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【中山金杯】本物になったヒシイグアスが真価発揮

  • 2021年01月06日(水) 18時00分

人馬共に2021年はさらに飛躍するだろう


 5歳の上がり馬ヒシイグアス(父ハーツクライ)が、3連勝で初重賞制覇。騎乗した松山弘平騎手は、2020年の京都金杯(5歳牝馬サウンドキアラ)に続いて、2年連続の「金杯V」となる素晴らしいスタートを切った。

 ヒシイグアスの父ハーツクライ(その父サンデーサイレンス)は、ディープインパクトより1歳上で年が明けて20歳となったが、2014年生まれのスワーヴリチャード、リスグラシュー、Yoshida(JPN)、2015年生まれタイムフライヤー、2017年生まれサリオス…など、種牡馬生活の後半になってからGIで快走する馬を数多く送っている。

 5歳ヒシイグアス(2016年生まれ)はデビューこそ早かったが、2歳時は2戦、クラシック挑戦を目ざした3歳時も3戦だけ。4歳時の昨年も4戦。無理使いすることなく成長をうながし、5歳初戦のここで初重賞制覇。まだ10戦【5-3-0-2】。本物になったこれからがいよいよ真価発揮だろう。

 輸入牝馬の母ラリズ(父はStorm Cat直仔のBernsteinバーンスタイン)は、南米アルゼンチンで13戦9勝(勝ち距離は1000-1400m)。19世紀末から13代もアルゼンチンで育ったファミリーでスピード色が濃いが、成長力あふれるハーツクライとの組み合わせで2000m級がベストと思える中距離タイプに育ってきた。
重賞レース回顧

5歳初戦で初重賞制覇したヒシイグアス(C)netkeiba.com、撮影:下野雄規



 ヒシイグアスは堀宣行厩舎の期待馬とあって、デビューから8戦目までR.ムーア、F.ミナリクなど外国人騎手しか乗っていなかった。だが、9戦目にテン乗りとなった松山弘平騎手の差し切りはそれまでにない鋭さ(上がり33秒5)であり、格上がりになった形の今回は、1番人気に支持され、17頭立ての中団でもまれる苦しい展開になったが、力強く抜け出して競り合いを制した。松山弘平騎手も、軌道に乗ったヒシイグアスも、さらに飛躍することだろう。

 2着に突っ込んだココロノトウダイ(父エイシンフラッシュ)は、3歳後半からグングン力をつけ、オープン入り初戦の重賞をクビ差2着して、通算9戦【4-2-0-3】。文字通りの上がり馬となった。種牡馬エイシンフラッシュの3世代目の産駒。あと一歩のところで自身の初重賞制覇も、父の産駒のJRA初重賞制覇も逃したが、祖母フェアリードールの初仔は、大きなファミリーの中心馬となっているトゥザヴィクトリー(1996年生まれ)。その半妹で、末っ子の11番目の産駒となったのが母フェアリーダンス(2009年生まれ)。

 半姉の5歳フェアリーポルカ(父ルーラーシップ)もすでに2重賞を制している。勝ったヒシイグアスも躍進必至の今年の注目馬だが、4歳ココロノトウダイもさらにパワーアップするだろう。ここまで9戦、すべてコンビを組んで成長してきた丸山元気騎手は、松山弘平騎手と同じ1990年生まれの30歳。2010年にJRA年間92勝の自己最高記録があるが、今年は年間100勝の大台を目ざして欲しい。

 昨年の中山金杯2着のウインイクシード(父マンハッタンカフェ)が、前後半「62秒0-58秒9」=2分00秒9の流れに巧みに乗って3着。持ち味のしぶとい先行力をフルに発揮して、これで通算【4-6-7-12】。またまた好走しながらあと一歩…の成績にとどまったが、レース巧者の7歳馬らしい粘り腰全開だった。先週まで6歳馬、衰えていなかった。

 11番人気で3着したウインイクシードのあと、14番人気ロザムール(父ローズキングダム)、13番人気のアールスター(父ロードカナロア)が、ハンデ戦らしく4着、5着に善戦したが、惜しかったのは上がり最速タイの34秒4で一気に突っ込んだアールスター。スタート直後にはさまれ大きく下がった不利に加え、予測以上のスローの流れも合わなかった。

 4歳馬らしい上昇が期待された2番人気のディープボンド(父キズナ)は14着。同じく4歳のダーリントンホール(父New Approachニューアプローチ)は4コーナー手前であきらめるように17着。ともに少し時計を要するタフな芝は不利ではないと思えただけに、今回は案外だった。ぜひ、巻き返して欲しい。

 3番人気のテリトーリアル(父Teofiloテオフィロ)は、うまくインの指定席に入って追走できたが、レース上がり35秒0のスローは合わなかった。4番人気のヴァンケドミンゴ(父ルーラーシップ)は、スローを読んで積極策に出たが、藤岡康太騎手が振り返ったように「少し控えて進んだ方が良かったのかもしれない」。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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