ディープ産駒における杓子定規な誤解とは…

　今年のジャパンCの馬場状態はどの年に近いか?

　ドボドボ馬場で5番より内を引いた馬が1-3着になった昨年の馬場とも違えば、超高速時計が出た一昨年とも趣が明らかに異なります。2015、16、17年のイメージに近い馬場にはなるでしょう(もちろん競馬ですからまったく同じ馬場、レースが存在しないのは百も承知ですし、今年は異次元の歴史的メンバーが出走することに敬意を表します)

　2015年のジャパンCの3着以内馬で人気以上に走ったのは、1着のショウナンパンドラ(4人気)、2着のラストインパクトが(7人気)。いずれも父はディープインパクト。しかし、春のクラシックでは連対(出走)もしなかった馬。

　当コラムでも事あるごとに書いていますように、ディープ産駒のすべてが軽い馬場の直線スピードが得意。早熟型(3歳春がピーク)ではありません。

「ディープ産駒が3歳春に直線スピード勝負に強い」と杓子定規な誤解をされるのは、母系にアメリカの速い血を持つ馬がほとんど。逆に古馬になって伸びる血や、欧州のスタミナ指向が強い血は3歳前半のスピード勝負には弱く、古馬になってスタミナ勝負で強さを発揮します。まさにショウナンパンドラ、ラストインパクトもこのタイプに属します。

　ラストインパクトは近親がナリタブライアン。今よりもタフな馬場で行われていたJRAの芝競馬の三冠馬。タフな牝系のディープ産駒。ショウナンパンドラは母系がステイゴールド、サッカーボーイの近親。ノーザンテーストを持つディープインパクト産駒。タフな凱旋門賞や天皇賞春に強い牝系で、古馬になって伸びるノーザンテーストを持つ馬。

　ディープ以外も古馬のステイヤー指向で開花する血統馬ばかり。2016年6人気3着、2017年1着(5人気)のシュヴァルグランもクラシックレースは不出走。古馬で伸びた馬。天皇賞春でも複数回馬券になり、GIレースでの3着以内実績は2400m以上のステイヤータイプ。2016年の勝ち馬キタサンブラックも3000m以上のGIを複数勝った馬。

　2016年5人気2着のサウンズオブアースも2500m以上のGIで複数連対した馬。父ネオユニヴァースはサンデー系種牡馬の中では重厚なイギリス型。タフなレースを好む種牡馬。

　そして、今の馬場もディープインパクトと欧州のタフな血統で父と母が構成されている馬が好成績を収めています(詳しいデータはスマート出馬表にて東京競馬場の3着以内馬の血統を参照ください)。

　ワールドプレミアは父がディープインパクト。母父は欧州血統でドイツの名血アカテナンゴ。同種牡馬の産駒にジャパンC勝ち馬のランド。当時の走破時計は24秒台。ディープ産駒の中でも古馬になって伸びるステイヤータイプ。実際、三冠レースの最終戦、菊花賞でクラシックレース初出走で優勝した戦歴も当レース向き。

　キセキは母父がディープインパクト。父は欧州型のルーラーシップ。今の馬場でも好調な欧州型とディープの組み合わせ。トニービンの血を持つ馬は、一度ジャパンCで馬券になると、もう一度馬券になる馬が多いです。

　スペシャリスト血統であることに加え、スタミナ血統は経験が強みになります。スワーヴリチャード、シュヴァルグラン、トーセンジョーダンはいずれも複数回ジャパンCで馬券になった馬。いずれもトニービンを持つ馬。

　グローリーヴェイズは父がディープインパクト。3代母はメジロラモーヌ。昭和の牝馬三冠馬。当時の牝馬三冠は3レースのうち2レースが芝2400m。走破タイムは2分29秒台。母母父はメジロライアン。2分13秒を要した宝塚記念勝ち馬。産駒に天皇賞春勝ち馬メジロブライト。2分27秒を要したタフな馬場のオークスを勝ったメジロドーベル。古馬になって伸びるノーザンテーストの血を持つ馬。

　タフなステイヤー血統が台頭する馬場、古馬混合レースで才能を発揮する血統。春のクラシックよりもジャパンCで良さが出る血統で、ディープ+スタミナ血統が走りやすい今開催の馬場向きの血統。

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