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存在意義を示した冬季繁殖馬セール

  • 2021年01月28日(木) 18時00分

トレンドは競走成績を残した母系が優秀な未供用馬


 株式会社ジェイエス主催による恒例の「繁殖馬セール」が昨日1月27日(水)、新ひだか町静内の北海道市場にて開催された。厳冬のこの時期にしては珍しく昨日は束の間の温暖な気候に恵まれ、終日微風で気温もプラス5度まで上昇した。

 開場は午後1時、セリ開始は午後2時である。上場頭数は受胎馬17頭、空胎馬17頭の34頭。昨年の55頭から大きく減少し、やや少ない頭数となったが、受胎馬12頭、空胎馬9頭が落札され、売却率は受胎馬70.59%、空胎馬52.94%で、合わせて61.76%を確保。昨年の54.55%(55頭中30頭落札)から7.21%上昇した。

 売り上げ総額は合計1億1033万円(税込み)、平均価格は525万3810円で、昨年の総額9618万4千円、平均価格320万6133円を上回る成績を残した。

 受胎馬の最高価格馬は、3番「グレイスミノル」の1650万円(税込み)。新冠産9歳。父バゴ、母シャンハイレディ、母の父シャンハイという血統で、本馬はドンカスターCや出石特別など中央32戦4勝、2着3回3着6回、獲得賞金8141万円という競走成績を持つ。サトノクラウンを受胎しており、最終種付け日は6月11日。販売者は吉岡實氏、落札者は岡田スタッド。

生産地便り

グレイスミノルの落札の様子(提供:馬市ドットコム)


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受胎馬の中で最高価格となったグレイスミノル(提供:馬市ドットコム)


 次点は14番「ツクバエルドラド」の1265万円(税込み)。千歳産12歳。父El Corredor、母ファーストバイオリン、母の父Dixieland Band。本馬は競走成績こそ2戦のみながら、全兄にドミニカン(北米4勝、ブルーグラスS=G1等)、半弟にサウンズオブアース(2勝、ジャパンC2着、菊花賞2着、有馬記念2着等)のいる血統で、ドゥラメンテを受胎、最終種付け日は4月8日。販売者は村上欽哉牧場、落札者は坂本智広氏。

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ツクバエルドラドの落札の様子


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全兄にG1馬を持つ良血馬ツクバエルドラド


 3番目は16番「ハーランズロマン」の1155万円(税込み)。米国産9歳。父Harlan's Holiday 母Swinging。リアルインパクトを受胎しており、最終種付け日は4月17日。販売者は林正道氏、落札者は(有)下屋敷牧場。

 ここまでが受胎馬の上位3傑で、1000万円を超えた落札馬もこれら3頭のみであった。4番目以降は200万円台にまで下がるので、これら3頭の評価が抜けていたということになるだろう。

 受胎馬に続いて登場したのが、前年不受胎もしくは流産したり、種付けをしなかった空胎馬7頭。これらは2頭が落札されたにとどまった。

 最後に登場したのが、繁殖未供用の若馬たち10頭である。同じ空胎馬でも、未供用馬は人気が高く、ここに至ると市場はがぜん活気づいた。不受胎、種付けせずの7頭を含め上場された空胎馬17頭で最も高額で落札されたのは、205番「フローラルパーク」の1870万円(税込み)。新冠産5歳。父へニーヒューズ、母フェアノータム、母の父アグネスタキオン。本馬はJRAブリーズアップセール出身馬で、9戦3勝2着1回3着1回、獲得賞金2890万円の成績を残している。半姉にショウナンマハ(4勝)、伯母にショウナンパントル(阪神JFなど2勝)のいる血統。販売者は高橋正雄氏、落札者は(有)ムラカミファーム。

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フローラルパークの落札の様子


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空胎馬の中で最高価格となったフローラルパーク


 空胎馬の次点は206番「ムーンザムーン」の1485万円(税込み)。安平産7歳。父ローエングリン、母アズサユミ、母の父サンデーサイレンス。セレクトセール出身馬で、競走成績は中央30戦2勝、2着2回、3着7回。スイートピーS3着。獲得賞金は4159万円。半兄にクランエンブレム(6勝、阪神JS等)半姉にラルケット(4勝)、甥にステルヴィオ(4勝、マイルチャンピオンシップ等)のいる名血である。販売者は林正道氏、落札者は(有)グランド牧場。空胎馬で1000万円超えはこの2頭だけであった。

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ムーンザムーンの落札の様子


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兄弟馬に活躍馬多数のムーンザムーン


 終了後、主催者を代表して服部健太郎市場長は「冬は頭数が限られますし、秋とは質が変わってきますが、そんな中でこれだけの数字が残せたのは、まだまだ冬季セールも需要があるものと思っております。コロナ禍のため最悪の事態も想定しながら、準備をして参りました。最善の注意を払って何とか開催でき、皆様に感謝申し上げたいですね。さらに未供用馬など質の高い上場馬を確保すべく認知を高めるように努力して参りたいと思います。今回のセールはコロナ禍の下、販売者、購買者双方にご協力頂きました。今後もさらに次回の開催に向け努力して行く所存です」とコメントを残した。

 少ない頭数ながら、これはという注目馬には多くの引き合いがあり、依然として生産地では新たな血を求める機運が高いと言えるだろう。とりわけ、競走成績のある母系の優秀な未供用馬に人気が集中する傾向は今後もしばらく続きそうだ。海外に未だ自由に渡航できない現状では、なおのこと当セールの存在意義は極めて高い。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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