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【ローズS】秘めていた中距離適性を武器に復活の勝利

  • 2020年09月22日(火) 18時00分

本番では今年の日程がリアアメリアの大きな味方になる


 1600mを2連勝のあと、GIを3連敗していたリアアメリア(父ディープインパクト)が鮮やかに復活。少々怪しくなっていた高い評価を一気に取り戻した。

 「新馬1600m→アルテミスS1600m」と連勝した時点で、リアアメリア陣営が「阪神JF→桜花賞…」を目標にしたのは当然のこと。実際、近年の名牝のほとんどがこのローテーションを取っている。ただ、今回のレース直後のストレートな感想は、並外れた素質馬とされながら阪神JF→桜花賞を連続して凡走し、東京2400mのオークスで立ち直り(再評価)をみせていたリアアメリアはやはり中距離タイプの可能性大であること。

重賞レース回顧

写真提供:デイリースポーツ


 また、秋華賞路線を歩むとき、変則開催の今年は「阪神1800mのローズSから→京都2000mの秋華賞」ではなく、「中京2000mのローズSから→本番の秋華賞2000m」に変更された重賞日程が、このあと大きな味方になるのではないかということだった。

 今回のローズSのレース全体の中身「60秒9-59秒0=1分59秒9」が示す通り、トライアルがゆったり流れる2000m(まして左回り)で行われたのは、リアアメリアには思われていた以上に有利だった。9月の阪神1800mのローズSは、平均して1分45秒台の高速レースがふつうであり、それはマイラータイプの好む区分に近い。だが、中京の2000mは快速マイラーの舞台ではなく、本質中距離タイプの距離だった。

 川田将雅騎手はレース後のインタビューで「こういうレース運びを思い描いていた」と振り返ったが、阪神の9月の高速の1800mでは、前半からスムーズに好位2-3番手のレースはできなかった危険がある。阪神JF1600mや、桜花賞1600mのような苦しい追走にはならなかったのが有利だった。

 2000mのローズS→2000mの秋華賞という今年の日程は、本番=秋華賞を展望するとき、リアアメリアに大きなアドバンテージをもたらした。リアアメリアも決して器用な自在型ではないが、桜花賞やオークスのデアリングタクト(父エピファネイア)も、スーッと流れに乗れるレース巧者ではない。危なっかしいレースで2冠達成が一段と強さを際立たせてきたが、危なっかしいのは(実際)否定できない死角である。

 オークスのような爆発力の勝負「最後の3ハロン11秒2-11秒2-11秒8=34秒2」になるとデアリングタクトの切れ味断然の評価は変わらないが、良ー稍重の最近10回の秋華賞2000mの上がり3ハロンは8回まで35秒台。勝負は最後の切れだけではない。

 デアリングタクトのレース運びしだいだが、自在性を身につけた秋華賞のリアアメリアは、今度は、脇役や引き立て役にとどまらない可能性が出てきた。

 2着に突っ込んできたのは伏兵14番人気のムジカ(父エピファネイア)。外枠から1コーナー過ぎに巧みにインに入ってコースロスを防ぎ、最後の直線は馬群を割って上がり34秒0で一気に伸びた。まだ1勝馬だが、これで1800-2000m【1-4-3-0】。同じファミリーに属する日本での活躍馬には、GI安田記念など重賞レースで2、3着が8回もあった、似たような差し馬のショウナンマイティ(父マンハッタンカフェ)がいた。勝ちみに遅いタイプだが初めての2000mで、重賞初挑戦。母の父ディープインパクト譲りの切れは光った。

 ムジカの直後を追走していた11番人気のオーマイダーリン(父ディープインパクト)がそのまま内に突っ込んで3着。こちらも2000mは初めて、なおかつ今回は連闘での出走だった。河内洋調教師は、騎手として第一回のローズSなどこのレースを歴代2位の5勝もしている。得意の牝馬戦に大きな手応えがあったのだろう。見事に優先出走権を確保した。「牝馬の河内」騎手は、第一回の秋華賞も2着(エリモシック)している。

 伏兵が快走したなか、紛れの生じやすい乱ペースではなかっただけに、1番人気の上がり馬フアナ(父ルーラーシップ)の後方に置かれたまま11着(1秒1差)はちょっと心配。行き足が鈍く、最初から位置取りが悪くなってしまった。直線でも前が空かなかった。

 4番人気のデゼル(父ディープインパクト)はスタートでバランスを崩して、道中は最後方の一団。そこから上がり最速の33秒8で外から突っ込んだが4着止まり。中間、あまり順調ではなかった弱みが出てしまったが、こちらは本番では大きく変わるだろう。

 2番人気のクラヴァシュドール(父ハーツクライ)は、外から伸びかかったが5着まで。18キロ増えた馬体は良く見え、レース前の落ち着きもあったが、レース内容は春とあまり大きく変わらなかった。重賞2着2回、GIを3着、4着の実績は上位。本番では巻き返してくるはずだが、ハーツクライ産駒ながらこのレースに出走していたウーマンズハートと同じように、距離は1600mくらいの方が合うのかもしれない。ウーマンズハートの母の父にも同じGiant's Causewayジャイアンツコーズウェイ系種牡馬の名が登場する。

 この10年、ローズSをステップに秋華賞で連対した馬が「10頭」もいる。連対馬が「14頭」にも達する神戸新聞杯と、菊花賞の結びつきとまったく同じ。共通するのは2つのGIを合わせて計24頭、すべてトライアルを「5着以内」の好走馬だった。明らかな理由がなく充実の秋のここで凡走すると、歴史は2-3歩後退を示している。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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