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新人騎手が続々と勝ち名乗り

  • 2021年04月20日(火) 18時00分

YJSでの活躍にも期待したい


 今年は中央・地方とも新人騎手の早い段階での初勝利が目立ち、この4月から順次デビューしている地方の新人騎手も続々と初勝利を挙げている(以下、4月19日現在の成績)。

 初勝利1番乗りは、デビューも4月6日で1番乗りだった船橋の木間塚龍馬(きまつか・りょうま)騎手。8日の船橋第8レース、4戦目での初勝利だった。

 騎乗したキモンルビーは単勝1.8倍の断然人気。1200m戦で10頭立ての大外枠。それでも果敢にハナを取りに行くと、3〜4コーナーでは2番人気だった森泰斗騎手の騎乗馬と併走となったが、直線を向いて振り切った。競り合った相手が森泰斗騎手で、そして自分が断然人気という状況では、心中穏やかでなかったのではないだろうか。

 茨城県出身で、小さい頃に船橋競馬場でレースを見て騎手になりたいと思ったという。龍馬という名前は、坂本龍馬みたいな人物になってほしいとの願いで名付けられたとのこと。有力馬多数の川島正一厩舎の所属ということでは、今後も人気馬に乗る機会がありそう。1年目は40勝が目標とのこと。

 続いたのは大井の菅原涼太(すがわら・りょうた)騎手。4月12日にデビューし、15日大井の第9レースで初勝利となった。

 実は菅原騎手は13日の第6レースでまことに惜しいレースがあった。騎乗したのが7番人気馬で、逃げて直線でも先頭。2番手につけていた1番人気の矢野貴之騎手とやや馬体を離しての追い比べとなり、レース映像では振り切ったようにも見えたが、残念ながら矢野騎手の騎乗馬がハナ差先着していた。むしろ焦ったのは1番人気の矢野騎手のほうではなかっただろうか。

 そして初勝利はデビューから8戦目。所属する堀千亜樹厩舎のコウギョウサウスで4番人気。押してハナを取ると、直線では2番手の馬に半馬身ほどまで迫られる場面もあったが、これを2馬身振り切っての勝利となった。

 菅原騎手は、松岡修造さんの「大丈夫。なぜなら僕は太陽だから」という言葉が好きで、競馬界の太陽のような存在になりたいとのことで、オレンジを基調にした勝負服が印象的だ。デビュー年の目標は同じく40勝とのこと。

 今回、兵庫からは3名がデビューしたが、4月14・15・16日に次々と初勝利を挙げた。

 3名とも13日にデビューしたが、翌14日の初勝利は、兵庫所属では初めての女性騎手となった佐々木世麗(ささき・せれい)騎手だった。

 実は佐々木騎手は初日の第8レースで単勝2.0倍の1番人気馬に騎乗していたのだが、1頭だけ離れた最後方を追走し、そのまま最下位入線ということがあった。それでも8戦目となった14日のメイン第10レースで騎乗した自厩舎のワシヅカミは単勝1.5倍の断然人気。互角のスタートからすんなり先頭に立つと、ぴたりと追走してきた吉村智洋騎手の3番人気馬を4コーナーあたりで振り切り、そのまま後続を寄せ付けないまま逃げ切った。

 両親が、ジョッキーの素質があるか見るために乗馬を習わせてくれたとのことだが、落語家を目指したこともあったという。1000勝を超える騎手になることが目標という。

 15日の園田第9レース、13戦目で初勝利を挙げたのは大山龍太郎(おおやま・りゅうたろう)騎手。初日の最終11レースでは、ハナ、クビという3頭接戦の悔しい2着があり、3日目での初勝利は5番人気ながら直線で鮮やかに抜け出した。

 小柄な体格で騎手という職業が自分に合っていると思い騎手を目指したという。「デビュー戦で勝つこと」という最初の目標は達成できなかったが、将来的には「超一流の騎手になることが」目標という。

 16日の園田第2レース、14戦目で初勝利は長尾翼玖(ながお・たすく)騎手。所属する橋本忠明厩舎のメイショウキンカクで、3番人気ながら3コーナーで先頭に立つと、追ってきた2着馬を6馬身ちぎっての圧勝だった。

 大阪出身で、父に京都競馬場に連れて行かれて騎手を目指した。その京都競馬場の乗馬センターに通っていたが、そこでの先輩だった石堂響騎手が兵庫でデビューしたことから、兵庫で騎手になりたいと思ったという。目標は「何かひとつでも記録をつくる」こと。

 名古屋の塚本征吾(つかもと・せいご)騎手は、19日デビュー当日の名古屋第5レース、4戦目で初勝利。単勝1.2倍の断然人気馬で、4コーナーではやや外に膨れる場面もあったが、直線先頭に立っていた馬をとらえ3馬身差をつける余裕の勝利だった。

 塚本兄弟の4番目。長男は金沢の甲賀弘隆騎手(船橋でのデビュー時は塚本姓だった)、次男は高知の塚本雄大騎手、三男は岩手の塚本涼人騎手で、四男が征吾騎手。さらに末っ子がもうひとりいて5人兄弟とのこと。両親や親戚に競馬関係者がいるわけでもないのに、兄弟4人が騎手になったということはすごい。

 まだ4月も中旬だというのに、ここまでデビューした9名中6名が勝利。それだけでも素晴らしいが、この6名はいずれもデビューした最初の開催で初勝利をマーク。新人騎手の初勝利が全体的にこれほど早いというのは過去になかったのではないか。

 このコラムでも何度か取り上げているように、近年は中央・地方問わず若手騎手の活躍が目立っている。あくまでも私見だが、かつては「見て覚えろ」「技術は盗むもの」という師弟関係で、勝てそうな馬はほとんど先輩騎手が乗るということも当たり前だったのが、最近では新人騎手でも有力馬に乗せることがめずらしくないし、また調教師や先輩騎手が積極的に指導するなど厩舎環境が変わってきての変化のように思われる。

 たとえば中央では古川奈穂騎手の初勝利が、所属する矢作芳人厩舎のバスラットレオンで、その次走でニュージーランドトロフィーを勝ったという素質馬。古川騎手が騎乗したときも1.9倍という断然人気だった。船橋の木間塚龍馬騎手や兵庫の佐々木世麗騎手も、初勝利は自厩舎の馬で、単勝1倍台の断然人気馬。木間塚騎手の川島正一調教師、佐々木騎手の新子雅司調教師はともに重賞常連の厩舎で、強い馬を育てる調教師は、人も育てるということなのだろう。

 そのほか、高知で4月10日にデビューした岡遼太郎(おか・りょうたろう)騎手は23戦に騎乗して2着・3着が各1回。ホッカイドウ競馬のシーズン開幕4月14日の第1レースでデビューした若杉朝飛(わかすぎ・あさと)騎手は、その1戦のみで6着。もっとも遅いデビューとなったのは、4月19日川崎でデビューした神尾香澄(かみお・かすみ)騎手だが、これはこの日が今年度の川崎開催初日だったのだから仕方ない。その初日は6レースに騎乗して、残念ながら掲示板内はなかった。

 地方競馬では昨年10月にデビューした騎手でも、佐賀の飛田愛斗騎手を筆頭に活躍が目立つだけに、今年も予定されているヤングジョッキーズシリーズ(日程は未定)での活躍にも期待したい。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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