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【桜花賞】白毛馬初のクラシック制覇! ソダシを信じた吉田隼人騎手が魅せた人馬一体の好騎乗

  • 2021年04月13日(火) 18時00分
哲三の眼

ソダシと共に桜花賞を勝った吉田隼人騎手(C)netkeiba.com


史上初の白毛のクラシックホースが誕生! ソダシが無傷の5連勝で桜花賞を制しました。この一族の騎乗経験も豊富な吉田隼人騎手の、ソダシの特徴をしっかり掴んだ完璧なエスコートに、哲三氏も「まさに人馬一体の騎乗」と拍手。記憶にも記録にも残る、桜の女王誕生の瞬間を振り返ります。

(構成=赤見千尋)

パドックで感じたソダシへの心遣い


 桜花賞は2番人気だったソダシが勝利。白毛馬による初のクラシック制覇で盛り上がりましたね。(吉田)隼人君にとってはプレッシャーも大きかったと思いますが、見事な騎乗を見せてくれました。レースはもちろんですが、まず調整過程からのファインプレーが目に付きました。

 阪神の1600mをどう勝ちたいかというところが調教から見えて、1週前追い切りは2頭を前に置いて終いを伸ばす調整、当週はその勢いをどう制御するかというところで、併せ馬で馬なりという調整でした。これを踏まえて、ある程度当日落ち着いていられたらいい勝負になるだろうなと。

 パドックで隼人君が乗った瞬間から、ソダシにいつも通りの動きをしてもらうような心遣いがすごく出来ていましたし、返し馬の出だしの1歩2歩3歩も大事にしているなと感じました。中でも一番気を遣っていると感じたのは、輪乗りをしているところからゲートに行くところ。リズムを崩さないように、馬と話しながらなのかなという風に見えました。

 ソダシは人気にもなっていましたし、血統的にもゲートの難しさがある馬で、中間もゲート練習をたくさんしていました。その中で、桜花賞という大舞台でしっかりゲートを決められたのは、隼人君のファインプレーであり、厩舎陣営のファインプレー、長い時間一緒にいる厩務員さんの腕も大きいのではないでしょうか。

哲三の眼

勝因となったホースマンたちの“ファインプレー”(C)netkeiba.com


 絶好のスタートを切れたことは勝因のひとつで、練習してきたものを思い切って出してきたというところがファインプレーだったと思います。迷いのない出し方だったというか、好スタートは切りたいけれどハナには行きたくないなというニュアンスはなく、ハナに行くことになっても構わないという覚悟を感じる出し方でした。スタートを決めたいという強い思いと、思っているだけではなくしっかり計算して実行出来ていた。こういうところは今までソダシに乗ってきた感覚の中で、こうなればこうなる、ああなればああなる、ということをしっかり把握して騎乗出来ているなと。

 当日の馬場状態は傍から見ているだけだと外が伸びるのかなとか、高速馬場だけど内はどうなのかなという風に感じましたから、馬場的に不安になるところもあったのではないかと想像しています。でも今のソダシの状態ならば内側でも大丈夫だと、最初に内ラチ沿いを選択し、外に構えなかったことが大きな勝因だったと思います。あの場面で内側を開けて走っていたら、もっとレースが難しくなってしまったのではないかと。あのポジションを取り切ったことが良かったですし、途中から流れが速くなって、より好都合になりました。

「まさに人馬一体」安定感があったレース


 折り合い面は1週前追い切りの感覚が活きたのではないかと思っていて。坂路で前に2頭馬を置いて、外に出すとすごい脚で伸びてきているので、直線を向くまでこのままの態勢で我慢出来れば、絶対最後は頑張ってくれると信じられたのではないでしょうか。馬を信じるということは、その馬のことをよく知っているから出来ることで、知らないと信じきれない部分もあります。デビュー戦の頃から調教も含めて難しいことがたくさんあった中で、それを一緒に乗り超えてきているからこその安定感がレースで見られましたね。

 すごく繊細なところを繊細に扱っているように見せないで、繊細に扱っていたところがさすがだなと。動き出した時に手綱の位置をあまり変えないとか、細かいところがいろいろあるのですが、まさに人馬一体の騎乗でした。

 隼人君にとっては、これまでクラシックを勝っていないとか、外からの声もあったのではないかと感じます。僕自身もそういうことを言われたことはありますし、昔よりも今の方が見たくない声も見えてしまう環境ですが、しっかり集中して結果を出すことが出来ました。レース前の過程も含め、ソダシと共に桜花賞を勝ったという経験は、今後に繋がっていくと思います。

哲三の眼

「大きな自信になったのでは」と哲三氏(C)netkeiba.com


 ソダシの担当の今波厩務員が、インタビューやSNSなどで、「大変だけれどゴールドシップに比べたら大丈夫です」というようなことを仰っていましたね。隼人君にとっても今後の財産になると思いますし、大きな自信になったのではないでしょうか。

 隼人君は美浦所属から拠点を関西に移し、いろいろ試行錯誤しながら今に至るということで、改めて積み重ねていくことの大事さを実感しました。今上手くいかない、結果が思うように出せないと悩んでいるジョッキーたちにとっても、とてもいいお手本になったのではないかと。競馬は大きなレースだけではなく、午前中のレース、平場のレースもたくさんあります。今後はそういうところで目についたジョッキーも紹介していきたいです。

 2着だったサトノレイナスはクビ差と惜しい競馬でした。大外枠から難しいレースになったと思いますが、道中のポジションは仕方なく落としているけれど、内を回って最後の直線だけ外に出すという。クリストフ(・ルメール騎手)は今回もさすがの騎乗ぶりでしたね。

 ファインルージュに騎乗した(福永)祐一君も、相変わらず巧い騎乗でした。しっかり馬券圏内に持ってきて、さすがだなと感じました。

 今年の桜花賞はメンバー的にも高レベルだったと思いますし、勝ったソダシはもちろん、ここで負けた馬たちも今後が楽しみになる逸材がたくさんいましたから、オークスだったり、秋競馬に向けてどう繋がって行くのか、楽しみが広がりました。

1970年9月17日生まれ。1989年に騎手デビューを果たし、以降はJRA・地方問わずに活躍。2014年に引退し、競馬解説者に転身。通算勝利数は954勝、うちGI勝利は11勝(ともに地方含む)。

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