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【朝日杯FS】鞍上の好判断が光ったレコードでの戴冠

  • 2020年12月21日(月) 18時00分

今後のマイル路線への展望が広がった


 2014年に阪神に移って以降、猛ペースで展開することは少なかったが、今年は、昨年のハイペース「33秒8→45秒4→57秒2→」を上回る高速の序盤となった。1ハロン過ぎから先頭に立ったモントライゼ(父ダイワメジャー)の飛ばした流れは、猛ラップの連続で「33秒7→45秒2→56秒9→」。

 これは行く気になったモントライゼをそのまま行かせた数字で、レース全体は超ハイペースではないが、好位3番手から早めに抜け出したグレナディアガーズ(父Frankelフランケル)の前後半バランスは、推定「46秒4-(1000m通過57秒8)-45秒9」=1分32秒3(上がり34秒5)となった。伏兵の作った速いペースを味方に積極的にスパートした川田騎手の好判断が、コースレコード(もちろんレースレコード)更新の要因となった。

 実際、2着に突っ込んだステラヴェローチェ(父バゴ)の上がりは、勝ち馬のそれを1秒0も上回る「33秒5」であり、着差は4分の3馬身(0秒1)差だけ。スパートが遅かったら1着、2着馬の差はもっときわどいものになったことだろう。

 勝ったグレナディアガーズの母は、CAN産のウェイヴェルアベニュー。米BCフィリー&メアスプリントG1(ダート7F)を1着、2着など北米20戦7勝。Gレースの快走はすべてダート7F以下。母の父Harlingtonハーリントンは、Unbridledアンブライドルド直仔。長く北米(USA、CAN)産の続くファミリーは非常にスピード色の濃い牝系と思える。

重賞レース回顧

7番人気のグレナディアガーズがレコードV


 英国でCracksmanクラックスマン(G1・4勝)などを送るフランケル産駒は、日本ではモズアスコット(母の父ヘネシー)、ソウルスターリング、そしてグレナディアガーズ…を送った。ちょっと当たり外れが多すぎる気がするが、母方がアメリカ型のスピードタイプの方が日本に合うのかもしれない。陣営は今後もマイル路線を視野に入れている。

 1分32秒4で2着に突っ込んだステラヴェローチェは、500キロ級でもシャープに映る体型と、切れのいいフットワークから良馬場の方が合うと判断されて2番人気。前回のサウジアラビアRCの自身の勝ち時計1分39秒6を、実に7秒2も一転してみせた。後方に近い位置のイン追走から、直線は狙った外にスペースがないとみると、再びインへ。そこからまた馬群を縫うように伸びて上がり最速タイの33秒5は光った。

 父バゴ(19歳。その父Nashwan)は、決して配合牝馬に恵まれているともいえず、種付け頭数は最少21頭から最大153頭まで、年度や供用地によって激変してきたが、2010年の菊花賞馬ビッグウィークのあと、突然、2020年宝塚記念などのクロノジェネシスを送って、今度は現2歳のステラヴェローチェ。本当はすばらしい種牡馬なのだろう。

 また、まだ歴史の浅いサウジアラビアRCの勝ち馬は、ここ4年の勝ち馬が「ダノンプレミアム、グランアレグリア、サリオス、ステラヴェローチェ」。2着馬にはダンビュライト、ステルヴィオもいる。2歳10月の出世レースの代表格になってきた。

 1番人気のレッドベルオーブ(父ディープインパクト)は、3着にとどまってしまったが、ビシッと仕上げてプラス8キロの476キロはこれまでで1番良く見えた。このハイペースを中団で追走しながら、途中まで口を割って行きたがる素振りを見せるなど、気が良すぎるのが死角だが、明らかに道中のロス(ムダ)がありながら、1分32秒7(上がり34秒2)の少差3着なら評価は下がらない。ノドの不安が解消されず3戦2勝のまま引退した全兄レッドベルジュール(来春から種牡馬入り予定)以上の活躍を期待したい。

 3番人気のホウオウアマゾン(父キングカメハメハ)は、毛色もあるだろうが、今回はなんとなく体の線がはっきりしなかった印象がある。さすがに「3コーナーを過ぎて、手応えが怪しくなった(松山騎手)」という力関係ではないはずで、来季に向けて立て直したい。これから先の戦いは長い。

 4着バスラットレオン(父キズナ)は、4戦目の今回が初の1600m。「58秒0-34秒8」=1分32秒8なので、マイルの速い流れにも十分対応できたが、いきなりのハイペース追走はこの高速決着レースだけに不利だった。

 伏兵5番人気のドゥラモンド(父ドゥラメンテ)、6番人気のショックアクション(父Gleneaglesグレンイーグルズ)は、時計勝負に対する適性もあるだろうが、この2歳GI、近年はローテーションや、ステップレースなど問わない時代だが、3カ月以上の休養明けになった馬はめったに好走できない(最近10年では3着以内馬0頭)という厳しさが当てはまってしまった。一気に相手の強化する素質勝負。それでも1-2番人気に支持されるくらいの圧倒的なスケールがないと苦しいのだろう。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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