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セプテンバーセールが開幕

  • 2020年09月24日(木) 18時00分

“原石”を求める根強い需要


 日高軽種馬農協主催の「セプテンバーセール」が9月22日〜24日の日程で始まっている。今日が最終日だが、締め切りの関係で、2日目終了の時点で本稿を書いているため、全日程を終えての総括は次回にでも触れることにしたい。

 北海道の9月は暑くもなく寒くもないひじょうに過ごしやすい季節で、今回のセールも幸いなことに連日好天に恵まれており、順調に日程を消化できている。

 展示は午前8時半より、セリ開始は正午で、1ヵ月前のサマーセールとほぼ同じスケジュールだが、今回のセプテンバーセールは、1日当たりの上場頭数が初日215頭、2日目203頭と、サマーより少ないため、終了時間も午後5時〜5時半前後で、まだ辺りが明るいうちに終わってくれるのがありがたい。

 2日目終了時点での開催成績をまとめておくと、次のようになる。初日は215頭(牡94頭、牝121頭)が上場され、155頭(牡74頭、牝81頭)が落札、売却率は牡78.72%、牝66.94%、全体では72.09%であった。売上総額は7億6505万円(税込み)。平均は牡が589万6892円、牝が405万7777円、全体では493万5806円。

 2日目は203頭(牡77頭、牝126頭)の上場で、150頭(牡56頭、牝94頭)が落札されて、売却率は牡72.72%、牝が74.6%、全体では73.89%。総額7億7990万円の売り上げで、平均は牡648万4107円、牝が443万3936円、全体では519万9333円。

 今日3日目の成績を加えてみなければセール全体の数字は出せないが、2日目終了の時点で、すでに昨年の同セールの総額(15億9786万円=税込み)に迫る15億4495万円を売り上げており、売却率はこれまでのところ72.97%、平均価格も506万5410円と、昨年の平均価格440万1818円をかなり上回っている。

 さすがにセレクション、サマーセールほどの熱気こそないものの、依然として1歳馬を求める根強い需要がある、ということであろう。

 今回のセールで、おそらく最も注目を集めたのは、2日目に登場した、370番アートリョウコの2019(父ヴァンセンヌ、牡鹿毛)であろう。去る9月21日(月)に、中山で行われたセントライト記念を制したバビットの半弟である。本馬は生まれが5月13日とやや遅いことから、成長を待ち、サマーセールをスルーして今回のセプテンバーセールに上場することにした、とは生産者である(有)大北牧場・齋藤敏雄氏のコメントだ。それが見事に奏功し、半兄がGII重賞を勝ってくれたわずか2日後という、これ以上の追い風はない状態でセールに臨むことになった。

生産地便り

バビットの半弟、アートリョウコの2019


 本馬は600万円からのスタートでセリが開始されたが、見る見る間に価格が急上昇し、2500万円まで到達した。激しい争奪戦の末に落札したのはディアレストクラブ(株)。

生産地便り

アートリョウコの2019、落札時の様子


 これほど絶妙のタイミングでセールを迎えられた例は過去にもほとんどなかろう。ツイている時には、何をやってもうまく行くらしく、大北牧場はこの2日目に本馬を含め5頭(牡2頭、牝3頭)を上場したが、全て落札された。

 周知のように、バビットは、昨年5月に札幌競馬場で開催された北海道トレーニングセールにて540万円(税込み)で落札された馬だが、実はその前年2018年のオータムセール初日に162万円(税込み)で(有)グランデファームが落札し、調教を積んで翌年のトレーニングセールに上場した馬である。

「目立たない地味な血統で、注目度が低かった」と生産者の齋藤敏雄氏が半弟のセール後にバビットの1歳時の印象について語っていたが、これで4連勝。一気に菊花賞の有力候補に名乗りを上げたことになる。これこそサクセスストーリーそのもの。日高にはこうした“原石”がまだごろごろしているのである。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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