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“1キロの差”に苦渋の決断「乗る気満々やったのに…」

  • 2020年09月01日(火) 18時01分
早いもので、今週末で夏の小倉開催が終了。最終週の見どころといえば、そう、小倉2歳Sです。ここには小牧騎手のパートナーであるセレッソフレイムが、有力馬の1頭としてスタンバイ。久々の重賞制覇に期待がかかります!

また、土曜日のメインにも楽しみな馬がいたのですが、こちらの騎乗は断念せざるを得なかったそうで…。はたしてなにがあったのか、苦渋の決断までの経緯を語ってくれました。(取材・文:不破由妃子)

※このインタビューは電話取材で実施しました。

51キロの壁は、高いなんてもんじゃない!


──先週は土日で4頭に騎乗されて、カオリナイト(8月30日・小倉1R・2歳未勝利)の6着が最高という結果に終わりました。

小牧 結果は残念やったけど、吉田(直弘)厩舎や牧田(和弥)厩舎には、久々に乗せてもらえてね。それは本当によかったです。

──牧田厩舎は今年の4月以来、吉田厩舎は2018年11月以来の騎乗でしたね。

小牧 うん。実はね、先週まで2週間、小倉に滞在していたんですわ。僕史上、初の滞在競馬やった。

──そうだったんですね! ジョッキーから見た滞在競馬の特徴のひとつとして、調教と実戦の騎乗が結びつきやすいというのがありますが、吉田厩舎や牧田厩舎もそのパターンですか?

小牧 そうそう。まずは追い切りを頼まれて、レースでもということになったんやけどね。ホンマにいい2週間やったわ。昼間はゴルフに行ったりもしたけど、夜はほとんど外に出んと、早々に寝てたね。有意義やったわ。

──今週はいよいよ小倉最終週。小倉2歳Sのセレッソフレイムも楽しみですが、土曜日のメイン、テレQ杯(3歳上3勝クラス・芝1200m)のビアイも期待の1頭では?

小牧 ああ、ビアイはね、乗らんことにしたんです。テレQ杯はハンデ戦でしょう。52キロだと思っていたら、昨日51キロだということがわかって。乗る気満々やったのにねぇ。51キロは……さすがにちょっと無理やなぁ。ビアイ以外にも、思ったよりハンデが軽かった馬がけっこういたみたい。コウエイダリアも51キロになってたし。51キロを乗れるジョッキーとなると、けっこう限られるからね。ビアイはいいところやと思っていたから、本当に残念なんやけど。

──そうでしたか。競馬ブックの想定でも◎がついていたので、これは楽しみだなと思っていたのですが。

小牧 ホンマにねぇ。昨日もね、ハンデが出る前、暑いなか52キロに向けて走ってたのに。本当に残念や。昨日は悔しさのあまり、腹いっぱい食べたった(笑)。

──小牧さんの無念は察するに余りあります。その1キロの壁は、きっと私たちが想像する以上に高いんでしょうね。

小牧 高いなんてもんじゃないよ。ファンの人からすれば、「1キロくらい…」と思うかもしれんけど、僕が51キロに乗れるまで絞ったら、ほかの騎乗に影響する。それくらい、52キロと51キロは違うねん。もちろんね、死に物狂いでというか、何日もまったく食わずにその日を迎えれば乗れるかもしれんけど、そんな状態では馬の力を引き出せんでしょう。僕ね、年齢に関係なく、昔から51キロは厳しいねん。これはもう骨格の問題やね。中央にきて15年以上経つけど、確か51キロは1頭しか乗ってないんちゃうかなぁ。

──51キロでの騎乗は、2006年の西日本スポーツ杯に騎乗したガーネットスター1頭です(4番人気12着)。

小牧 そうでしょ? 15年近く前やけど、ものすごくしんどかった記憶があるもんね。

──ジョッキーにとって1キロの差がどれだけ大きいか、改めて気づかされました。さて、話は変わりまして、セレッソフレイムの最終追い切りは騎乗されるんですか?

小牧 いや、調教は乗らずに向かいます。これまでは1週前に乗ってたんやけど、先週は僕が小倉にいたからね。馬場が悪いのは気にならん馬やし、走ることはわかってる。チャンスは十分にあると思ってるよ。

──本当に楽しみです。では、質問をふたつほど。「SNSによる誹謗中傷が問題になっていますが、小牧騎手はエゴサーチをしたことがありますか? もし、自分に対する悪い書き込みなどを見てしまった場合、どのように受け止めていますか?」。

小牧 僕は一度もエゴサーチをしたことがないから、自分の目でそういう書き込みを見たことがないね。今はもうスマホやけど、電話とメールとLINEくらいしか使わんし。それ以上の扱い方を知らんから、ちょうどいいわ(笑)。それにね、ネット上の悪い書き込みなんて見らんほうがいいでしょう。見たら気になってしまうし。まったく気にせんでいられる人間なんておらんよ。

──おっしゃる通りです。そのマイナスな意見に気持ちが引っ張られてしまうと、自分を見失いかねない。

小牧 そうそう。そうなるのは絶対に違うと思うから。「こんなことが書いてあったよ」とか、どうしても耳に入ってきてしまうことはあるけどね。それだけでも嫌やし。

──もうひとつ、SNSにまつわる質問です。「温泉やグルメ系の写真を撮って、インスタにアップする予定はありませんか? 小牧騎手のインスタがあれば、絶対に見るのに!」。

小牧 インスタもやるつもりはないねぇ。期待に応えられなくて申し訳ないけど、「いまや僕のすべては『太論』を見ればわかります」って書いといてください(笑)。
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1967年9月7日、鹿児島県生まれ。1985年に公営・園田競馬でデビュー。名伯楽・曾和直榮調教師の元で腕を磨き、10度の兵庫リーディングと2度の全国リーディングを獲得。2004年にJRAに移籍。2008年には桜花賞をレジネッタで制し悲願のGI制覇を遂げた。その後もローズキングダムとのコンビで朝日杯FSを制するなど、今や大舞台には欠かせないジョッキーとして活躍中。

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