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【秋華賞】圧巻の末脚で無敗の3冠へ

  • 2020年10月17日(土) 12時00分

史上初の大偉業に挑む


 果たして2週続けての大記録達成はあるのか。こんなことは初めてだ。こうゆうレースシーンを実況するアナウンサーは幸運と言ってよく、それこそ腕の見せ所と張り切っている筈。是非、そこにも注目してほしい。数々のシーンを伝えてきた経験のある者にとり、この秋は、例年とはちがって見える。牡牝の3冠レースは、サラブレッドにとり生涯で一度しかチャレンジできない。ここに登場するだけでも至難なのだから、檜舞台に顔を揃えた一頭一頭すべてが讃えられるべきで、その思いはいまも変わらない。

 ましてここまで無敗のままで、しかも3冠達成を目前にするとなれば、その瞬間が待ち遠しくなる。もちろん競馬だから何が起きるか分からない。なんとか一矢を報いたいと密かにチャンスをうかがう側を応援するのもいい。

 秋華賞のデアリングタクトは、勝てばJRA史上初の大偉業となる。桜花賞はタフな重馬場を直線だけで先行馬を力でねじ伏せ、デビュー3戦目、ハギノトップレディ以来40年ぶりの最少キャリアタイ記録で勝った。続くオークスはマークが厳しく、直線を向いても前がふさがる状態。残り300米すぎあたりでできたわずかなスキマを突いて一気に先団をのみこんでミスオンワード以来63年ぶりの無敗での牝冠2冠に輝いていた。この時の上がり3ハロンが最速の33秒1、決め手の鋭さがまぎれもなくこの馬の武器だ。

 過去10年、上がり3ハロン最速でオークスを勝った馬は、秋華賞に5頭出ていて、全てが勝利している。この中には、アパパネ、ジェンティルドンナ、アーモンドアイの3冠牝馬が含まれている。それぞれについて、アパパネの蛯名騎手は「スムーズな競馬をすることだけを考えた」と語り、ジェンティルドンナの岩田騎手は「オークスだけの脚は使える能力を信じていた」と言い、アーモンドアイのルメール騎手は「今まで日本で乗ったなかで一番強い馬」とまとめていた。

 京都内回り2000mは、コーナーが4つで直線が短くマギレがあるコース。前半から激しく流れることがあり、スタミナがあって早目にスパートできる馬がいい。気性面の成長が顕著なデアリングタクトなら、よく心得えている好調松山弘騎手だから大丈夫だろう。相手には、トライアルを先行して勝った2頭、東のマルターズディオサ、西のリアアメリア、それに、オークス以来のウインマリリン、ミヤマザクラの自在性のある2頭を加えておきたい。そしてもう一頭、京都内回りが適しているウインマイティーを押さえに。

 遥かなる名牝への軌跡を想い、ひた走りに走りつづける当日は、秋の日が照らす美しい緑のターフであってほしい。爽やかに秋気に満ちた大一番になることを祈っている。

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ラジオたんぱアナウンサー時代は、日本ダービーの実況を16年間担当。また、プロ野球実況中継などスポーツアナとして従事。熱狂的な阪神タイガースファンとしても知られる。

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