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【有馬記念】記録尽くめの2020年の競馬を象徴した会心の勝利

  • 2020年12月28日(月) 18時00分

今年のJRA賞の行方は一段と難しくなった


 新記録、快記録の続出した2020年を、総括しつつ象徴したのが牝馬クロノジェネシス(父バゴ)のグランプリ制覇だった。2着も牝馬サラキア(父ディープインパクト)。

 牝馬がワンツーを決めたのは65年の歴史のなかで初めてのこと。これで2020年の牡牝混合GIでの勝利は、ウオッカ、ダイワスカーレットなどが大活躍した2008年の「5勝」を大きく更新し、実に年間「9勝」。うち、高松宮記念、大阪杯、安田記念、有馬記念の4つのGIが「牝馬=牝馬」だった。

 4歳クロノジェネシスは牡牝混合GIを「大阪杯2着、宝塚記念1着、天皇賞(秋)3着、有馬記念1着」となり、GII京都記念を含め年間5戦【3-1-1-0】。

 5歳アーモンドアイは牝馬同士のヴィクトリアマイル1着のほか、「安田記念2着、天皇賞(秋)1着、ジャパンC1着」で、年間4戦【3-1-0-0】。

 さらに4歳グランアレグリアは混合GIだけを4戦「高松宮記念2着、安田記念1着、スプリンターズS1着、マイルCS1着」して、年間【3-1-0-0】。

 みんな「最優秀4歳以上牝馬」のタイトルを獲得して不思議ないすごい成績。

 ふつうの年なら文句なしに年度代表馬になることが多い無敗の3歳三冠牡馬コントレイルは年間【4-1-0-0】であり、同じく無敗の牝馬三冠デアリングタクトは年間【4-0-1-0】。

 最優秀4歳以上牝馬も、「年度代表馬」の座も大きく票が割れるのではないか、とささやかれることになった。見解、投票はかなり分かれることが予想される。

 早くから「今年のJRA賞の行方は難しい」としていた有吉正徳さん(朝日新聞)によると、かつて、1963年の年度代表馬の選考は大いにもめ、決戦投票に持ち込まれたがそれでも決着がつかず(現在とはシステムが異なる)、3歳牡馬(現)で年間【9-2-0-1】のメイズイと、年間【6-3-2-1】だった4歳リユウフオーレルの2頭が年度代表馬のタイトルを獲得した記録が紹介されている。部門別では1951年の最優秀2歳牝馬(現)、1961年の最優秀3歳牝馬(現)…など、2頭の同時受賞記録が数例ある。

 年度代表馬となるには、部門賞が必要。今年、3歳馬の部門賞は確定的だが、古馬牝馬は、まず最優秀4歳以上牝馬とならなければいけない。最初から票が割れるだろう。

 キセキ(父ルーラーシップ)が、父の引退レースの有馬記念と同じように出遅れて、途中でも動かなかったため、バビット(父ナカヤマフェスタ)の先導したレース全体の流れは、前後半の1200m「1分15秒1-(6秒4)-1分13秒5」=2分35秒0。

 土曜12レースの3勝クラス(5着)、日曜8レースの2勝クラス(1着)で今週の中山芝2500mに2回も騎乗していた北村友一騎手は、クロノジェネシスに合うかなりタフなコンディションであるのを確認、道中のスタミナロスを避けること。差す形になるなら内に入らないことを決めていたのだろう。最初から自信満々。前方のフィエールマン(父ディープインパクト)が徐々に進出したのを見ながら、勝負どころの3コーナーすぎまで動かなかった。

 描いた通りにレースを進めて、それでも最後の1ハロンは12秒6だった。クロノジェネシスを見ながら直線勝負に賭けた松山弘平騎手のサラキア(父ディープインパクト)が首差まで猛追している。馬場を読んで早めに勝ちに出なかった騎乗作戦の勝利でもあっただろう。

 デビュー以来最高の馬体重474キロ。オークス(432キロ)の当時は非力にも映った馬体がシャープでありながら、たくましく成長していた。昨年のリスグラシューに続き、2つのグランプリ「宝塚記念、有馬記念」制覇は、斉藤崇史調教師を中心とした陣営の総力の勝利であるのはもちろんだが、一度も乗り替わっていないコンビのプラスαでもあった。

 2番人気のフィエールマンは、緩すぎる流れを読んで早め早めの進出。結果、差されたからベストの策ではなかったことになるが、それは結果論で、このペースだけに当然の作戦ともいえる。ただ、以前はレース終盤に苦しい競り合いになると舌越しするクセがあったが、今回はレース中盤から早くも舌を出した状態がずっと続いたように見えた。最初からリズムに乗った楽な追走ではなかったのかもしれない。

 ここが引退レースのラッキーライラック(父オルフェーヴル)は、少し差のある4着。これで2400m以上【0-1-1-1】となった。決してこなせない距離ではないが、タフな馬場コンディションでの初の2500mは予想以上にきびしかったのだろう。

 ワールドプレミア(父ディープインパクト)とともに並んで5着入線(同着)が、牝馬カレンブーケドール(父ディープインパクト)。同じ牝馬ラッキーライラックとともにソツなく好位追走の形になったが、この牝馬もまず崩れない地力の高さを示したと同時に、2400m以上【0-2-0-2】。このタフな馬場だと最後の1ハロンが長かった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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