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近年トレンドとなった「輸入繁殖牝馬」が上場される季節

  • 2020年11月25日(水) 12時00分

「SS系種牡馬」との組み合わせで日本重賞を席巻


 11月に入って欧米の競走馬市場は、繁殖牝馬が上場されるブリーディングストックセールの季節を迎えている。

 あたかも、これと歩調を合わせるかのように、11月に入ってからのJRAの芝の重賞は、「輸入繁殖牝馬にSS系種牡馬」という配合で生まれた産駒の活躍が顕著になっている。

 11月7日に東京で行われた2歳馬のGII京王杯2歳Sを制したのは、モントライゼ(牡2)。母ムーングロウは英国産馬で、G1エクリプスS(芝9F209y)など2つのG1を制したメディシアンの半妹という良血馬だ。16年のタタソールズ・ディセンバーセールにて3万2千ギニー(当時のレートで約485万円)で購買されて来日。日本で産んだ2番目の産駒が、父ダイワメジャーのモントライゼだ。

 GII京王杯2歳Sは2着馬ロードマックス(牡2、父ディープインパクト)も、母パーフェクトトリビュートが英国産馬。同馬は13年のタタソールズ・ディセンバーセールにて34万ギニー(当時のレートで約6153万円)で購買され、日本に導入されている。

 11月14日に阪神で行われた2歳馬のGIIデイリー杯2歳Sを制したのは、レッドベルオーブ(牡2、父ディープインパクト)。母レッドファンタジアは米国産馬で、G1スピンスターS(AW9F)勝ち馬インランジェリーの半妹という血統背景を持つ。11年のキーンランド9月1歳市場にて25万ドル(当時のレートで約1964万円)で購買されて、日本にやってきた。

 11月15日に阪神で行われた牝馬のGIエリザベス女王杯は、このパターンの配合馬が1〜3着を占めている。

 勝ったラッキーライラック(牝5、父オルフェーヴル)の母ライラックスアンドレースは米国産馬。ライラックスアンドレース自身が、キーンランドのG1アッシュランドS(AW8.5F)を制している活躍馬だった。日本で繁殖入りした同馬の3番仔がラッキーライラックである。

 2着馬サラキア(牝5、父ディープインパクト)の母サロミナは独国産馬。そして、サロミナ自身がG1独オークス(芝2200m)勝ち馬という活躍馬だった。日本で繁殖入りした同馬の2番仔がサラキア。そして、4番仔がサリオス(牡3)である。

 3着馬ラヴズオンリーユー(牝4)の母ラヴズオンリーミーは米国産馬。欧州最優秀2歳牝馬ランプルスティルトスキンの半妹という良血馬で、09年のキーンランド・ノヴェンバーにて90万ドル(当時のレートで約8189万円)で購買されて日本で繁殖入り。ご存知のように、同馬の3番仔がG1ドバイターフ(芝1800m)勝ち馬リアルスティールで、ラヴズオンリーユーは7番仔となる。

 11月22日に阪神で行われたGIマイルCSを制したのは、グランアレグリア(牝4、父ディープインパクト)。母タピッツフライは米国産馬で、タピッツフライ自身がG1ジャストアゲイムS(芝8F)など2つのG1を制している活躍馬だ。12年のファシグティプトン・ノヴェンバーにて185万ドル(当時のレートで約1億5074万円)で購入され、日本で繁殖入りした同馬の、実質的な初仔となるのがグランアレグリアだ。

 同競走の3着馬アドマイヤマーズ(牡4、父ダイワメジャー)の母ヴィアメディチは、愛国産馬。14年のアルカナ・ディセンバーにて48万ユーロ(当時のレートで約7197万円)で購入されて、日本に輸入。日本で産んだ2番目の産駒がアドマイヤマーズである。

 11月23日に東京で行われた2歳馬のGIII東京スポーツ杯2歳Sを制したのは、ダノンザキッド(牡2、父ジャスタウェイ)。母エピックラヴは愛国産馬で、タタソールズ・クレイヴン2歳セールにて7万2千ギニー(当時のレートで約1119万円)で購買されて仏国でデビュー。G3ヴァントー賞(芝1850m)1着、G1サンタラリ賞(芝2000m)2着などの成績を残した後、現役中に吉田勝己氏が購買。引退後は日本で繁殖入りしたエピックラヴの、3番仔となるのがダノンザキッドだ。

 同競走の2着馬タイトルホルダー(牡2)は、父がドゥラメンテだから直系のサイヤーラインはサンデーサイレンスではない。だが、ドゥラメンテの母の父はサンデーサイレンスである。同馬の母メーヴェは英国産馬で、タタソールズ・オクトーバー1歳セールにて3万ギニー(当時のレートで約462万円)で購買されて来日。日本で現役生活を送り5勝した後に繁殖入りした同馬の、2番仔となるのがタイトルホルダーである。

 このトレンドを引き継ぐとしたら、GIジャパンCは米国産の繁殖牝馬にディープインパクトの配合で生まれたコントレイル(牡3)が勝つことになるのだが…………。

 また、11月30日から英国のニューマーケットでタタソールズ・ディセンバーセールが、12月5日から仏国のドーヴィルでアルカナ・ディセンバーセールが行われるが、どのような戦績を残し、どのような血統背景を持つ馬が日本にやってくるのか、ファンの皆様にとっても注目の市場となりそうである。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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