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【阪急杯】本物になったレシステンシア

  • 2021年03月01日(月) 18時00分

アルゼンチンで繁栄したファミリーの出身馬の活躍が目立った


 5歳牡馬ヒシイグアス(父ハーツクライ)が、中山の芝1800mを「1分44秒9」のコースレコードタイ記録で快勝し4連勝を決めた中山記念は素晴らしい。このあとのビッグレースに結び着くこと必至となった。

 だが、このあとGI高松宮記念1200m(3月28日、中京)に出走することになるとき、大きな注目を集める4歳牝馬レシステンシア(父ダイワメジャー)が阪神芝1400mをコースレコードの1分19秒2で圧勝した阪急杯は、間違いなくGIに直結する。

 芝1400mには、中山記念の芝1800mと同じくGIは組まれていないが、これは競走体系の範を取ったイギリスには、7ハロン、9ハロンのビッグレースが少ないことと、たまたまではあるが、日本の競馬場の多くは芝1400m、芝1800mのGI競走を施行するには不向きなコース形態だったからではないかとされる。

 時代は流れた。大半の種牡馬がアメリカ育ちの父系で、輸入牝馬もアメリカ系統が圧倒的に多くなった現在、アメリカでは根幹距離にも相当する9ハロンのレースが重要視されないのは不思議だという声はある。たしかに小回りコース1周でのGIは厳しいが、現在の京都、東京、阪神、新潟の芝なら1800mは不公平な距離ではない。

 中山記念のヒシイグアスの母ラリズ(父Bernsteinバーンスタイン)は、南米アルゼンチン産の牝馬。もう1世紀以上もアルゼンチンで繁栄してきた牝系出身。

 まったく偶然だが、阪急杯のレシステンシアの母マラコスタムブラダ(父Lizard Islandリザードアイランド)もアルゼンチン産であり、こちらもアルゼンチンで1世紀も発展したファミリーだった。

 今年、産駒がデビューする新種牡馬キタサンブラック(父ブラックタイド)の牝系も、もう1世紀も前に南米に渡った牝系「ARGアルゼンチン→CHIチリ→USA→日本産」であり、レシステンシアとキタサンブラックは150年くらいさかのぼると、同じ牝馬に到達する同じファミリーの出身馬でもある。

重賞レース回顧

1200mでもスピードを発揮してみせる可能性がある(c)netkeiba.com


 レシステンシアのレコードは、前半1ハロン過ぎではもう先頭に立っていたので、自身の前後半バランスの中身は「34秒0-(11秒4)-33秒8」=1分19秒2。後半の方が速く、最後の1ハロンで後続を突き放している。離れた最後方から13着に順位を上げたブラックムーンの後半が33秒7だったので、上がり33秒8は最速記録ではないが、勝ち負けに関係したグループでは最速タイだった。

 レシステンシアの1400m1分19秒2は、2002年の新潟で記録されたマグナーテンの1分19秒0のJRAレコード、同じく2015年の京都で記録されたウリウリの1分19秒0に次ぐ高速記録になる。2000m以下のスピードレースで、レースの後半の方が速い後傾バランスでコースレコードが記録されるのは珍しく、ふつうはレコードになりにくい。

 こういう記録を残した馬は、それが必ずしも最高の能力発揮の距離とは限らず、前後の距離に対応できるケースがある。直線1000mを「21秒8-(10秒2)-21秒7」=53秒7で乗り切ったカルストンライトオは、不良馬場のスプリンターズS1200mを圧勝している。

 東京1400mのコースレコードが記録された京王杯SC「34秒2-(11秒3)-33秒9」=1分19秒4を差し切ったタワーオブロンドンは、その秋、セントウルS1200mを1分06秒7のコースレコードで独走し、スプリンターズSも制している。

 本物になったレシステンシアは、1分32秒7 (当時の2歳阪神レコード)を持つ1600mでも、逆に距離短縮となる1200m(阪急杯の1200m通過は1分07秒4)でも、これまでに示した記録以上のスピードを発揮してみせる可能性がある。

 レースの前半が猛ペースではなかったため、楽に追走して自己最高の1分19秒5(上がり33秒8)で2馬身差2着に快走したミッキーブリランテ(父ディープブリランテ)は、今週の弥生賞で高い支持を受ける3歳ダノンザキッド(父ジャスタウェイ)の2歳上の兄。半兄ではなく、父が同じサンデーサイレンスの孫である以上に、血統背景に似た部分もある。今回はデキも確実に良くなっていた。マイルを中心に狙えるレースが増えた。

 時計の速い馬場だったとはいえ、好スタートからいつもより早めに動いて3着したジャンダルム(父Kitten's Joyキトゥンズジョイ)は、ちょっと詰めは甘いものの、改めて1400-1600m向きを示した。全4勝中の3勝がマイルだが、ベストは1400mと思えた。

 この1400mを使って、次走は1200mの高松宮記念を予定するとされるインディチャンプ(父ステイゴールド)は、なだめるような手応えで中団追走。直線で伸びかかったが、残り1ハロン脚さばきが鈍ってしまった。好タイムとはいえ遅れた追い切りと、デビュー以来最高馬体重の484キロが示すように万全の仕上がりではなかったか。全8勝中の5勝がひと叩きしたあとの2戦目。使っての良化は確実に望めるが、高松宮記念は初の1200mになる。もう少し確かな手応えが欲しかったろう。スプリント戦に対する心配が生じた。

 2番人気のダノンファンタジー(父ディープインパクト・母はBRZブラジル→ARGアルゼンチン産)は痛恨の出負け。ゲートでトモを落とすような格好になってしまった。少しずつ追い上げたものの、レース上がりが「11秒2-10秒8-11秒8」=33秒8では、残念だが道中で脚を使っているだけにどうしようもなかった。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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