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【ジャパンC予想】過去と現在のジャパンCは何が違う? 現代のジャパンCに適した馬の見分け方 /岡村信将

  • 2020年11月27日(金) 18時00分

速い上がりのレースに強いアーモンドアイ(c)netkeiba.com、撮影:下野雄規


 昨年、創設39年目にしてついに外国馬が出走しなくなってしまったジャパンC。その理由は日本の馬場が速すぎるからとも言われているのですが、たしかにそれは間違いではないと思います。過去のジャパンCと比べて、特にここ15年ほどは極端に上がりの速いレースになっているからです。

■ジャパンC、最先着の外国馬と 勝ち馬の上がり3ハロンタイム
1990年ベタールースンアップ  1着 34秒8
1991年ゴールデンフェザント  1着 34秒2
1992年ナチュラリズム     2着 36秒3
1993年コタシャーン      2着 36秒1
1994年パラダイスクリーク   2着 36秒2
1995年ランド         1着 34秒8
1996年シングスピール     1着 35秒8
1997年ピルサドスキー     1着 34秒6
-------------------------------------↓互角の時代
1998年チーフベアハート    4着 35秒0
1999年インディジェナス    2着 35秒9
2000年ファンタスティックライト3着 35秒2
2001年ゴーラン        6着 34秒9
2002年ファルブラヴ      1着 35秒6
2003年タイガーテイル     6着 37秒4
2004年ポリシーメイカー    4着 34秒3
2005年アルカセット      1着 34秒8
--------------------------------------↓日本馬の時代
2006年ウィジャボード     3着 33秒5
2007年ペイパルブル      7着 33秒9
2008年パープルムーン     9着 34秒0
2009年コンデュイット     4着 34秒8
2010年シリュスデゼーグル   9着 34秒2
2011年デインドリーム     6着 33秒9
2012年レッドカドー      8着 32秒8
2013年ドゥーナデン      5着 33秒9
2014年アイヴァンホウ     6着 35秒0
2015年イラプト        6着 33秒9
2016年イキートス       7着 34秒7
2017年アイダホ        5着 34秒7
2018年サンダリングブルー   10着34秒1
2019年外国馬出走なし       36秒5
※1991年勝ちの外国馬ゴールデンフェザント、本当にこの数字なの?(笑)

 こうして一覧にしてみると一目瞭然なのではないでしょうか。初期ジャパンCは勝ち馬の上がり3ハロン平均が35秒4、1998年〜2005年の過渡期も平均は35秒4なのですが、不良馬場施行で2分28秒以上を要した2003年を除くと35秒1。そして2006年以降は明らかに それまでとは違う平均34秒3。外国馬が勝てるジャパンCは、例外はあるが今も昔も“上がり3ハロン34秒8”が限界。勝ち馬が33秒台で上がってくるような流れになると、手も足も出なくなっています。

 このように、近年は『極端に上がりの速いレース』となっているジャパンC。傾向の変わってきた2006年以降の勝ち馬を調べてみると、そのほとんどが『上がりの速いレース』を得意とした馬であったことが確認できます。

■ジャパンC勝ち馬、レース前1〜3着時の上がり3ハロン平均
2006年 ディープインパクト 33秒9
2007年 アドマイヤムーン  35秒0
2008年 スクリーンヒーロー 34秒9
2009年 ウオッカ      33秒8
2010年 ローズキングダム  34秒0
2011年 ブエナビスタ    34秒2
2012年 ジェンティルドンナ 34秒1
2013年 ジェンティルドンナ 34秒4
2014年 エピファネイア   34秒4
2015年 ショウナンパンドラ 34秒1
2016年 キタサンブラック  34秒8
2017年 シュヴァルグラン  34秒5
2018年 アーモンドアイ   33秒6
2019年 スワーヴリチャード 34秒3
※該当年ジャパンC前の成績で算出
※芝のレースのみ集計
※不良馬場などによるブレを緩和するため、最速値と最遅値を除いての平均

 ということで、今年もジャパンCに出走を予定している馬の“1〜3着時の上がり3ハロン平均”を算出してみましょう。この数値が速ければ速いほど良いというわけではないのですが、この数値を起点として考えるのが 現代ジャパンC予想の正攻法であると考えられます。

■2020年ジャパンC出走予定馬、1〜3着時の上がり3ハロン平均
アーモンドアイ   33秒6
ウェイトゥパリス  外国馬
カレンブーケドール 34秒9
キセキ       34秒8
クレッシェンドラヴ 35秒4
グローリーヴェイズ 34秒6
コントレイル    34秒6
サートゥルナーリア 34秒4
デアリングタクト  34秒9
トーラスジェミニ  35秒5
パフォーマプロミス 34秒8
マカヒキ      34秒0
ミッキースワロー  34秒7
ユーキャンスマイル 34秒6
ヨシオ       芝好走歴なし
ラヴズオンリーユー 34秒2
ワールドプレミア  35秒1
※芝のレースのみ集計
※不良馬場などによるブレを緩和するため、最速値と最遅値を除いての平均

 アーモンドアイはさすがの33秒6を記録しているのですが、驚いたことに コントレイルは かなり微妙な34秒6、デアリングタクトに至っては絶望的とも言える34秒9という数値が出てしまいました。

 しかし今年の場合はちょっと特殊でして、この時点で2頭を軽視とするのは早計というものでしょう。コントレイルとデアリングタクトは歴史に名を成す無敗の三冠馬。つまりは1度も負けたことのない馬であり、この数値が「上がりを要すレースでも負けていない」という証拠にはなっても「上がりの速いレースが苦手」という証拠にはならないからです。

 個人的には平均34秒4のサートゥルナーリア、それ以上に34秒2のラヴズオンリーユーの出走回避が残念でならないところですが、ウマい馬券では、ここから更に踏み込んでジャパンCを解析していきたいと思います。印ではなく『着眼点の提案』と『面倒な集計の代行』を職責と掲げる、岡村信将の最終結論に ぜひご注目ください。



■プロフィール
岡村信将(おかむらのぶゆき)
 山口県出身、フリーランス競馬ライター。関東サンケイスポーツに1997年から週末予想を連載中。自身も1994年以降ほぼすべての重賞予想をネット上に掲載している。1995年、サンデーサイレンス産駒の活躍を受け、スローペースからの瞬発力という概念を提唱。そこからラップタイムの解析を開始し、 『ラップギア』 と 『瞬発指数』 を構築し、発表。2008年、単行本 『タイム理論の新革命・ラップギア』 の発刊に至る。能力と適性の数値化、できるだけ分かりやすい形での表現を現在も模索している。

 1995年以降、ラップタイムの増減に着目。1998年、それを基準とした指数を作成し(瞬発指数)、さらにラップタイムから適性を判断(ラップギア)、過去概念を一蹴する形式の競馬理論に発展した。 『ラップギア』 は全体時計を一切無視し、誰にも注目されなかった上がり3ハロンの“ラップの増減”のみに注目。▼7や△2などの簡単な記号を用い、すべての馬とコースを「瞬発型」「平坦型」「消耗型」の3タイプに分類することから始まる。瞬発型のコースでは瞬発型の馬が有利であり、平坦型のコースでは平坦型に有利な流れとなりやすい。シンプルかつ有用な馬券術である。

高回収率をたたき出す馬券のプロたちは、どのような視点で重賞レースにアプローチをしているのか。ときに冷静に、ときに大胆に直球勝負で攻める予想家たちの熱き見解は必見。 関連サイト:ウマい馬券

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