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【凱旋門賞】「“引退”という言葉は考えない」込山調教助手が振り返るディアドラとの1年半

  • 2020年10月04日(日) 15時00分
ノンフィクションファイル

▲今回の長期遠征に帯同している込山雄太調教助手(提供:吉村聖子)


コロナ禍の影響で、近年非常に盛んだった日本馬の海外遠征が激減した2020年。

歴史ある凱旋門賞に日本から唯一挑戦するのが、2019年のドバイ遠征から一度も帰国する事なく遠征を続け、ナッソーS制覇などの偉業を成し遂げたディアドラだ。

1年半にも及ぶ長期遠征に帯同している橋田厩舎の込山調教助手に直撃、長期遠征の苦労と凱旋門賞への意気込みを聞いた。

(取材・文=川上鉱介)


ここまで一頭の馬にフルに関わるのは初めて


――過去に類を見ない長期遠征となっていますね。

込山雄太調教助手(以下、込山助手) 昨年の3月のドバイ遠征以降は、8月にディアドラが放牧に出た際に少し帰国した時以外はずっと馬のそばを離れずに一緒に遠征を続けています。これほどの長期の海外遠征は大変ではないか、とはよく聞かれます。

 英語はあまり喋れないので苦労はありますが、遠征中は常に聖子さん(橋田調教師の娘)が帯同してサポートしてくれていますし、レース前後は橋田先生や宜長助手(橋田調教師の息子)も駆けつけてくれていました。

 現地でも素晴らしいサポートに恵まれているので長期の遠征にも関わらずとても楽しくやらせてもらっています。昨年の香港からサウジ開催に向けての約1ヶ月は帰国する事も出来たのですが、敢えて残りディアドラと2人で正月を過ごしました!(笑)

 最初はまったくでしたが、今では英語も少しずつ理解出来るようになって来ました。

――1頭の馬とこれほどの時間を一緒に過ごすのは稀ですか?

込山助手 はい、1年半もの間、ずっと一緒にいますからね。馬も人もお互いやりやすいとは思うのですが、一緒にいる期間が長くなりすぎて不思議な感覚になります。近すぎて逆に見えなくなるところもあるので気を付けています。

 遠征中は8月に放牧に出した時以外は、昼夜ずっと一緒にいます。長い事この世界で働いていますが、ここまで一頭の馬にフルに関わると言うのは初めてです。本当に可愛くて、家族のように大切な存在です。悲しくなってしまうので、“引退”という言葉は考えないようにしています!(笑)

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▲「本当に可愛くて、家族のように大切な存在です」(提供:吉村聖子)


――今回の長期遠征で得たものはなんですか?

込山助手 やはり、日本でしか調教をした事がなかったので、こっちの調教方法は大変勉強になりました。香港などの短期での海外遠征は幾度となく経験をしていたのですが、10日程度の滞在なので、日本で馬をある程度作って持っていって、現地では調整だけをして競馬、という形でしたので。

 今回は一から十までこっちで馬を作る、そして

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