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【桜花賞】現代の名牝系の代表馬となったソダシ

  • 2021年04月12日(月) 18時00分

歴史に残る偉大な先輩牝馬をしのぐすごい記録を達成


重賞レース回顧

白毛のソダシ(写真左)が桜の女王に輝いた(C)netkeiba.com


 重馬場のGI「大阪杯」を快走して6戦【6-0-0-0】となった4歳牝馬レイパパレ(父ディープインパクト)に続き、「桜花賞」を堂々と押し切った白毛の3歳牝馬ソダシ(父クロフネ)は、これで5戦【5-0-0-0】。またまたチャンピオン牝馬が誕生した。

 超高速の芝だったとはいえ、1分31秒1(前後半45秒2—45秒9)は、2019年のグランアレグリアの記録1分32秒7を大きく塗り替える桜花賞レコード。同時に、阪神のコースレコードを一気に「0秒8」も更新した。

 桜花賞を5戦以上無敗のまま制した馬に、1957年のミスオンワード(父Hard Sauceハードソース)の6戦6勝。5戦5勝だった1990年のアグネスフローラ(父ロイヤルスキー)がいる。しかし、現在とは重賞体系が異なるとはいえ、ソダシは2つのGIを含めこれで重賞4連勝だから、歴史に残る偉大な先輩牝馬をしのぐすごい記録を達成したことになる。

 オークスも制し8戦8勝となったミスオンワードは、産駒のアポオンワード(重賞4勝を含め11勝)などを筆頭に大きなファミリーを築きあげた。オークス2着のアグネスフローラは、アグネスフライト(日本ダービー馬)、アグネスタキオン(皐月賞馬)などの母になったと同時に、現代に連続する名牝系の代表馬となった。

 1996年、突然、誕生した白毛の牝馬をシラユキヒメと命名した金子真人オーナーは、その牝駒たちにシロクン、ユキチャンなど絶妙の名前を贈り続け、2012年生まれの白毛馬はブチコ(父キングカメハメハ)。母も、交配種牡馬も連続して自身が所有した馬で固め、ブチコの初仔がソダシ(父クロフネ)。「キングカメハメハ、ディープインパクト、マカヒキ、ワグネリアン」。4頭もの日本ダービー馬の金子オーナーは、世界で初めてとされる白毛のGI馬を提供したあと、今度は世界初の白毛のクラシックホースのオーナーとなった。

 やがて、アグネスフローラのように一族を繁栄させる代表的な牝馬となるのが、現代のソダシなのかもしれない。少しずつであっても、白毛馬は確実に増えるだろう。一族に配されてきた種牡馬はことごとくチャンピオンサイアー級であり、ソダシはたまたま誕生した名牝にとどまらない。早くも現代の名牝系の代表馬となった。

 途中からメイケイエール(父ミッキーアイル。ソダシとイトコの関係のシロインジャー産駒)が速いペースで飛ばした流れを、好位で追走。残り400mを切ったあたりで先頭に立ったソダシ自身は「前半推定45秒7-(1000m57秒3)—後半推定45秒4」=1分31秒1。高速馬場にしても非常に厳しいペースを追走しながら、後半の方が明らかに速いから、この中身の価値は高い。パトロールビデオで直線をみると、残り400mあたりで抜け出したソダシはほとんど横に動いていない。ブレない走法はバテていないことを示す。

 オークスの2400m…となると、近年は大半の馬がそうであるように歓迎ではない距離ではあっても、無難にこなせるのではないか。道中のペースが異なる。少なくとも2000m前後までは十分に守備範囲と思えた。

 直前に1番人気に変わったサトノレイナス(父ディープインパクト)は、「ハナ差」だった阪神JFにつづいて「クビ差」の惜敗。自身のスタートも一歩だったが、先行型ではないから18頭立ての馬群を切れ抜けるのは大変なことだった。直線、実に巧みにアールドヴィーヴル(父キングカメハメハ)の外に出したが、ゴール寸前の勢いをみると、大外18番枠が最大の敗因(マイナス)だったのは間違いない。

 でも、無念のルメール騎手が「これは仕方がありません」と振り返ったように、レース後に枠順の有利不利を嘆いてもどうしようもない。全兄サトノフラッグよりこなせる距離の幅は広いと思える。「オークスで巻き返したい(ルメール騎手)」。たちまち切り替えた。

 3番人気のメイケイエール(父ミッキーアイル)は、レースが始まるまでは決してイライラした動作もなかったが、横山典弘騎手が「最大のカギはスタート」と懸念していたスタートで後手を踏んでしまった。ポンと先行する形なら、激しくクビを振って行きたがる死角を露呈しなかったかもしれないが、馬群でもまれる形になってはもう折り合えない。

 他馬の位置取りが決まりかけた400m過ぎからの2ハロンのラップは「11秒2-11秒1」。ここで中位から進出して先頭は「34秒1-45秒2-56秒8→」の数字より、自身はきつい中身のラップを踏んだことになる。出走距離を変えて立て直すことになる公算大。

 3着ファインルージュ(父キズナ)は初の関西遠征。馬場入りしてファインルージュ自身がコースを確認するような仕草をみせていた。好位のインで折り合ってレース巧者ぶりを存分に発揮の満点の内容だった。ソダシを追い詰めるように上がり33秒7で伸びたが、今回は先着を許した2頭が強かったということか。でも、確実に成長していた。

 4着アカイトリノムスメ(父ディープインパクト)は、バランス抜群ながら、母アパパネのこの時期と比較するとまだまだ成長の途上を思わせる若い身体つきだった。母子制覇はならなかったが、母以上にこなせる距離の幅は広いかもしれない。

 差のある5着にとどまったアールドヴィーヴルは、休養をはさんでまだここが3戦目。豊かな資質の一端を示したにとどまったが、これでひと回り馬体が成長してくると、楽しみな牝馬に育ってくれるはずだ。

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1948年、長野県出身、早稲田大卒。1973年に日刊競馬に入社。UHFテレビ競馬中継解説者時代から、長年に渡って独自のスタンスと多様な角度からレースを推理し、競馬を語り続ける。netkeiba.com、競馬総合チャンネルでは、土曜メインレース展望(金曜18時)、日曜メインレース展望(土曜18時)、重賞レース回顧(月曜18時)の執筆を担当。

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