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ばん馬も引退の季節

  • 2021年02月09日(火) 18時00分

次代の活躍馬も期待したい


 ばんえい競馬は4月から翌年3月が1シーズン。この時期は繁殖シーズンとなり、続々と現役馬の引退が伝えられる季節でもある。

 トップクラスの馬は、シーズン最後に行われる最高峰、ばんえい記念(今年は3月21日)を花道に引退となる。

 そのばんえい記念を最後に、すでに引退、種牡馬入りが伝えられているのがコウシュハウンカイ(牡11)。重賞初制覇となったばんえい菊花賞から毎シーズンタイトルを重ね、重賞は通算15勝。その中には同世代の最大のライバル、オレノココロとのワンツーが何度もあった。古馬重賞で勝っていないのは、ドリームエイジカップ、チャンピオンカップ、ばんえい記念だけ。ばんえい記念には2016年の6歳時から毎年出走し、3、5、3、4、4着。6年連続出走となる最後の大舞台で一矢報いることができるかどうか。

 一方のオレノココロ(牡11)は、引退かどうかがまだはっきりとは伝えられていない。今年1月2日の帯広記念を制して重賞25勝目は、ばんえい競馬の重賞最多勝記録を更新し続けている。ばんえい記念は、満を持しての初挑戦だった2017年の7歳時、さらに18年、20年と3勝。まぎれもない現役最強にして、歴代でも最強クラスの1頭。今年のばんえい記念には、03〜06年に4連覇を果たしたスーパーペガサスに並ぶ4勝目がかかることになる。それだけの実績を残して11歳なら、種牡馬になるのは確実だが、さて、今シーズンでの引退となるのかどうか。

 2月7日のヒロインズカップがラストランとなったのが、イズミクィーン(牝7)。母は、牝馬ながら牡馬一線級相手に岩見沢記念3勝、帯広記念連覇など重賞12勝を挙げたフクイズミ。第2障害を越えてからの強烈な末脚が特徴だった。そして父が、オレノココロに記録を更新されるまで、ばんえい競馬の重賞最多勝記録21勝を持っていたカネサブラックという良血だ。

 イズミクィーンは、デビュー当時は非力だったのか気性難だったのか、出走取消となった新馬戦のあとのデビュー戦では、第2障害で何度も寝転んでしまい、ゴールはしたもののタイムオーバーの失格。続く2戦目を勝ったものの、3戦目は障害を越えられず競走中止だった。

 それでもじわじわとクラスを上げ、母譲りの末脚の片鱗をほんの少しだけ見せることもあり、2019年の5歳時にようやくA級までクラスを上げた。オープンまでは届かなかったが、牝馬限定の重賞には4度出走し、引退レースとなったヒロインズカップの4着が最高着順だった。7歳での引退は、繁殖としての期待からだろう。

 2月6日のB4戦(2着)を最後に、明けて12歳まで現役を続けて引退となったのがキタノキセキ(牡)。B4級は、古馬としては最下級条件。通算成績は、じつに337戦に出走して30勝。現役生活は、ばんえい競馬の売上が厳しい時代だっただけに、足掛け11年で稼いだ賞金は、わずか392万円余りだった。それでも注目されたのは、母が現役時に大活躍したアンローズという血統から。

 アンローズは、岩見沢記念3連覇など重賞10勝。そのうち6勝が岩見沢競馬場でのもので、岩見沢コースではめっぽう強かった。一方で帯広コースはまったく勝てず、現役最後のシーズンが“新生”ばんえい十勝として帯広単独開催となったことも不運だった。帯広初勝利を挙げたのが、その最後のシーズンとなった9歳時、2008年2月のオープン特別で、そのレースの2着馬は前記フクイズミだった。続く3月のオープン特別も連勝し、帯広コースで勝利を挙げたのは生涯でこの2戦だけ。そしてばんえい記念7着を最後に引退した。

 サラブレッドで種牡馬になるのはGIなどの大レースを勝った馬がほとんどだが、ばんえい競馬では、競走成績はそれほどでもなくとも、血統や馬格が重視されて種牡馬になる馬も少なくない。キタノキセキも種牡馬となって、母アンローズの血を次代に繋げていくことになるようだ。

 近年、重種馬は、生産者の高齢化などによって生産頭数が減少しており、馬券の売上が持ち直しても、生産頭数不足が心配される状況。それだけに、こうした活躍馬や血統馬が繁殖となって、次代の活躍馬を出してくれることを期待したい。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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