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セレクションセールとサマーセールが初の連日開催

  • 2020年08月26日(水) 18時00分

コロナ禍でも活況を呈した北海道市場


 24日(月)より新ひだか町静内の北海道市場を会場に、セレクションセールとサマーセールが始まっている。新型コロナウイルス感染拡大により、5月のトレーニングセール(札幌競馬場)が中止となり、さらに7月に予定されていたセレクションセールは1か月の延期で、ようやく今回、日高管内では今年初めてのサラブレッド市場開催に漕ぎつけた。

 この日を待ち望んでいた人々がひじょうに多かったのだろう。24日はセレクションセール、そして翌25日よりサマーセールがスタートしたが、両日とも大変な活況を呈していた。サマーセールはこの後28日(金)まで全4日間の日程であり、すべて終了してみなければ最終的な結果は分からないが、この原稿を書いている段階(26日午前)では、驚くほど順調にセリが推移している、と言って良いだろう。

 すでに報じられているように、24日のセレクションセールは、異様な盛り上がりであった。夥しい数の購買関係者が会場に足を運び、比較展示の段階から「かなり多くの人々が集まっている」印象であった。ここかしこに旧交を温め談笑したり情報交換したりする光景が見られ、それぞれマスクを着用している点を除けば、いつものセリ風景と変わらない。

 聞くところによれば、セレクションセール当日の購買登録者は1300人を超えたとのこと。コロナ禍により、春以来自由に牧場を回って馬を見て歩くことが叶わなかった多くの購買関係者が一堂に会したような雰囲気であった。

 セレクションセールはセリ開始直後から高額落札馬が目白押しで、従来なかなか超えられなかった4000万円の壁を一気に突破した。既報の通り、最高価格馬は155番キルシュワッサーの2019(牡黒鹿毛、父ドゥラメンテ、母の父サクラバクシンオー)の7200万円(税抜き)。日高町・天羽禮治牧場の生産・上場馬で、廣崎利洋HD(株)が落札した。

生産地便り

キルシュワッサーの2019


 次点は125番スマッシュハートの2019(牡鹿毛、父キズナ、母の父キングカメハメハ)の6000万円(税抜き)。落札者は寺田千代乃氏。さらに三番目が91番ティズウインディの2019(牝鹿毛、父ディープインパクト、母の父Tiznow)の5800万円(税抜き)。落札者は石川達絵氏。この二番目と三番目の両馬はともに浦河町の(有)酒井牧場の生産・上場馬である。

生産地便り

スマッシュハートの2019


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ティズウインディの2019


 マックスビューティ、ホクトベガなどを輩出してきた酒井牧場は、浦河の代表的な名門牧場で、今回のセレクションセールには6頭を上場し、うち5頭を計2億200万円(税抜き)で売却して存在感を示した。

 セレクションセールでは223頭中184頭が落札され、昨年を大きく上回る32億6300万円(税込み35億8930万円)の売り上げを記録し、翌日から始まるサマーセールに勢いをつけた形となった。後述するが、終了時刻も想定内で、上場頭数がこの程度ならば、セリ進行はひじょうにスムーズに運ぶ。明るいうちにセリが終わってくれたのはありがたかった。

 25日(火)からはサマーセールである。セレクションでチェックしていた馬を買い切れなかった購買者が多かったようで、サマー初日も前日からの“余熱”が会場に漂う中、正午よりセリが開始された。

 初日でまず大きな話題を提供したのが、305番(サマーセールは301番よりスタートする)のマドリガルスコアの2019(「健叶」と名付けられているようだが、ここではマドリガルスコアの2019と表記する)だ。北海道静内農業高等学校の生産馬で、父はマクフィ。牡鹿毛。3年生の女子生徒が手綱をとりステージに姿を現すと、250万円から始まった価格はどんどんつり上がり、あっという間に1000万円を突破した。場内がざわつく中、さらに価格は高騰し、2000万円を超えて、ついに2500万円(税抜き)にまで到達。落札の瞬間は場内から拍手が起こる感動の場面が現出した。

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マドリガルスコアの2019


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マドリガルスコアの2019の落札の瞬間には場内から拍手が起こった


 落札者はテイエムの冠名で知られる竹園正継氏。比較展示時から注目していたとのことで、外に出てからは笑顔で3人の高校生(コロナ禍により他の生徒は会場入りしていない)と一緒にマドリガルスコアの2019を挟んで記念撮影に応じていた。

生産地便り

マドリガルスコアの2019と記念撮影をする購買者


 従来の静内農高生産馬のセリにおける最高価格は600万円。それを一気に1900万円も更新したことになり、いきなりサマーセール冒頭から大きな話題を提供してくれた。

 初日の最高価格馬は515番タムロウイングの2019(牡鹿毛、父シニスターミニスター、母の父ブラックホーク)の3200万円(税抜き)。浦河町・(有)宮内牧場の生産・上場馬で、落札者は前田晋二氏。また牝馬では、450番コパノマルコリーニの2019(鹿毛、父リオンディーズ、母の父マヤノトップガン)の1600万円(税抜き)が最高価格であった。生産・販売申込者は日高町・(有)前野牧場。落札者は(株)LEVEL-K。

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タムロウイングの2019


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コパノマルコリーニの2019


 サマーセール初日は280頭中213頭が落札され、売却率76.07%と順調な滑り出しとなったが、その分、セリ進行に時間を要し、最後の上場馬がステージに登場したのは午後8時近くのことであった。活発な取引が続けばそれだけセリは長引くとはいえ、午後8時というのはいささか度を越している。このあたりはまた改めて触れたいと思う。
生産地便り

サマーセール終了間際の落札馬撮影風景


 ともあれ残り3日間、どのようなセリが展開するか引き続き注視したい。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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