先週の血統ピックアップ

・3/28 高松宮記念(GI・中京・芝1200m)

　中団から伸びたダノンスマッシュがレシステンシアとの競り合いをクビ差制し、前走の香港スプリントに続くGI連勝を果たしました。国内GIは初制覇です。

　昨年のこのレースは同じ重馬場のコンディションで10着。スタートで躓く不利があったとはいえ、地力に関してまだ物足りないものがあったのも事実です。一年が経過し、心身ともに逞しくなって本格化しました。

　母スピニングワイルドキャットはハリウッドワイルドキャット(米3歳牝馬チャンピオン)の娘で、ロベルト4×3という重厚なクロスを持ちます。言うまでもなく短距離馬はスピードに強みがあるのですが、競走馬としての格はトップスピードをどこまで持続できるかにかかっています。血統的な視点でいえば“スピードを持続させるスタミナ”を持つことが重要な要素です。

　したがって、優れた短距離馬は往々にして一流のスタミナ血統を抱えています。ダノンスマッシュは前述のとおりロベルト4×3。ロベルトは現役時代に英ダービーを制覇したスタミナタイプで、切れ味には欠けるものの、スピードの持続力や底力に定評のある血です。父ロードカナロアからスピードを、母スピニングワイルドキャットから“スピードを持続させるスタミナ”を受け継いだダノンスマッシュは、短距離馬として理想的な配合構成といえるでしょう。

・3/27 毎日杯(GIII・阪神・芝1800m)

　好位を追走したシャフリヤールがグレートマジシャンにクビ差競り勝ち、初の重賞タイトルを獲得しました。勝ちタイム1分43秒9はコースレコード。グランデッツァが記録したJRAレコード(京都競馬場)に並ぶ優秀なものです。皐月賞馬アルアインの全弟で、同馬は2017年の当レースを勝っているので兄弟制覇でもあります。

　母はBCフィリー&メアスプリント(米G1・ダ7ハロン)を制したスピードタイプ。アメリカのG1を制したスピード型の繁殖牝馬にディープインパクトを交配するのは成功パターンですが、本馬の3代母ミスティックマジェスティはスタミナタイプのヒズマジェスティを父に持ち、かつハイペリオン4×5という重厚な血統構成です。

　その影響か全兄アルアインはスピードだけでなく大レース向きの底力も兼ね備え、皐月賞だけでなく大阪杯も勝ちました。母の父はエーピーインディ系なのでスパッと切れる脚はないものの、スピードの持続力に強みがあるので、ハイペースで展開する芝中距離戦を得意とするタイプです。兄と同様、小回りコースのほうが向く可能性が高いので、皐月賞に出てくれば有力でしょう。

今週の血統注目馬は?

・4/4 明石特別(2勝クラス・阪神・芝2000m)

　ロードカナロア産駒は阪神芝2000mで連対率26.7%。2011年以降、当コースで産駒が20走以上した49頭の種牡馬のなかで第3位という優秀な成績です。

　当レースには産駒のヴィクターバローズが登録しています。昇級初戦の前走は4着と敗れましたが、勝ち馬とはわずか0秒2差。最近は週末になると雨が降るサイクルになっているのですが、この馬は馬場不問で、今回はクラス2戦目なのでいいところがありそうです。

今週の血統Tips

　3月27日のドバイワールドカップデー。日本馬は計6レースに出走し、2着4回と健闘したものの、勝つまでには至りませんでした。

　勝ち馬の血統を眺めると、今年はドバウィ系の活躍が目立ちました。ドバイシーマクラシック(首G1・芝2410m)の勝ち馬ミシュリフはドバウィの直系の曾孫。ドバイターフ(首G1・芝1800m)を勝ったロードノース、UAEダービー(首G2・ダート1900m)を勝ったレベルズロマンスはいずれもドバウィ産駒です。

　ドバウィは、わずか1年の種付けで早世したドバイミレニアムの代表産駒で、現役時代はマイラーとして鳴らしたのですが、種牡馬としてはスプリンターから2400mタイプまで幅広く活躍馬を出し、ヨーロッパではガリレオに次ぐ名種牡馬との評価を獲得しています。ダーレーが所有しているのでドバイで走る産駒も多く、これまでにドバイワールドC、ドバイシーマクラシック、ドバイターフを2勝ずつという好成績を挙げています。

　クロノジェネシスとラヴズオンリーユーを破ってドバイシーマクラシックを制したミシュリフは、昨年のフランスダービー馬で、父メイクビリーヴ、2代父マクフィ、3代父ドバウィというラインに属しています。上記のラインはすべて父の初年度産駒に誕生しています。そのため代の回転が早く、仔と曾孫が同時に走っているという珍現象が起こっているわけです。