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千両役者が目白押し北米牝馬ダート戦線に注目

  • 2021年03月17日(水) 12時00分

6歳モノモイガール 女王健在アピール


 アメリカの古馬の牝馬ダート戦線が、面白い展開を見せている。

 遡ること4か月前、11月8日にケンタッキーで開催されたファシグティプトン・ノヴェンバーセールにて、950万ドルというセッション最高値で購買されたのは、前日キーンランドで行われたG1BCディスタフ(d9F)を快勝したばかりだったモノモイガールだった。

 この段階での同馬の戦績は15戦13勝で、手にしていたG1は7つ。3歳時と5歳時に牝馬チャンピオンの称号を得ていた同馬を購買したのは、大手生産牧場のスペンドスリフト・ファームだった。したがって、そのまま繁殖入りというのが大方の見るところだったのだが、セール後にスペンドスリフトのネッド・トーフィーGMが、「6歳となる来季も現役続行」と表明。世界中の競馬ファンから歓呼の声が上がった。

 引き続きブラッド・コックスが管理することになったモノモイガール(牝6、父タピザー)の、今季の始動戦となったのが、2月28日にアーカンソー州のオークローンパークで行われた牝馬限定のG3バヤコーアS(d8.5F)だった。

 重賞3勝馬で、前走G1ラブレアS(d7F)が4着だったファイナイト(牝4、父マニングス)が逃げ、1.2倍の圧倒的1番人気に推されたモノモイガールは3番手外目を追走。3〜4コーナー中間から鞍上F・ジェルーが仕掛け、直線残り300m付近で先頭に立つと、モノモイガールはあっと言う間に後続を引き離し、最後はゆっくりと流しながら2馬身差で快勝。通算10度目の重賞制覇を果たした。

 女王健在を存分にアピールした同馬の次走は、4月17日に同じくオークローンパークで行われるG1アップルブロッサムS(d8.5F)になる予定だ。

 同じオークローンパークで、バヤコーアSから2週間後の3月13日にも牝馬限定のG2アゼリS(d8.5F)が行われ、ここが今季の始動戦となったのが、モノモイガールと同厩のシーデアズザデヴィル(牝4、父デアデヴィル)だった。

 2歳時に4戦1勝、G2ソレントS(d6F)3着の実績を残した後、キーンランド11月市場に上場され、ここで現在の馬主に28万ドル(当時のレートで約3082万円)で購買され、同時に、サイモン・キャラハン厩舎からブラッド・コックス厩舎に転厩したのがシーデアズザデヴィルである。3歳時は7戦し、3重賞を含む4勝。コロナ禍で4カ月遅れでの開催となった9月のG1ケンタッキーオークス(d9F)では、その後、20年の最優秀3歳牝馬に選出されることになるスイススカイダイヴァーを2着に退け優勝している。

 古馬との初対決となったG1スピンスターS(d9F)で3着に敗れると、シーデアズザデヴィルはG1BCディスタフを回避して休養に入り、5か月ぶりの復帰戦となったのがG2アゼリSだった。

 スタートから先手をとったシーデアズザデヴィルは、後続に1馬身差をつけて直線へ。G3ランパートS(d8F)、G3ヒューストンレディスクラシックS(d8.5F)を連勝しての参戦だったレトルースカ(牝5、父スーパーセイヴァー)がゴール前で詰め寄ったが、これを頭差退けて優勝。4度目の重賞制覇を飾った。

 G2アゼリSは、4月17日に同じくオークローンパークで行われるG1アップルブロッサムSの前哨戦的位置付けにあるのだが、管理調教師ブラッド・コックスは、当面の間はモノモイガールとシーデアズザデヴィルを、同じレースには使わない方針を表明。シーデアズデヴィルの次走は、4月30日にチャーチルダウンズで行われるG1ラトロワンヌS(d8.5F)になる予定だ。

 G2アゼリSから4時間ほど後、カリフォルニア州のサンタアニタで発走の時を迎えたのが、牝馬限定のG1ビホールダーマイルS(d8F)で、ここにも大物の出走があった。前段でも登場した、20年の最優秀3歳牝馬スイススカイダイヴァーが、ここを今季の始動戦に選択したのである。

 3歳時は10戦して5勝。5勝は全て重賞で、このうち2つはG1だったのだが、サラトガのG1アラバマS(d10F)に続く2度目のG1制覇となったのが、その後20年の全米年度代表馬に選出されるオーセンティックを2着に退けて優勝した、ピムリコのG1プリークネスS(d9.5F)だった。

 史上6頭目となる牝馬によるプリークネスS制覇を成し遂げたスイススカイダイヴァーはその後、G1BCディスタフに向かったが、発馬直後に躓くアクシデントがあり7着に敗退。その後は休養に入ったため、ビホールダーマイルSは4か月の休み明けだった。

 オッズ2.4倍の1番人気に推されたスイススカイダアイヴァーは、レース前半は4番手を追走。直線に向くと楽に抜け出した同馬が、前走サンタアニタの一般戦(d8F)を9馬身差で快勝しての参戦だったアズタイムゴーズバイ(牝4、父アメリカンフェイロー)に2.3/4馬身をつけて快勝。3度目のG1制覇を飾った。

 レース翌日、同馬の管理調教師ケン・マクピークは、スイススカイダイヴァーの次走がG1アップルブロッサムSになるとコメント。すなわち、ここでモノモイガールとの再対決が実現することになるのである。

 北米における古馬の牝馬ダート路線には、今季まだ姿を見せていないチャンピオンホースが、もう1頭いる。3歳時の昨年、ベルモントパークのG1エイコーンS(d8F)、サラトガのG1テストS(d7F)、キーンランドのG1BCフィリー&メアスプリント(d7F)を制し、最優秀短距離牝馬に選出されたガミーン(牝4、父イントゥミスチフ)だ。

 同馬を管理するボブ・バファート師は、5月1日にチャーチルダウンズで行われるG1ダービーシティディスタフ(d7F)が、ガミーンの今季初戦になるとコメントしている。日本や欧州同様に、千両役者が目白押しの北米牝馬ダート戦線に、ぜひご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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