今年はチャンスのある馬が何頭も存在する
ヴィクティファルスはゴール前で伸びた勝負強さが光った(c)netkeiba.com、撮影:下野雄規
予測以上のスローで前後半「62秒6-59秒4」=2分02秒0だった弥生賞ディープインパクト記念に続き、スプリングSは雨の重馬場で1800m「62秒5-49秒5」=1分52秒0。ともに注目の1番人気だった弥生賞のダノンザキッド、スプリングSのボーデンが同じように3着にとどまり、牡馬のクラシック路線はここにきてますます難しくなっている。
3月20日(土)の若葉S2000mを、楽々と1分59秒5(上がり33秒7)で差し切ったアドマイヤハダル(父ロードカナロア)の評価は一気に高くなるだろう。また、現段階では有力馬のジョッキーが重なるケースもあり、今春の牡馬クラシックは、無敗のまま皐月賞まで突き進んだサートゥルナーリア、コントレイルのいたここ2年とは一転、チャンスのある馬が何頭も存在する形になった。
大外から差し切ったヴィクティファルス(父ハーツクライ)は、2戦目でエフフォーリアに2馬身半の差をつけられた2月の共同通信杯より明らかにパワーアップしていた。ライバルを前に置きつつ、勝負どころまでは我慢する折り合い面も確実に進歩している。馬群の内に入らず、馬場を読んで4コーナーから大外に回った好騎乗もあるが、苦しくなったゴール寸前で伸びた勝負強さは光った。
前2年と異なり、今年は直前になって「急上昇した馬にチャンスの大きいクラシックではないか」というムードになってきた。今年産駒がデビューの人気種牡馬となった母の半弟シルバーステートは脚部難でクラシック不出走だったが、母ヴィルジニア(父Galileo)のイトコになる一族の代表馬シックスセンスは、ディープインパクトが無敗の3冠馬となった2005年、この時期に上昇して皐月賞2着、日本ダービー3着、菊花賞も4着。母の全兄Sevilleセヴィルは2011年の愛ダービー2着馬。父ハーツクライだけでなく、母方もビッグレース向きの底力を秘めている。
頭差2着のアサマノイタズラ(父ヴィクトワールピサ)は惜しかった。人気馬を見ながらスパートして坂上で先頭。勝ったに等しい内容だった。結果は仕掛けが一歩早かったことになるが、差しにくい重馬場で、あの勢いで待つことはない。むしろ、攻めて出た果敢な姿勢と、急速に良くなっている上昇度に注目したい。
父ヴィクトワールピサはこの時期、重馬場の弥生賞を制し、その勢いに乗ってヒルノダムール、エイシンフラッシュ、ローズキングダムなどを封じて稍重の皐月賞を完勝している。迫力十分の馬体。クラシック登録のない伏兵だが、追加登録で挑戦できる皐月賞がパワーの生きる馬場ならチャンスはある。
1番人気で3着(0秒3差)にとどまったボーデン(父ハービンジャー)は、今回は馬場の巧拙というより、若さが出たのがあまりに痛かった。この馬場だから、好位を取りに出たのは当然。ただ、少し行きたがる面をみせたところで、外から他馬が並んできた2コーナー過ぎ、口を割ってかかり気味になってしまった。
5Rの3歳未勝利戦(アルビージャ)で一番外に回って快勝し、イン不利を知っていた川田騎手だが、前に馬を置くためにやむを得ず(仕方なく)、インに入ったように見えた。直線、それでもインから伸びかかったが、5着までに入線した馬のうち、インを衝くしかない形になったのはこの馬だけ。高い素質を評価され、皐月賞の優先出走権は確保できたが、多頭数のクラシックを前に、行きたがった死角をクリアしなければならない課題が生じてしまった。
弥生賞ディープインパクト記念では、タメを利かせすぎて外に回り届かなかった印象も残るダノンザキッドで3着。どの人馬もそうだが、もう慎重に育てる時間がないのがクラシック直前。陣営と川田騎手のウデの見せどころとなった。
条件加算賞金1600万の5着ヴェイルネビュラ(父ロードカナロア)は、皐月賞出走を希望する馬のちょうどボーダーライン上か。内の4番枠だったため、最後の直線に向くまで外に出せない不利があった。良馬場でこそのタイプだろう。NHKマイルCかもしれないが、イトコのコズミックフォース(父キングカメハメハ)は16番人気の日本ダービー3着馬。混戦の今年だけに、チャンスがないとはいえない。
2番人気のランドオブリバティ(父ディープインパクト)は最内枠スタート。気性難を出さないためにはプラスの枠順だったが、重馬場となっては逆に大きな不利。ボーデンと同じようにイン追走となってしまった。ホープフルSの逸走はたまたまのことだった。懸命にがんばったが、ツキに見放されている。