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12歳での重賞制覇

  • 2021年02月02日(火) 18時00分

2005年以降では初めての快挙


 1月31日に高知競馬場で行われた黒潮スプリンターズカップ。12歳でも衰えを感じさせないサクラレグナムの完勝劇は“あっぱれ!”でしょう。兵庫から3頭、名古屋から2頭、岩手から1頭、重賞実績のある遠征馬もいるなかで、地元とはいえ赤岡修次騎手のレースぶりも見事だった。

 1月7日の笠松・白銀争覇でも先行争いを演じた3頭、エイシンエンジョイ、グリグリグリタロウ、ドライヴナイトが揃ったためハイペースが予想されたが、さらにこれらの機先を制したのが内の2番枠に入ったスリラーインマニラ。盛岡芝1000mの重賞を逃げ切ったことがあるツーエムマイスターも外から来た。逃げたいエイシンエンジョイはその間で、白銀争覇同様に先行争いに巻き込まれて苦しくなってしまった。

 もともと好位〜中団からレースを進めるタイプのサクラレグナムには願ってもない展開。3コーナー過ぎ、抜群の手応えで先頭をとらえにかかった場面がアップで映し出されると、これは勝っただろうと見えた。1月17日の大高坂賞で後方から見事な追い込みを見せたアイアンブルーが追ってきたが、これを1馬身半差で振り切っての完勝。8番人気ながら3着に入ったアースグロウの鞍上は昨年10月にデビューしたばかりの井上瑛太騎手で、重賞ゆえ減量なしでの騎乗だった。遠征馬が半数の6頭いたメンバーで、3着まで地元馬が独占という結果は、今の高知競馬の勢いともいえるだろうか。

 サクラレグナムは2019年の10歳時に、地元で重賞を3勝。年末にはJpnIIIの兵庫ゴールドトロフィーに遠征して、軽ハンデだったとはいえ直線では前をとらえようかという場面もあり、勝ったデュープロセスから0秒2差の3着には驚かされた。

 11歳の昨年は、1月に大高坂賞を勝利。そしてJpnIIIの黒船賞では、直線2番手という場面があって4着。中央勢相手に、地方馬では唯一掲示板という好走を見せた。

 その後は勝ちきれないレースが続いたが、秋から準重賞と特別で3連勝。年明け12歳初戦となった特別戦では、格下相手とはいえ、他馬より2kg以上重い58kgを背負っての楽勝にあらためて驚かされた。そして臨んだ黒潮スプリンターズカップは、見事1番人気にこたえての勝利だった。

 昨年は10歳のメイショウアイアン(北海道)がJpnIIIの北海道スプリントカップを制したのをはじめ、近年は高齢馬の重賞での活躍が目立っている。地方同士の重賞なら10歳馬の勝利はそれほどめずらしいことではないが、11歳馬の重賞勝利となると、2005年以降では以下の例があるだけ(ばんえいは除く)。

 スマートブレード(愛知) 2012年福山・マイル争覇
 フジノウェーブ(大井) 2013年大井・東京スプリング盃
 エプソムアーロン(高知) 2015年高知・トレノ賞、建依別賞
 ダイナミックグロウ(兵庫) 2015年園田・摂津盃
 サクラシャイニー(高知) 2017年高知・大高坂賞、御厨人窟賞
 サクラレグナム(高知) 2020年高知・大高坂賞
 メモリージルバ(愛知) 2020年笠松・飛山濃水杯

 フジノウェーブは11歳で東京スプリング盃4連覇を果たし、その活躍によって同レースは翌2014年からフジノウェーブ記念として行われている。

 エプソムアーロン、ダイナミックグロウは、それぞれ引退する12歳でも勝ち星を挙げた。

 サクラシャイニーは、サクラレグナムと同じ田中守厩舎で主戦も赤岡修次騎手。14歳になった2020年元日、B級以下の準重賞を勝って引退となった。

 メモリージルバは12歳になった今年も現役だ。

 そして今回、サクラレグナムによる12歳での重賞勝利は、2005年以降では初めての快挙となった。

 それ以前となると、2000年にオースミダイナー(北海道)が12歳でGIIIの北海道スプリントカップを制し、翌2001年には13歳で旭川・エトワール賞を制した。1973年4月以降、地方競馬に残る記録では、これが最高齢での重賞勝利となっている。

 あと1年ほど先のことになるが、サクラレグナムがオースミダイナーの記録に並ぶことができるかどうか、注目となりそうだ。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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