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名古屋競馬場での感染症対策―ファンのささやかな楽しみ、関連産業を守るために―

  • 2020年09月16日(水) 18時00分
9月1日、西日本地区では初めて名古屋競馬場で一般ファンの入場・レース生観戦が再開されました。今年に入ってから新型コロナウイルス感染症が拡大の一途をたどり、2月末から全国で無観客競馬が続いた中、様々な感染防止策を取り、競馬ファンにとって待ちに待った生観戦できる機会。新型コロナウイルスとの戦いはまだ続いているとあって、手放しで喜べる状況ではありませんが、それでも競馬ファンのささやかな楽しみの時を覗きに、今回の「ちょっと馬ニアックな世界」は名古屋競馬場に行ってきました。


コロナ対策の「エチケットカード」とは?


 帯広競馬場(ばんえい)、盛岡競馬場、水沢競馬場、浦和競馬場、大井競馬場とファンの入場を再開した地方競馬(一部競馬場では居住地による制限や、事前発売の指定席券をお持ちの方のみなど、入場に際し制限があります)。

 西日本地区でもついに名古屋競馬場が8月26日から場外発売を、9月1日からは実際にレース観戦ができる本場開催での入場が再開しました。

 入場再開を決めたポイントとして愛知県競馬組合の担当者は、

「3点あり、1つはお客様からのご要望が多くあったこと。2つめは、売上自体は好調であるものの、競馬場を取り巻く関係団体や業者等の雇用及び収入の確保、そして3つめは県庁をはじめとする関係各所と協議を重ね、安全にお客様を迎え入れる体制が整ったことです。特に2つめの点は重要でした」と説明します。

 競馬開催には警備員、清掃員、場内食堂など多くの雇用が関わっています。また専門紙もコンビニのコピー機で販売しているとはいえ、無観客競馬では売り上げが大幅ダウンしたところが多く、関連産業を守ることも重要課題でした。

 そうした中で、再開できた一般ファンの入場。

 まず、入場門をくぐると体温測定と、警備員さんからアルコールスプレーを手のひらにしてもらいます。もちろん、マスクの着用もお願いします。

 普段は入場料100円ですが、10月31日までは接触を避けるため、入場無料となっています。そして、入ってすぐに促されるのが「エチケットカードをお取りください」ということ。

馬ニアックな世界

▲入場門をくぐってスグ、エチケットカードや鉛筆を持っていくよう呼びかけています(提供:愛知県競馬組合)


 初めて聞く「エチケットカード」。これも他者との接触を避けるため考案されたもので、マークシート記入台での感染リスクを避けるため、この厚紙を台にしてマークシートを塗ってください、というもの。

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▲ほどよい大きさと硬さのエチケットカード


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▲接触感染のリスクを避けるため、場内の記入台はこのように使用できなくなっています


 かなりしっかりした厚紙で、マークシートを乗せるのにちょうどいい大きさ。

 さらに裏面には連絡先の記入欄があります。実はこれ、万が一、場内で新型コロナウイルスの発生があった場合に追跡調査を可能にするため、名古屋競馬場オリジナルの対策なんです。

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▲裏面には連絡先や場内での利用施設を記入するようになっています


 イベント等開催における愛知県の指針として「イベント参加者に接触確認アプリ(COCOA)の活用を促すこと」「イベント参加者の連絡先等の把握を徹底すること」が示されているのですが、来場者の中にはスマホをお持ちでなく、COCOAをインストールできない方もいらっしゃるため、こちらが考案されたとのこと。

 担当者によると、「今までなかった習慣をお客様に行ってもらうにあたり、習慣化するためエチケットカード裏面を記入し、回収箱に入れてくださったお客様にはオリジナルグッズのプレゼントなどを行い、現在もエチケットカード利用が浸透するように工夫を行っているところです」とのこと。

 新型コロナウイルスにかからないことが一番ですが、これだけ蔓延したいま、万が一を想定して、いかに被害を最小限にとどめるかというリスク管理も大切になってくるでしょう。

 パドックでは密にならないよう、立ち位置の目印テープが貼られ、お客様同士もきちんと間隔を保ってくださっているようです。

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▲馬や新聞に集中しがちなパドックでも密にならないようにしています(提供:愛知県競馬組合)


 スタンドの観覧席や発売機もソーシャルディスタンスが保てるようになっています。

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▲ソーシャルディスタンスを保つため、3席あけないと座れないようになっています


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▲発売機に並ぶ時の目印や、発売機も1台ごとにしかオープンしていません


 特別観覧席など有料席は席数を半分にし、販売窓口を総合案内所から各有料席入り口での販売に切り替えてはいるものの、従来通り利用することができます。

 余談ですが、私が取材に行った9月4日は大雨のため全レース取り止めとなり、実際にファンの様子を見ることができなかったのですが、担当者のお話では「場内ではお客様同士が自主的に他の人との距離を保っています」とのことで、ここまで大きなトラブルなくきているようです。

食堂も予想屋もヤギも、みんな元気です!


 今年4月、無観客の中でデビューした細川智史騎手は「楽しかったですし、モチベーションも上がりました」と、初めてファンの前で騎乗できたことで、さらに原動力を得たようです。

 また、宮下瞳騎手も「今まで気が入っていなかったわけではないんですが、身が引き締まるというか、さらに気合いが入ります。ファンも大きな声援はかけられないようですが、ニコニコっとしてくれる方もいて、嬉しいです」とのこと。

 なお当面の間、重賞レースなどの表彰式やインタビューはバックヤードで行い、後ほど公式HPやYouTubeでの配信となりますが、口取り撮影は馬場で行う予定とのことで、写真好きの方はそこで撮影することもできそうです。

 密になる可能性が高いゴール前(白線より内側)は椅子に座って観戦するようご協力をお願いしていますが、少しずつ以前のように競馬を楽しめる状況に戻ってきました。

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▲白線より前ではベンチに座って観戦。ベンチにもソーシャルディスタンスを保てるようテープが貼られています


 さらに、場内食堂・売店では「入場再開記念サービス」と題して、各日先着で割引券を配布したり、串カツやコーヒーなどの無料サービスを行っています。※各店のサービス内容や期間・数量については名古屋競馬場HPをご覧ください

 無観客競馬が約半年続き、場内食堂・売店の存続を危惧されていた競馬ファンも多かったようですが、全店再開できているとのこと(入場門東側の「平野屋」はコロナとは関係なく、店主の体調不良により閉店したそうです)。

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▲早速、食堂・売店を利用する競馬ファンの姿も(提供:愛知県競馬組合)


 また、場内の予想屋さんもみなさん帰ってきましたし、名古屋競馬場のアイドルヤギ「ポテト」と「チップ」も元気です。

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▲暑い時期は日陰で過ごしていた「ポテト」と「チップ」


 場内の滞留人数が多くなった場合、入場制限をかける場合があるとのことですが、9月1週目の開催と昨日15日の開催を終えた時点では入場制限をかけることはなかったとのことです。

 さらに、高知競馬場では9月12日から、佐賀競馬場は9月19日から、笠松競馬場は9月22日からの本場開催で入場が再開されます。

 各競馬場、入場に際して注意事項などがありますので、来場される方は事前にHPをご確認いただければと思います。

「ぜひ競馬場に来てください!」とは言いづらい状況。でも、しっかり対策を取った上で、安全に競馬を楽しめるといいですね。

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競馬リポーター。競馬番組のほか、UMAJOセミナー講師やイベントMCも務める。『優駿』『週刊競馬ブック』『Club JRA-Net CAFEブログ』などを執筆。小学5年生からJRAと地方競馬の二刀流。神戸市出身、ホームグラウンドは阪神・園田・栗東。特技は寝ることと馬名しりとり。

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