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JBCの20年

  • 2020年10月20日(火) 18時00分

日本のダート競馬が大きく進化を遂げた20年


 11月3日に行われるJBCの中央の登録馬が発表になった(地方馬も含めた登録馬の発表は23日)。JBCは今年で20回目という数字的な節目というだけでなく、今年から2歳馬カテゴリーのJBC2歳優駿(JpnIII)が加わった。従来の3競走の舞台は3年ぶり8度目となる大井競馬場で、2歳優駿の舞台は馬産地・門別競馬場。初めての2場開催となる。40分間隔に調整された発走時刻は次のとおり。

 16:30 大井8R JBCレディスクラシック(1800m)
 17:10 大井9R JBCスプリント(1200m)
 17:50 門別9R JBC2歳優駿(1800m)
 18:30 大井10R JBCクラシック(2000m)

 中央の登録馬を見ると、従来のJBC3競走にはそれぞれの路線でおなじみの有力馬が名を連ねているが、2歳優駿については前身の北海道2歳優駿の頃とあまり変わらない感じだ。登録馬発表の段階で選定馬となっている5頭は、プラタナス賞を勝ったタイセイアゲインがダート2勝だが、あとの4頭はダート1勝馬。

 ただこれは番組的に仕方ない面もある。中央競馬では2歳新馬戦の時期が早まり、2歳戦でも以前よりダート戦が増えたとはいえ、この登録までに実施されたダート1勝クラスは、9月26日中京1400mのヤマボウシ賞、10月17日東京1600mのプラタナス賞と、わずか2戦しかない。

 中央馬にとってJBC2歳優駿が目標とされるべきレースになるには、もっと早い時期からダートの番組を充実させる必要がある。

 ただ、クラシック、スプリントにしても、JBCが始まった頃は、その高額賞金(クラシック1億円、スプリント8000万円、当時)のわりに、中央の関係者の認知度が高かったわけではない。クラシックが、その後のチャンピオンズC(旧ジャパンCダート)、東京大賞典へと続く秋のダート主要レースとして、またスプリントがダート短距離の頂点として、中央の有力馬の多くが目標とするようになったのは、ヴァーミリアンがクラシックを3連覇した第7〜9回くらいからだったように思う。

 JBCが始まってからの20年を振り返ると、日本のダート競馬は確実に進化した。

 まずは有力馬のローテーション。たとえばJBCクラシックでアドマイヤドン(3連覇)やタイムパラドックス(2連覇)が活躍した初期の時代、ダートの中長距離路線はGIを狙う有力馬でも、故障による休養や海外遠征などでもない限り夏も休みなく使われ、エルムSやブリーダーズゴールドCなどに出走している馬が多かった。

 近年、芝のトップホースの多くは年に5〜6戦という使われ方が普通だが、ダートの有力馬が年に5〜6戦と、きっちりローテーションを決めて使われるようになったのは、2007〜09年にJBCクラシックを3連覇したヴァーミリアンあたりが最初だったように思う。

 現役馬では、ゴールドドリーム、オメガパフュームなどがGI/JpnIを中心にしたゆったりしたローテーションで使われており、クリソベリルに至っては2〜3歳時から使うレースを絞っていた。

 夏の門別・ブリーダーズゴールドCが2014年から牝馬限定戦に変更されたのは、有力馬の参戦が少なくなったからということもあっただろう。

 もうひとつは、日本のダート血統の充実だ。かつてであれば、ダートでいくら大レースを勝っても種牡馬として活躍することはほとんどなかった。それが近年では、種牡馬としても活躍することがめずらしくなくなった。

 まずはゴールドアリュール。2年に満たない現役生活で、自身はJBCに出走することはなかったが、種牡馬となってスマートファルコン、エスポワールシチー、コパノリッキー、ララベル、グレイスフルリープと、これまで5頭のJBC勝ち馬を出し、ゴールドドリーム、クリソベリルら現役馬を含め、10頭の産駒がダートGI/JpnIを制している。

 そしてエスポワールシチー、スマートファルコンはすでにその産駒からも重賞勝ち馬が出ており、GI/JpnIで国内最多の11勝という記録を更新したコパノリッキーの産駒も来年のデビューを控えている。

 引退レースとなった2003年のJBCスプリントを制したサウスヴィグラスは、ダート競馬、特に地方競馬の血統を塗り替えたといってもいい。ラブミーチャン、ヒガシウィルウィンの2頭がNARグランプリ年度代表馬となり、2015年のJBCスプリントを制したコーリンベリーは父仔制覇となった。

 地方出身で、種牡馬としても重賞勝ち馬を多数を出して活躍しているフリオーソのような存在もこれまでにはなかったこと。

 JBCが始まってからの20年は、日本のダート競馬が大きく進化を遂げた20年といえる。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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