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【根岸S】3度目の挑戦で掴んだ師も“熱望”していた初タイトル

  • 2021年02月01日(月) 18時00分

本番は未経験の距離がカギとなるだろう


 重賞未勝利馬ながら1番人気の支持を受けた5歳牡馬レッドルゼル(父ロードカナロア)が、馬群の中から力強く伸びて初重賞制覇。今年の出足快調、目下総合種牡馬ランキングトップに立っている種牡馬ロードカナロアは、海外、統一交流重賞を含めこれで重賞41勝。JRAのダート重賞勝利はこれが初めてとなった。

 稍重馬場でレース全体のバランスは「34秒4-(11秒9)-36秒0」=1分22秒3。2着ワンダーリーデル(父スタチューオブリバティ)と頭差は、辛勝には違いないが、レースの最後の1ハロンは11秒9。ここで先頭に立っていたタイムフライヤー(父ハーツクライ)を差し、外から勢い良く伸びてきた2着馬を封じて、自身の最後の1ハロン推定は11秒5だった。これまでの全成績は1400m以下なので、予定される次走のGIフェブラリーS1600mでは距離適性が大きなカギになるが、いっぱいの印象はなくまだ鋭く伸びていた。

重賞レース回顧

近年、本番に好成績を残す根岸Sを勝ち切ったレッドルゼル(c)netkeiba.com、撮影:下野雄規


 マイル戦の経験なしは明らかな死角だが、昨年、先頭に立っていたコパノキッキングを力強く差し切ったモズアスコット(続くフェブラリーSも快勝)の根岸Sの最終1ハロンも推定11秒5前後だった。いまなら1600mもこなせるのではないかと思えた。過去5年に限ると、根岸S勝ち馬のフェブラリーS成績は【3-0-1-1】となる。

 一旦は勝ったか、と思えるすごい勢いで伸びてきたワンダーリーデルは、ここが35戦目の8歳馬で通算【7-1-8-19】。根岸Sは、「2019年5着(1分24秒3)、2020年8着(1分23秒5)、今年は2着(1分22秒3)」。どんどん時計を詰めている。35戦して初めての2着だったように、ツボにはまれば...の難しい一発屋タイプで、早めに動くと案外だが、ここまでの成績を振り返ると好調時に連続して快走する傾向はある。

 過去10年、根岸Sで2-3着した8歳馬は6頭いる(勝ち馬はいない)。その6頭、フェブラリーSでは「11、15、12、11」着。不出走2頭。ただし、2013年エスポワールシチーが2着(9番人気)、2018年インカンテーションが3着(6番人気)。別路線の8歳馬の快走例はあり、ダートのGIだけに8歳馬も侮れない。

 初めて距離1400mに出走し、残り300mで先頭に立ったタイムフライヤーが0秒1差の3着。「この距離で厳しい流れに慣らし、テンションを上げ行く気を起こさせる」。松田国英調教師のフェブラリーSをにらんだ根岸S出走は、狙い通りのステップになった。

 皐月賞2000mのあと、あえて1600mのNHKマイルCをはさんだ2002年のタニノギムレットで2400mの日本ダービーを勝ち、2004年には毎日杯2000mのあとやっぱり1600mのNHKマイルCをはさみキングカメハメハで日本ダービーを制している。この春で引退の松田調教師にとって、渾身の最後のビッグレースが次走のフェブラリーSになる。

 540キロ台の巨漢馬とはいえ、初の59キロ(ここまでの経験57キロ)が大きな死角とされた6歳アルクトス(父アドマイヤオーラ)の、直線、少し狭くなるような苦しい位置からインに入って伸びて4着(0秒2差)はさすがだった。全8勝中の5勝を記録する1600mの次走のGIは定量57キロになる。南部杯(稍重)の1分32秒7の日本記録は、凡走馬たちもそろって最高タイムを大幅に更新した超高速馬場なので数字通りの評価は難しいが、昨年のフェブラリーSの勝ち馬モズアスコット(自己最高の1分32秒8)を封じて勝っている。

 1400mにも1分21秒2の記録を持つスピードタイプだけに、時計の速いコンディションになるほどフェブラリーSでのアルクトスの評価は高まることになる。

 ステルヴィオ(父ロードカナロア)は、初ダートの東京1400mはスタートからダートであることに加え、不利な外枠も厳しかった。それでも直線は外から伸びかかり、見せ場はあった。10着とはいえ58キロで0秒8差(1分23秒1)なら凡走ではない。続けてダート戦に出走するか不明だが、ベストに近い1600mでもっと走りやすいコンディションの馬場なら、大きく変わる可能性がある。

 4番人気で13着のテイエムサウスダン(父サウスヴィグラス)は、迫力ある好馬体だが、ベテラン勢が上位独占の結果をみると、4歳馬ゆえ厳しいレースの経験が足りなかっただけ。ダート界に全戦全勝はまずいない。負けて強くなるのがダート巧者である。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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