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“天才少女”の独壇場となるか!「ケンタッキーオークス」展望

  • 2020年09月02日(水) 12時00分

逆転があれば経験に勝る「あの馬」


 ケンタッキーダービー同様に例年より4か月遅れて、3歳牝馬による第146回ケンタッキーオークス(d9F)が、9月4日にチャーチルダウンズ競馬場で行われる。

 8月31日に出馬投票が行なわれ、9頭がエントリーを済ませた中、1番人気が予想されるのが、ボブ・バファート厩舎のガミーン(牝3、父イントゥミスチフ)だ。

 キーンランド9月1歳市場にて22万ドル(当時のレートで約2488万円)でピンフックされた後、ファシグティプトン・ミッドランティック2歳市場に上場され、公開調教で1Fでは最速タイとなる10秒フラットをマーク。これを受けて開催された市場で、セッション最高値となる180万ドル(当時のレートで約2億円)で購買されたのがガミーンだ。

 デビューは3歳3月までずれ込んだが、以降ここまで4戦して3勝。2着以下に18.3/4馬身をつけたG1エイコーンS(d8F)、7馬身差をつけたG1テストS(d7F)など、ド派手なパフォーマンスを連発している「天才少女」である。唯一の敗戦となったのが、デビュー2戦目となったオークローンパークの条件戦(d8.5F)だったが、ここも1着入線後に禁止薬物が検出されて失格処分となったもので、実質的には無敗でここまで来ている。

 スピードの絶対値という点で、この世代の牝馬では抜けている同馬にとって、ここでのポイントは初距離となる9Fをこなせるかどうかにある。1着入線後に失格となった条件戦の8.5Fが、同馬がこれまで走った最長距離なのだが、他の3戦ではいずれも楽勝しているのに、同競走では2着入線馬に首差まで迫られているのだ。管理調教師ボブ・バファートは「距離に心配はない」としているが、ゴール目前で失速という場面もあるかもしれない。

 ガミーンは、8月29日(土曜日)にデルマーで1週前追い切りが行われ、6F=1分11秒60の時計をマーク。31日(月曜日)に決戦の地チャーチルダウンズに入っている。

 ガミーンを逆転するとすれば「この馬」と見られているのが、ケン・マクピーク厩舎のスイススカイダイヴァー(牝3、父デアデヴィル)である。

 4代前までのファミリーツリーに重賞勝ち馬が1頭もいないという地味な血統背景を持つことから、エントリーしたキーンランド9月1歳市場ではブック4に配され、3万5千ドル(当時のレートで約396万円)という廉価で購入されたのがスイススカイダイヴァーだ。

 2歳11月にチャーチルダウンズのメイドン(d7F)でデビュー勝ちを果たしたものの、その後は3連敗を喫し、日の目を見ることがなかった期間を過ごしているあたり、セールで脚光を浴び、デビューするや一気にスターダムを駆け上がったガミーンとは、対極にいる競走馬と言えそうだ。

 攻勢に転じたのは、今年3月にG2ガルフストリームパークオークス(d8.5F)を制し、デビュー5戦目で重賞初制覇を果たしてからで、その後、G3ファンタジーS(d8.5F)、G2サンタアニタオークス(d8.5F)を制して重賞3連勝。勢いに乗って牡馬にぶつけたキーンランドのG2ブルーグラスS(芝9F)では2着に敗れたものの、牝馬相手だった前走サラトガのG1アラバマS(d10F)は3.1/2馬身差で完勝している。9Fの距離も、チャーチルダウンズの馬場も経験済みというのが、ガミーンにはない強みだ。8月29日にチャーチルダウンズで1週前追い切りが行われ、5F=62秒20、4F=49秒20の時計をマークしている。

 上位人気2頭とは、おそらくは離れたオッズになりそうだが、ここまでの実績から3番手評価を受けているのがマイケル・マッカーシー厩舎のスピーチ(牝3、ミスタースピーカー)だ。OBS3月2歳市場にて19万ドル(当時のレートで約2134万円)で購買され、2歳11月にデビュー。重賞初挑戦となったG3サンタイザベルS(d8.5F)で2着に健闘した後、駒を進めたのがオークローンパークの条件戦(d8.5F)で、ここでも2着で入線した同馬は、1着馬からレース後の薬物検査で禁止薬物が出て失格となり、繰り上がりで2勝目を挙げている。前述した、ガミーンが失格となったレースで、繰り上がりで優勝したのがスピーチで、すなわち、ガミーンに首差まで迫っていたのはこの馬だったのである。続くG2サンタアニタオークス(d8.5F)でスイススカイダイヴァーの2着となった後、7月11日にキーンランドで行われたG1アッシュランドS(d8.5F)を3馬身差で制し、重賞初制覇をG1で飾っている。

 以下、スピーチを2着に退けて制した3月8日のG3サンタイザベルS(d8.5F)以来、半年ぶりの出走となるドナヴェローチェ(牝3、父アンクルモー)、7月8日にインディアナグランドで行われたG3インディアナオークス(d8.5F)で2度目の重賞制覇を果たしたシーデアズザデヴィル(牝3、父デアデヴィル)らが支持を集めている。

 グリーンチャンネルでは、翌日行われるG1ケンタッキーダービーの模様を生中継(6日午前7時30分〜8時30分放送)するが、ここでG1ケンタッキーオークスも模様も録画でお届けする予定なので、ぜひご覧いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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