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なぜアーモンドアイが歴代1位でないのか? 大記録達成で表面化した不都合な真実

  • 2020年11月30日(月) 18時01分
教えてノモケン

▲ジャパンCで有終の美を飾った最強馬アーモンドアイが歴代3位タイ? (撮影:下野雄規)


 11月29日のジャパンC優勝を花道に、アーモンドアイがターフを去った。2歳下の牡牝の無敗の三冠馬であるコントレイル、デアリングタクトとの歴史的な対決を制し、GI9勝という競馬史に残る金字塔を打ち立てた。

 ジャパンC前の天皇賞・秋で、アーモンドアイは既に国内外GI8勝の新記録を達成。中央の7勝に昨年3月にドバイターフ(アラブ首長国連邦=UAE、メイダン)を加えて8勝とし、シンボリルドルフ、テイエムオペラオー、ディープインパクト、ウオッカ、ジェンティルドンナ(UAE1勝)、キタサンブラックの歴代級名馬が跳ね返されてきた壁を破った。

 だが、天皇賞・秋の結果を報じたメディアの多くが「芝GI8勝」という表現をしていた。なぜ「芝」かを突き詰めると、国内競馬界がダート路線、露骨に言えば地方競馬の甘いグレード管理を追認してきた現状が浮かび上がる。

 外国馬に門戸を閉ざし、レースの質の面でも基準を満たしていないダート「グレード」(中央交流重賞)競走を「Jpn」と称し、事実上、GIとして扱ってきたツケが回ってきた。地方施行のJpnIをGIと混ぜてカウントすると、アーモンドアイはジャパンCの勝ち星を加えても歴代3位タイとなる。大記録達成で、グレード管理を巡る不都合な真実が表面化した。

歴代最多はGI 11勝?


 GI、JpnI合計タイトル数の歴代最多はコパノリッキーの11勝である。4、5歳時にフェブラリーSを連覇したほか、かしわ記念を3勝。JBCクラシックと南部杯の連覇もあり、6歳時の帝王賞と引退レースの東京大賞典も勝った(17年=7歳時)。取ったタイトルのうち、国際格付けの認められる正規GIは、フェブラリーSと東京大賞典(11年からGI認定)の計3勝だ。

 次いでホッコータルマエが10勝している。4歳時の13年のかしわ記念が初タイトルで、ここから翌14年の川崎記念にかけて一気に5勝。さらに同年暮れからチャンピオンズC、東京大賞典、川崎記念と3連勝。ピークはこの時期で、同年の帝王賞優勝後はやや勢いが落ちたが、16年の川崎記念でほぼ唯一のライバルだったサウンドトゥルーを振り切り、10勝目をあげた。

 3位は9勝のヴァーミリアン。2歳時の04年に芝のGIIIを勝ち、3歳春にはクラシックに駒を進めたが、秋にダート路線に転向。本格化は5歳時と遅かったが、同年に川崎記念で初タイトル。下半期から翌年にかけてJBCクラシック、ジャパンCダート(当時)、東京大賞典、フェブラリーSと4連勝。7歳時にも帝王賞とJBCクラシックを勝ち、7〜8歳時にかけてもJBCクラシック(3連覇)と川崎記念でタイトル数を伸ばした。

 ホッコータルマエとヴァーミリアンは、正規GIがそれぞれ3勝と2勝。3頭の得たタイトル数は計30だが、正規GIは3頭で8勝となる。3頭の共通点は、ピーク時に一気にタイトルを重ねた後、加齢で力が落ちてからも、顔ぶれが手薄なレースで勝ったこと。実際、ホッコータルマエとコパノリッキーは7歳で、ヴァーミリアンは8歳時にタイトルを取った。これは構造的問題の現れである。

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1964年1月19日、東京都出身。87年4月、毎日新聞に入社。長野支局を経て、91年から東京本社運動部に移り、競馬のほか一般スポーツ、プロ野球、サッカーなどを担当。96年から日本経済新聞東京本社運動部に移り、関東の競馬担当記者として現在に至る。ラジオNIKKEIの中央競馬実況中継(土曜日)解説。著書に「競馬よ」(日本経済新聞出版)。

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