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【阪神JF】白毛一族メイケイエール! 武豊騎手×武英智調教師で挑む勝負の一戦

  • 2020年12月06日(日) 18時02分
GIドキュメント

▲シラユキヒメ、ユキチャンの血をひくメイケイエール、管理する武英智調教師に直撃 (撮影:大恵陽子)


重賞2勝を挙げる無敗のメイケイエールが武豊騎手とのコンビでGI・阪神ジュベナイルフィリーズに挑みます。管理するのは開業3年目の武英智調教師。名前から推察できる通り武豊騎手の親戚にあたり、「小学生の頃の日課はユタカさんのサインをマネすること」というほど尊敬の眼差しを送ります。

メイケイエールはレースでは序盤で行きたがる面を見せますが、悪気があるわけではなく、スピードがありすぎるがゆえだとか。毎晩、管理馬のレース映像を見ながら「気づいたら寝落ちしている」という武調教師に伺いました。

(取材・構成:大恵陽子)

「一番速く走ったらいいんでしょ?」


――3連勝中のメイケイエール。新馬戦は馬なりで5馬身差の圧勝と、インパクトのある勝ち方でした。

武英智調教師(以下、武師) そのあとに重賞(小倉2歳S)を勝ちましたけど、私の中では新馬戦が一番衝撃的でした。2歳ですから、動きすぎて脚元がどうかという不安もあって、新馬戦の前は全く仕上げにかかっていなかったんです。

 2週前追い切りの時計がちょっと速かったので、当週は小倉に滞在して2Fしか15-15秒にしていなくて、実質的に追い切りは2週前以降やっていません。勝てるとは思っていましたけど、それでも本数が足りないなと不安もありながらレースを見たら、追う動作一つなく楽に後ろを離していきましたから、「これはバケモンかもなぁ」思いました。

――新馬戦を楽勝後、中1週で再び小倉に輸送して小倉2歳Sで重賞初制覇を果たしました。

武師 体が一度、14kgくらい減って、どうしようかと考えていました。担当者からGOサインが出なければやめようと思っていたんですけど、少しずつ体が戻ってきて、担当者も「これならいける」と言ったので出走を決めました。そしたら輸送しても体が増えて、レースではマイナス2kgで出走できました。

――2歳の牝馬ですごいですね。放牧を挟んで11月にはファンタジーSも制覇しました。

武師 放牧から帰ってきて、獣医さんからも「心臓がまだ少し物足りなくて、1回叩いてからですね」と言われていました。ギリギリ間に合ったかな、という感じで、あとは「落ち着いて走れたら結果は出るだろう」と思っていました。落ち着けてもいなかったですけど、2歳の日本レコードであのパフォーマンスでしたからね。

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▲2歳芝1400mのレコードタイムを更新したファンタジーS (C)netkeiba.com


――新馬も重賞の2戦も、いずれもしっかり仕上げたわけでなく、しかも道中は行きたがる面を見せながらもきっちり勝つあたり、強さを感じます。

武師 気が悪くて掛かっているというよりは、スピードがありすぎる感じです。あの子自身はムキになって行くつもりではないと思います。「いっぱい馬がいるし、とりあえず一番速く走ったらいいんでしょ?」という感じやと思うんですよね。あの子は何も悪気がないんです。

――他の馬より速く走りたいという気持ちは競走馬にとって一番いい面でもあるのでしょうね。普段の馬房や調教ではどんな馬なんですか?

武師 馬房の中や洗い場では大人しくておっとりした子です。調教の普段のキャンターは前走後からすごく落ち着いて走っています。

 ただ、今までの経験からすると、調教で折り合うようになったからと言って競馬に行ってスッと折り合うかと言ったら、そういうタイプの馬では恐らくないと思います。2歳の馬が3回しか走っていないので、長い競走馬生活を考えれば、ちょっとずつ覚えていってくれたら、というのが私の気持ちです。

――無理に抑え込みすぎるといい面をなくす可能性もありそうで、バランスが難しそうです。

武師 みなさんが思っている以上にポテンシャルが高いと思っていて、いま枠外にはみ出ている能力を壊さないように、と思っています。あと、馬にはプレッシャーをかけないことを心がけています。オーナーにも「僕にはいくらでもプレッシャーをかけてください」と言っています。

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▲高い能力を感じるがゆえに、より大切に育てているという (撮影:大恵陽子)


白毛一族「いい方に出たらすごい馬になるかも」


――昨年のセレクトセール1歳での取引馬ですが、武調教師自らが選ばれたんですか?

武師 そうなんです。オーナーの要望は牡馬だったんですけど、妥協するのは嫌で、予算内で欲しいと思える子がこの馬で、「どうしてもいいと思うんです」と何回かお願いして落札していただきました。「牝馬ですみません。本当に品のある馬で、顔つきが走りそうですから」とお伝えしました。

――母はシロインジャー、祖母はユキチャンと白毛一族ですね。

武師 この血統はどちらかと言ったら重い血統だと思っているのですが、そのわりには重さが全くありませんでした。線も細くて、脚元もキレイだし、これはいい方に出たらすごい馬になるかなと思ってお願いしました。

――セリ当時、開業2年目だった武調教師にそこまで任せてくださるなんて、ありがたいですね。

武師 助手時代に木原先生のところで4年間お世話になった時にメイケイペガスターって馬がいました。掛かり癖があってすごく難しい馬で、私がずっと乗っていたんですが、その時からオーナーの名古屋競馬さんとお話をさせていただく機会が多かったんです。

 開業にあたって「好きな馬を選んでいいよ」と任せていただいて、メイケイエールが2頭目の馬だったんです。木原先生にいただいたご縁なので、レースが終わったら必ず木原先生に「ありがとうございました」と連絡をしています。

親戚だけども、武豊騎手は“憧れのスーパースター”


――次走のGI・阪神JFでは引き続き武豊騎手の予定だそうですね。直近1年では武英智厩舎は武豊騎手での勝利が一番多く、6勝です。

武師 去年の秋からユタカさんでポンポンと勝って、勝率も高いと思います。ユタカさんが空いているかやオーナーの要望もありますし、チャンスだなと思う馬でこそ依頼したいです。当たりが柔らかいので、敏感な馬をメインにお願いしようかなと思っています。

――武豊騎手とは「はとこ(又従弟)」で、子供の頃は部屋に武豊騎手のポスターを貼ってらしたとか?

武師 一般的にははとこって遠い親戚ですけど、競馬サークル内なので近い存在ではあったと思います。それでも、憧れが強かったです。

 スーパースターで、子供の頃はどの雑誌や新聞を見ても「武豊」しか書いていない時代でしたから、尊敬するジョッキーに名前を挙げるのもちょっと失礼な気がしていました。サインも真似してね(笑)。勉強以外は、競馬四季報とダビスタとユタカさんのサインを書くことが毎日の日課でした。

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▲武英智調教師が子供のころから憧れてきた武豊騎手 (C)netkeiba.com


――さて、阪神JFが近づいてきました。平地GIへの出走は2度目になりますが、重賞馬で出走するというのはワクワクしますね。

武師 開業してまだ3年目で、こういう経験をさせていただけるのは本当に恵まれているなと思います。なんとか結果を出さないとという反面、「とりあえず無事で」とか「1600mの外回りか」とか、毎日考えています。寝る前はここ3戦のレースを見て、「明日の朝どういう調教をしようかなぁ」って考えながら、気づいたら寝ている毎日です。

 いま、メイケイエールの状態はいいです。今まで1回も納得した仕上げでは競馬に行けていなくて、いかに無事に送り出すかしかやっていない中での3連勝は本当に馬の能力です。GIでも応援よろしくお願いします。

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