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【天皇賞・秋予想】アーモンドアイは勝てるのか!? 3人の競馬記者がさまざまな角度から勝ち馬を徹底分析!<後編>

  • 2020年10月31日(土) 18時00分
アーモンドアイの、史上初となる8冠達成に注目が集まる今年の天皇賞・秋。アーモンドアイ断然ムードの一方で、安田記念でグランアレグリアが一矢報いたように、戴冠を虎視眈々と目論む実力馬も少なくない。今回は福島民報・高橋利明、東京スポーツ・山河浩、スポーツニッポン・高木翔平という3人の記者に、アーモンドアイ連覇の可能性とそれぞれの推し馬についてうかがった。

天皇賞・秋を制するために必要な資質とは?


 前回は天皇賞・秋が「荒れるレース」から「強い馬がきちんと勝つレース」に変貌してきた点について各記者に見解をうかがったが、今回聞いたのは「天皇賞・秋を勝つために求められる資質とは何か?」という点。これについては、高橋記者と高木記者は「高速馬場への適応力」を指摘する。高橋記者が、

「速い馬場、上がりの速い馬場に対応できるスピードと瞬発力を持っていること」

 と話せば、高木記者も、

「近年でいえば、高速馬場への適性。府中はとにかく時計が速くなるので、単純に速いラップを刻める能力がないと厳しい。それでいて、4角付近から長くいい脚を使えるロングスパート力。これは、アーモンドアイが持つトップクラスの能力。だが、今年は開催日を狙ったように雨が降り、時計も例年よりは落ち着いている。そのへんで他馬にも付け入る隙は出てくるのではないか」

 と、例年以上に時計のかかる馬場になった今年は、他陣営にもチャンスはあるとの見解。一方で、山河記者は少し異なった見方を示してくれた。

「86年以降の勝ち馬が獲得した他のJRA芝GIを距離別に見ると1600m=23勝(48戦)、2400m=15勝(60戦)。ジャパンCに参戦する外国馬が本当に強かった時代もあり、路線レベルに差がある点は確か。それでも、マイラーが幅を利かせていることを示すデータだ。アーモンドアイを含めウオッカ、ブエナビスタといった女傑級牝馬は“らしい”決め手とスピードに加えて底力も兼備しており、マイル・中距離の両ジャンルでトップに君臨した。その観点からノームコア、クロノジェネシス姉妹は、系譜に名を連ねる資格を有していそうだ。クロノジェネシスは、古馬になってからは中距離主体のローテも2-3歳時はハイレベルのマイル戦でも2→1→3着。潜在的な速力の面でも不安はない」
秋天記者座談会

宝塚記念や秋華賞を制したクロノジェネシスは中距離だけでなく、マイラーとしての資質も兼ね備えている


3人の記者に訊いた! ズバリ、アーモンドアイの勝率は?



 では、実際、各記者はどれぐらいの確率で、アーモンドアイが勝利すると見ているのか。これについては、穴党で知られる山河記者から意外な意見が。

「穴党という立場を捨て総合的、俯瞰的に考えると勝率は90%くらい、ほぼ確勝級に近いのでは。その理由は単純に相手関係。9着に崩れた有馬記念(4着フィエールマン、5着キセキ)を除けば先着を許したことがない。2着止まりの安田記念にしても、勝ったグランアレグリアは今秋のスプリンターズSで1着、4着だったノームコアが札幌記念1着だから、能力の減退があるとも考えられない。加えて、マイルはもちろん守備範囲だが、二千のほうがレースをしやすいことも確かだろう。綻びが生じるとすれば“枠順”か。過去12戦で、最も外枠は昨年安田記念の14番(16頭立て)。これまで大外枠を引いたことがない。コース改修後も外枠不利が定説であることに変わりはなく、他馬のチャンスは多少なりとも広がるはずだ」

 高橋記者も、ことアーモンドアイについては脱帽といった様子で、

「99%。負けるならアクシデントしかない。クロノジェネシスやフィエールマンがアーモンドアイよりも切れる脚を使えるなら話は別だが、現実はそうではない。その他の馬では勝負付けが済んでいる」

 と、やはり今回対戦するメンバーとは、すでに力関係が決しているとの見立てだ。3人の記者のなかで、もっとも付け入るスキがあると踏んでいるのが高木記者。

「可能性は60%。今年の馬場でも勝ち切るシーンは十分にあるが、昨年の天皇賞・秋やジャパンCのような得意の高速ラップを、さらに突き抜けるような圧倒的な勝ち方は難しいのではないかと思う。タフな馬場で浮上する馬がいれば、というところ。振り返れば、前走の安田記念(2着)もやや重。影響があったのかもしれない。とにかく晴れ女で、キャリアで重以下のコンディションの馬場を走ったことがなく、やや重も2回だけ。時計のかかる芝をこなせるかは大きなカギになる」
秋天記者座談会

GI3勝と実績では申し分ないフィエールマンだが、勝ったGIはいずれも長距離戦だけにスピードへの対応が課題(写真は19年天皇賞・春時)


アーモンドアイを破る可能性を秘めた“イチオシ馬”とは?



 最後に、各記者に今年の“注目馬・推し馬”を挙げてもらった。まずは高橋記者から。

「キセキが復活してきた。イメージよりは速い馬場に強い。ただ、ここ2戦のような後方待機だとどうか。あとはダノンキングリー。東京の高速馬場に強い。アーモンドアイの相手として馬券を買うなら、この2頭に魅力がある。普通に考えれば、相手筆頭はクロノジェネシスだろう。少し時計がかかれば、やはりこの馬が本線になる」

 続く高木記者も、やはりクロノジェネシスに食指が動いている様子。

「人気にはなると思うが、やはり前走・宝塚記念の勝ちっぷりはインパクトが大。父のバゴは道悪を3勝(G1・2勝を含む)。海外の道悪は日本とは次元の違うタフなコンディションになるので、その娘が道悪を得意とするのはわかりやすい。時計がかかる馬場になれば、かなり面白い存在。逆にパンパンの良馬場で時計も出るようになれば、アーモンドアイ以外ではダノンキングリーに注目している。7着に崩れた前走・安田記念はやや重。戸崎騎手は『とにかく良馬場で走らせたい』と話しており、高速府中への適性は高い。距離が延びて2000mで戦えるのも個人的には合いそうだなと思っている」

 山河記者は穴党らしく、とっておきの“隠し玉”をプッシュ。

「スカーレットカラーが面白い。エリザベス女王杯(通過順6→6→5)7着、有馬記念(同6→7→13)15着と長丁場では追走に苦労しない反面、失速ぶりも半端がない。鞍上が色気を持つことなく、かつ自然と後方で“死んだふり”ができる1800mの流れがベストのタイプといえよう。その意味で昨年のGII府中牝馬S(4番人気1着)は絶好の狙い目だった。今年はそのベスト条件をパスして、牡馬相手の当レースをあえてチョイス。2000mはこれまでGIII愛知杯10着、GIIIマーメイドS3着ともうひとつだが、前半5ハロン通過は62秒2、59秒8と流れも向かなかった。暴走タイプの逃げ馬は存在しないが、平均以上のペースとなれば追い込みが決まる可能性は増大する」

 今年の天皇賞・秋はアーモンドアイ中心で間違いなさそうだが、的中のカギは相手次第といったところ。2、3着馬次第によっては、思わぬ好配当にありつけるかもしれない。果たして、どのような結末になるのか。盾をかけた伝統の一戦のゲートは、明日15時40分に開く。
秋天記者座談会

昨年の毎日王冠では、3歳馬ながら古馬を一蹴。中距離適性を見せつけたダノンキングリー(写真は19年毎日王冠時、撮影:下野雄規)

高回収率をたたき出す馬券のプロたちは、どのような視点で重賞レースにアプローチをしているのか。ときに冷静に、ときに大胆に直球勝負で攻める予想家たちの熱き見解は必見。 関連サイト:ウマい馬券

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