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皐月賞やダービーでも軽く扱えない存在

  • 2021年03月08日(月) 18時00分

先週の血統ピックアップ


・3/7 弥生賞ディープインパクト記念(GII・中山・芝2000m)
 ダッシュよく先頭に立ったタイトルホルダーが後続の追撃を許さず逃げ切りました。父ドゥラメンテは昨年のファーストシーズンサイアーチャンピオンですが、重賞勝ちはライバルのモーリスに先を越されていました。今回の勝利で並んだことになります。

 この2頭は種牡馬に関するあらゆる指標で接戦を繰り広げており、まさに甲乙つけがたいといった様相です。タイトルホルダーのほかにアスコルターレ(マーガレットS、もみじS)、ファルヴォーレ(新潟2歳S-4着)、ジュンブルースカイ(東京スポーツ杯2歳S-3着)、キングストンボーイ(共同通信杯-4着)などを出しています。

 ドゥラメンテ産駒の脚質で特徴的なのは逃げ馬の成績がいいこと。芝で逃げた場合、23戦して[7-3-0-13]、連対率は43.5%。種牡馬ランキング上位クラスは、モーリスが35.5%、エピファネイアが34.8%、キズナが33.3%、ロードカナロアが36.6%と、おおむね30%台の半ばです。レース前からドゥラメンテ産駒の逃げが見えているときは重視すべきでしょう。

 タイトルホルダーは菊花賞で5着と健闘したメロディーレーン(父オルフェーヴル)の半弟。母の父モチヴェイターはサドラーズウェルズ系の英ダービー馬で、凱旋門賞を連覇した女傑トレヴの父。大レース向きの底力を伝えます。今回はスローの逃げが奏功したとはいえ、皐月賞やダービーでも軽く扱えない存在です。

・3/6 チューリップ賞(GII・阪神・芝1600m)
 先頭で粘るメイケイエールに内からエリザベスタワーが迫り、2頭の同着優勝となりました。メイケイエールは3つめの重賞制覇。「ミッキーアイル×ハービンジャー」という組み合わせで、2歳牝馬チャンピオンのソダシと同じくシラユキヒメの牝系に属しています。2代母ユキチャンはダートグレード競走を3勝した砂の名牝。父ミッキーアイルはディープインパクト産駒の名マイラーで、初年度産駒からメイケイエールのほかにデュアリスト(兵庫ジュニアグランプリ)、ミニーアイル(あざみ賞)、ララクリスティーヌ(紅梅S-2着)などを出しています。あれだけ派手に引っ掛かって勝つのですから能力はズバ抜けていますが、GIでは厳しいといわざるをえません。

 一方、エリザベスタワーは外国産馬で、イギリスで繋養されているキングマンの仔。キングマンは現役時代に欧州マイルGIを4連勝し、カルティエ賞年度代表馬となりました。名種牡馬インヴィンシブルスピリットの最高傑作で、母ゼンダは仏1000ギニー馬。

 これも名種牡馬であるオアシスドリームの甥にあたり、なおかつ父系も同じなので、同馬とキングマンは血統構成の50%が同一です。期待どおり種牡馬としても成功し、パーシャンキング(ムーランドロンシャン賞、仏2000ギニー、イスパーン賞)、パレスピアー(セントジェームズパレスS、ジャックルマロワ賞)、ドメスティックスペンディング(ハリウッドダービー)などを出しています。

 本馬はクリスのクロスを持ち、サドラーズウェルズを併せ持つので、弥生賞2着馬シュネルマイスターと配合構成がよく似ています。桜花賞はソダシ、サトノレイナス、アカイトリノムスメ、ファインルージュ、ユーバーレーベンといったところが人気を集め、メイケイエールとエリザベスタワーはその次のグループでしょうか。今年は難解です。

今週の血統注目馬は?


・3/13 中京スポーツ杯(3勝クラス・中京・ダ1400m)
 ハードスパン産駒は中京ダ1400mで連対率37.5%。2012年以降、当コースで産駒が20走以上した87頭の種牡馬のなかで第1位という優秀な成績です。

 当レースには産駒のプロスパラスデイズが登録しています。ノウレッジ(新潟2歳S-2着)、ブランクチェック(レパードS-3着)、エンダウメント(現3勝クラス)の兄弟にあたる良血で、長期休養を挟んでずっとスランプが続いていたのですが、前走の播磨Sで2着と復活を果たしました。後ろから行くのでペースが速くなれば連続好走も十分可能でしょう。

今週の血統Tips


 わが国のブルードメアサイアーランキング(母の父ランキング)は、2007年から2019年まで13年連続でサンデーサイレンスがトップの座にありました。非サンデー系の種牡馬にとってサンデーサイレンス牝馬は肥沃な大地といえる存在であり、これを利用して多くの活躍馬が生み出されました。

 しかし、サンデーサイレンスは2002年に死亡しており、その娘たちも高齢化したため、ついに王朝を明け渡すときがきました。2020年にトップに立ったのはキングカメハメハです。ブルードメアサイアーランキングは、一度首位に立つとその座が長期化する傾向があります。

 したがって、キングカメハメハが王座を保ち続けるという見方は決して間違ってはいないのですが、今年の成績を見ると、意外にも激戦模様となっており、その座が危うくなっています。

 ディープインパクトの成績が急進しているのです。昨年は6位で、今年は現時点で3位。首位キングカメハメハとの差はわずか4000万円で、JRAのみの成績ではディープインパクト1位、キングカメハメハ2位とすでに逆転しています。

 これは3歳世代に「母の父ディープインパクト」の素質馬がひしめいていることが大きいです。エピファネイア、モーリス、ロードカナロアといった若い世代の有能な種牡馬たちがディープインパクト牝馬と自由に交配でき、なおかつ結果を出しています。年末まで目が離せません。

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netkeibaでもおなじみの血統評論家・栗山求氏が血統の面白さを初心者にもわかりやすくレクチャー。前週の振り返りや、週末行われるレースの血統的推し馬、豆知識などを通して解説していきます。 関連サイト:栗山求の血統BLOG

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