpit)は、ダート中心の公営の種牡馬ランキングで2016年以降「3、4、3、2、3」位。ファミリーも公営のダート血統で、母マトゥリアルカは南関東公営で10勝。4代母コースライン(父フィダルゴ)の全兄には、1976年の東京ダービー、黒潮盃などのロッキラインがいる。ライバルはファインポートだった。JRAでは「TTG(トウショウボーイ、テンポイント、グリーングラス)」の世代。5代母コメットラインは浦和の桜花賞2着、川崎の関東オークス3着馬。まさにダートでこその血統背景があった。

重賞レース回顧

写真提供:デイリースポーツ


 内枠を利し、同じく好スタートだったタイガーインディ(父はパイロと同じA.P.Indy系のシニスターミニスター)にハナを譲らず、追い込みの決まらないコンディションのなか、途中で息の入るマイペースだった。最後はまだ余力があった印象もある。

 伏兵としての勝ち馬であり、たちまちGI級とはいえないが、タフに成長してくれること必至。交流ダート重賞のエース級に育つ可能性があり、高く評価しておきたい。

 粒ぞろいではあっても、大物ムードのある馬はいなかったが、2着ミヤジコクオウ(父ヴィクトワールピサ)は、全17勝中16勝がダートだったエスポワールシチー(父ゴールドアリュール。この馬も最初のうちは必ずしも高く評価されていなかった)の下らしく、ハデなタイプではないが、父は同じサンデーサイレンス系。初の左回りのためかエンジン全開になるのが遅かったが、兄と同じようにどんどん評価が高まるだろう。

 ブランクチェック(父パイロ)は、内枠から上手く流れに乗れたとはいえ、牝馬でただ1頭上位入線。しぶとく粘り込んだレース内容は素晴らしかった。3代母Banker's Lady(父Nijinsky)は中距離の米ダートGIを3勝している。母の父コロナドズクエスト(その父フォーティナイナー)は残念ながらわずか2年の供用で早世したため、日本での活躍産駒は少なかったが、昨年のエルムSのモズアトラクションなど、母の父の代になって活躍馬が増えている。ブランクチェックはダート【3-1-1-0】。1800mをこなしたのは大きい。

 人気のデュードヴァン(父デクラレーションオブウォー)は、珍しく好スタートで絶好の位置になったが、直線に向いてここまでのような勝負強さが見られなかった。東京の1600mをこなしているのだから、新潟1800mは大丈夫と思えたが、微妙に距離が長かったのかもしれない。先行有利な馬場コンディションで巧みに流れに乗ったのは有利なはずで、結果論だが、もっと強気に攻める手があったかもしれない。ダート【3-1-0-1】。まだ限界をみせたわけではなく、あまりタフなタイプではないことが判明しただけ。秋に再上昇したい。

 3番人気のラインベック(父ディープインパクト)、4番人気のライトウォーリア(父マジェスティックウォリアー)は、揉まれたわけではなく比較的すんなり行けたが、前者はこれでダート【1-0-0-1】。後者は【3-0-0-2】。2着や3着がないのは、能力接近の強敵とせめぎあった接戦の経験がないということでもあり、このキャリアだから仕方がない。ダート界ではめったに連勝馬は出現しない(競走体系も関係する)ように、今回の好走馬にしてもみんな苦い敗戦を経験している。敗戦を糧に強くなるのがダート巧者でもある。

 新潟には珍しい馬場状態(不良)で、後につながるかどうか難しいところはあるが、1分50秒0以内で走った上位1-4着馬はみんな初コースだった。全体レベルは低くなく、やがて交流のダート重賞で活躍しそうな雰囲気をもつ馬が複数いた。

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登録済

1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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