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香港国際競走のオープニングカード 香港ヴァーズ展望

  • 2020年12月09日(水) 12時00分

日本馬の参戦はないが興味深い一戦


 香港国際競走の開催が13日(日曜日)に迫っている。

 日本で馬券発売のあるスプリント、マイル、カップの3競走については、各メディアで盛んに展望されている一方、日本調教馬不在の香港ヴァーズは馬券発売がなく、メディアでの紹介もごく限られている。

 そこでこのコラムでは、香港国際競走のオープニングカードとなるG1香港ヴァーズ(芝2400m)を展望したい。

 路線的にジャパンCと有馬記念のはざまにあるこのレースに、今年は日本馬の参戦がなく、7頭立てという少頭数となった。だが、欧州から2頭の参戦があるのに加え、地元にこの路線の国際G1・3勝馬がいて、なかなかに興味深い一戦となっている。

 レイティング首位は、愛国のエイダン・オブラエンが送り込むモーグル(牡3、父ガリレオ)だ。

 G1英オークス(芝12F6y)2着、G1独オークス(芝2200m)2着などの成績を残した馬シークレットジェスチャーや、G1インターナショナルS(芝10F56y)など2つのG1を制したジャパンらの半弟で、英国ニューマーケットのタタソールズ10月1歳市場にて350万ギニー、日本円にして約5億円という高値で購買された超エリートがモーグルだ。

 デビュー3戦目にG2チャンピオンズジュベナイルS(芝8F)を制し、ダービー候補と目されたが、コロナ禍で芝平地シーズンの開幕が例年より2か月以上遅れた今季、前半は調子が上がらず、目標としていたG1英ダービーは6着に敗退した。その後、グッドウッドのG3ゴードンS(芝12F)を制し2度目の重賞制覇を果たすも、続くヨークのG2グレートヴォルティジュールS(芝11F188y)では1番人気を裏切り3着に敗退するなど、なかなか成績が安定しなかった。

 素質馬が遂に期待に添うパフォーマンスを見せたのが、例年の7月14日から今年はアーク・トライアル・デイに移設されたG1パリ大賞(芝2400m)で、鋭い末脚を繰り出して後続に2.1/2馬身差をつける快勝。G1初制覇を達成するとともに、レイティング121を獲得している。

 厩舎で使用していた飼料に禁止薬物が混在していたことが発覚し、凱旋門賞は直前に回避することになったが、パリ大賞で2.1/2馬身差の2着に退けたインスウープが、凱旋門賞でクビ差の2着に入ったことから、出走していれば好勝負をしたはず、という机上の計算は成り立つ。前走のBCターフは、1周7.5F(=約1500m)というキーンランドの小回りコースをこなせずに5着に敗れているが、1周1899mあるシャティンは、本領を発揮出来る舞台であるはずだ。

 モーグルから1ポンド下のレイティング120を持つのが、地元香港の期待馬エグザルタント(セン6、父テオフィロ)である。

 18年のこのレースを含めて5つのG1を手中にしており、19/20年シーズンには香港年度代表馬の栄誉に輝いた実力馬だ。今季初戦のG3ササレディースパース(芝1800m)が勝ち馬フローレから1.1/4馬身差の2着、前走G2ジョッキークラブC(芝2000m)が勝ち馬フローレから3/4馬身差の2着だったが、ササレディースパースでは11ポンド(約5キロ)、ジョッキークラブCでは5ポンド(約2キロ)、フローレより重い斤量を背負っており、同斤ならいずれも負けていなかったはずである。2400mはここまで6戦4勝、2着1回、3着1回と、最も得意としている距離である。

 おそらくは、昨シーズン終盤にG3クイーンマザーメモリアルカップ(芝2400m)を逃げ切っているシェファーノ(セン6、父シルヴァーノ)がハナを切ることになろうが、その直後で折り合い、直線抜け出す競馬をすることになるだろう。

 ブックメーカーのオッズを見ると、エグザルタントが1.67倍〜1.8倍の1番人気に推され、これに続く2番人気がオッズ2.65倍から3倍のモーグルで、この2頭による一騎打ちムードとなっている。

 3月の香港ダービー(芝2000m)で、いまや香港最強の呼び声も飛ぶゴールデンシックスティのクビ差2着に健闘した実績のあるプラヤデルプエンテ(セン4、父エルザーム)、香港重賞初挑戦だったG2ジョッキークラブCで、2着エグザルタントから2馬身差の3着に入ったコロンバスカウンティ(セン5、父レッドウッド)、仏国を拠点に走り伊国のG2イタリア共和国大統領賞(芝1800m)を制している他、10を超える重賞入着経験のあるロイヤルジュリアス(牡7、父ロイヤルアプローズ)らが入着候補となっている。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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