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絶好条件での春秋グランプリ制覇 今後も狙いは限定したい

  • 2020年12月28日(月) 18時00分

先週の血統ピックアップ


・12/27 有馬記念(GI・中山・芝2500m)
 残り200mで先頭に立ったクロノジェネシスがサラキアの追撃をクビ差抑えて優勝しました。春秋グランプリ制覇は昨年のリスグラシューと同じです。勝ちタイム2分35秒0は過去10年間で3番目に遅い決着です。これより遅かった11年(2分36秒0)と14年(2分35秒3)は、いずれもスローペースの上がり勝負という事情がありました。今年の決着タイムの遅さは馬場コンディションに起因するもので、クロノジェネシスは荒れた馬場への適性に秀でていたことがうかがえます。

 ノームコア(香港C、ヴィクトリアマイル)の半妹にあたる良血で、父バゴは朝日杯フューチュリティSの2着馬ステラヴェローチェの父でもあります。バゴは現役時代に凱旋門賞を制覇しただけあって、産駒は切れ味勝負には向きませんが、力の要る馬場の消耗戦に強いという特長があります。

 クロノジェネシスは秋華賞、宝塚記念に次いで3つめのGI制覇。上がり3ハロンは秋華賞=36秒1、宝塚記念=36秒3、有馬記念=36秒2と、いずれも36秒台です。内回りまたは小回りコースで上がりが掛かったときに最大限の力を発揮する、というタイプで、今回はまさにその条件でした。GII、GIIIであれば、長い直線と高速馬場が重なったとしてもそれを克服するだけの地力を持ち合わせていますが、GIで頭から狙うには、少なくとも上記の条件のどちらかに当てはまったときに限定したい馬です。

・12/26 ホープフルS(GI・中山・芝2000m)
 好位を追走したダノンザキッドが馬場中央から力強く抜け出し、内で粘るオーソクレースに1.1/4馬身差をつけて無傷の3連勝を飾りました。GIとGIIIを勝っているので、GIしか勝っていないグレナディアガーズよりも、最優秀2歳牡馬の投票では有利な立場に立ったといえます。勝ちタイム2分02秒8は、勝ち馬の上がり3ハロン36秒4は、いずれもグレードレースに昇格した2014年以降、最も遅いものです。

 ダノンザキッドは東京スポーツ杯2歳Sで高速馬場や上がりの速い決着をこなしているので、総合力が高く凡走しづらいタイプの馬であるといえます。当歳時のセレクトセールで1億円(税抜)の値がついた高馬で、ジャスタウェイ産駒であることを考えればよほど馬のデキが良かったのだろうと推察されます。半兄ミッキーブリランテ(父ディープブリランテ)はシンザン記念3着馬。母の父ダンシリはハービンジャーの父で、ブルードメアサイアーとしてきわめて有能。連対率27.6%と素晴らしい実績を挙げています。

 ダノンザキッドのほかにミッキーチャーム(阪神牝馬S、クイーンS)、シャドウディーヴァ(フローラS-2着、府中牝馬S-2着)などが出ており、後者は父がハーツクライなので、ダノンザキッドと配合構成がよく似ています。ジャスタウェイ産駒は総じて完成が遅めなのでまだまだ成長の余地があるはずです。

今週の血統注目馬は?


・1/5 万葉S(OP・中京・芝3000m)
 登録馬の父のなかで芝3000mに強い種牡馬はハーツクライ。連対率24.4%は、2010年以降、芝3000m以上の長距離戦で産駒が20走以上した12頭の種牡馬のなかで第1位。長距離ナンバーワン種牡馬だけに当レースにはアドマイヤアルバ、キングオブドラゴン、ゴースト、タイセイトレイル、ナオミラフィネ、プリンスオブペスカと6頭が登録しています。実力馬タイセイトレイル、2連勝中の上がり馬ゴーストはとくに注目です。

今週の血統Tips


 2020年のJRAファーストシーズンサイアーランキングは、モーリスとドゥラメンテが史上稀に見るハイレベルな激戦を繰り広げていたのですが、最終週にドゥラメンテが4勝+ホープフルS4着という固め打ちで一気に賞金を積み上げ、前週までトップだったモーリスを逆転して王座につきました。JRA2歳サイアーランキング(賞金順)は以下のとおり(★=新種牡馬)。

1位 ディープインパクト
2位 ドゥラメンテ★
3位 モーリス★
4位 キズナ
5位 エピファネイア

 ドゥラメンテが挙げた「37勝」は、ディープインパクトの34勝を抜いて全体でも第1位です。上記の表にあるとおり賞金順では2位にとどまり、常勝ディープインパクトに手が届きませんでした。ドゥラメンテの月別勝利数は以下のとおり。

6月 1勝
7月 4勝
8月 4勝
9月 4勝
10月 6勝
11月 9勝
12月 9勝

 尻上がりに成績を上げて行ったのは見事です。成長力があり、なおかつ長めの距離が合うという性質が組み合わさった結果でしょう。芝連対率22.1%に対し、ダート連対率は35.9%と、ダートで優秀な成績を残していることは見逃せません。ダート1800mでは連対率57.1%(14戦8連対)と驚異的な成績です。また、芝からダートに転じた馬は連対率44.4%(18戦8連対)。こちらも素晴らしい成績です。

 モーリスは、芝に限定すればドゥラメンテと同じ28勝を挙げているのですが、ダートでわずか3勝しか挙げられず、それが最後の最後に響いた形です。

 ただ、新種牡馬で30勝を超えるものは、将来全体のランキングで上位を賑わすことになるのは間違いないので、ドゥラメンテもモーリスも同じくらい有望です。現時点で優劣は付けられません。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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