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世界一過酷な障害レース・グランドナショナルが2年振りの開催

  • 2021年04月07日(水) 12時00分

5億人以上が視聴する競馬界随一のビッグイベント


 世界80か国で5億人以上が視聴する、競馬界随一のビッグイベント「G3グランドナショナル(エイントリー競馬場)」の発走が、今週土曜日(10日)の現地時間17時15分(日本時間の11日午前1時15分)に迫っている。

 距離が34F74y(=約6907m)、飛越する障害の数30というグランドナショナルは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で2020年の施行が中止になっているだけに、世界の競馬ファンは2年振りの開催を心待ちにしている。ただし、一般ファンは入場できない「無観客」での開催となる(馬主の入場は可)。

 当日1番人気が予想されているのが、ジョンジョ・オニール厩舎のクロースキャップ(セン9、父ベネフィシャル)だ。

 ナショナルハントフラットを2戦した後、17/18年シーズンにハードルデビューしたのがクロースキャップだ。

 翌18/19年シーズンからスティープルチェイスに転進すると、2戦目から2連勝。勢いに乗って挑んだ初重賞のG3スコティッシュ・グランドナショナル(芝31F176y)で3着に好走し、その後の出世が期待された。

 19/20年シーズンは4戦して未勝利に終わり、やや期待を裏切ったが、今季は好調を取り戻し、2戦目となったニューバリーのG3ラドブロークストロフィーチェイス(芝25F214y)を10馬身差で制して、待望の重賞初制覇を達成。

 前走、3月6日にケルソで行われたLRベット365プレミアチェイス(芝23F96y)も、7.1/2馬身差で楽勝しての参戦となっている。10ストーン5ポンド(約65.8キロ)という手頃なハンデとなったことも好感が持たれ、ブックメーカーの前売りでも1番人気に推されている同馬の手綱をとるのは、トム・スキューダモア騎手(38歳)だ。ウェスタンウォーハウスで14年のG1アークルチャレンジトロフィー(芝15F199y)を、シッスルクラックで16年のG1ワールドハードル(芝23F213y)やG1キングジョージ6世チェイス(芝24F)などを制している同騎手だが、グランドナショナルはここまで未勝利だ。

 ちなみに、同騎手の祖父マイケル・スキューダモアは、1959年にオクソに騎乗してグランドナショナルを制しているから、トム・スキューダモアが勝てば「祖父・孫」制覇という快記録が達成されることになる。

 なお、トムの父ピーター・スキューダモアも、英国でリーディングの座に8度も就いた障害の名手だったが、グランドナショナルは勝てずに終わっている。

 2番手グループは大混戦だが、中でも頭半分ぐらい抜け出ているのが、ウイリー・マリンズ厩舎のバローズセイント(セン8、父サンディサン、ハンデ10ストーン13ポンド=約69.4キロ))だ。仏国産馬で、祖国では6戦0勝と未勝利に終わった後、17/18年シーズンからマリンズ厩舎に加入。愛国の水が合ったのか、一変したパフォーマンスを見せ、シーズン最終戦となったパンチェスタウンのG1チャンピオンノーヴィスハードル(芝20F)で3着に好走している。18/19年シーズンからスティープルチェイスに転進し、シーズン終盤にライムリックのG3ヒューマクマホンメモリアル・ノーヴィスチェイス(芝24F120y)や、フェアリーハウスのアイリッシュ・グランドナショナル(芝29F)を含む3連勝をマーク。この路線のトップグループに躍進した。

 19/20年シーズン途中からハードルに回帰したが、前走から再びスティープルチェイスに戻り、2月27日にフェアリーハウスで行われたG3ボビージョーチェイス(芝25F110y)に出走して2着となっている。

 以下、前走ナーヴァンのG2ウェブスターカップチェイス(芝16F)を10馬身差で制し、2度目の重賞制覇を果たしての参戦となるエニーセカンドナウ(セン9、父オスカー、ハンデ10ストーン9ポンド=約67.6キロ)、エイントリー競馬場で12月に行われるG3ビーチャーハンディキャップチェイス(芝25F188y)で、19年・20年と2年連続2着となっているキンバーライトキャンディ(セン9、父フレメンスファース、ハンデ10ストーン10ポンド=約68.0キロ)らが、上位人気に名を連ねている。

 なお、18年と19年のこのレースを制しているタイガーロール(セン11、父オーソライズド)は、11ストーン9ポンド(約73.9キロ)のハンデを嫌って回避している。

 グランドナショナルの行方に、日本の競馬ファンの皆様もぜひご注目いただきたい。

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1959年(昭和34年)東京に生まれ。父親が競馬ファンで、週末の午後は必ず茶の間のテレビが競馬中継を映す家庭で育つ。1982年(昭和57年)大学を卒業しテレビ東京に入社。営業局勤務を経てスポーツ局に異動し競馬中継の製作に携わり、1988年(昭和63年)テレビ東京を退社。その後イギリスにて海外競馬に学ぶ日々を過ごし、同年、日本国外の競馬関連業務を行う有限会社「リージェント」を設立。同時期にテレビ・新聞などで解説を始め現在に至る。

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