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注目の佐賀短距離戦線

  • 2021年04月27日(火) 18時00分

次元の違うスピードを見せている3頭


 地方競馬の2020年度の売上が、史上最高だった1991年度(9862億円余り)以来、29年ぶりに9000億円を超えた、というのは3週前のこのコラムで取り上げたとおり。2012年度以降、地方競馬では売上が右肩上がりになっているのにともない、当然のことながら賞金や手当も上昇している。

 上昇といっても、どん底だった時代は馬主経済が成り立たないほどに落ち込んだ競馬場もあったので、そういう意味では、ようやく競馬経済が健全にまわるレベルに戻ったと言ったほうがいいかもしれない。

 賞金や手当が上がったことで、近年は中央などから高素質馬の移籍が増えている。それでいま、ちょっとした注目が佐賀競馬の短距離路線だ。

 4月25日、佐賀10レースで行われた菊池川特別(1400m)では、一昨年7月に大井から転入して以降、17戦15勝(うち重賞4勝)というドラゴンゲートが単勝1.2倍で断然人気。2.6倍で2番人気は、2018年の北海道スプリントC(JpnIII・門別)を制するなど中央オープンから転入初戦となったテーオーヘリオス。2頭の馬連複は1.2倍と人気が集中した。

 いつものようにドラゴンゲートが後続を離して単騎で逃げると、一方のテーオーヘリオスは中団を追走。ドラゴンゲートは3コーナー手前でも後続に6〜7馬身ほども差をつけていた。しかしそこから一気にまくってきたテーオーヘリオスが4コーナーでドラゴンゲートをとらえると、勢いそのままに直線半ばから楽に突き放し、鞍上の石川慎将騎手はうしろを振り返る余裕の勝利。2着のドラゴンゲートに6馬身差、さらに3着馬には5馬身差という圧倒的な強さを見せた。

 佐賀の短距離路線の注目馬は、この2頭だけではない。やはり中央オープンから転入してきたノーフィアーだ。佐賀初戦となった2月27日のアネモネ賞(1400m)は、中央での最終出走だったカペラS(14着)から馬体重プラス43kgの541kg。ほぼ2カ月の間隔で、さすがにその馬体増ではとも思われたが、スタートから難なくハナに立つと、道中ほとんど追われることなく2着に9馬身差をつけての圧勝。そして4月11日の六角川特別(1400m)まで3連勝としている。

 ドラゴンゲートとノーフィアーがここまで直接対決がないのは、同馬主、同厩舎(三小田幸人調教師)ゆえ。主戦も昨年10月にデビューしたばかりの注目の新人・飛田愛斗騎手だ。そこにライバルとして現れたのが、テーオーヘリオスということになる。

 佐賀では、1400mのサマーチャンピオン、2000mの佐賀記念(ともにJpnIII)という2つのダートグレード競走が行われているが、過去10年の成績を見ても、地元佐賀所属馬はサマーチャンピオンで4着1回、5着2回、佐賀記念では4着・5着各1回があるだけで、馬券圏内は一度もないという苦戦が続いている。

 テーオーヘリオス、ドラゴンゲートは9歳で、ノーフィアーは7歳と、いずれも高齢ではあるが、昨年はJpnIIIの北海道スプリントCを地元のメイショウアイアンが10歳で制したという例もある。メイショウアイアンは中央の準オープンで頭打ちとなり、2018年の8歳時に門別・田中淳司厩舎に移籍。その後に再生ともいえる充実期を迎えた。中央で頭打ちになっても、地方に移籍してから能力を発揮するという例は少なくない。

 佐賀競馬では、中央との交流で、いわば“馬場貸し”が続いている状況だけに、今回あらたに移籍してきたテーオーヘリオス、それにノーフィアー、ドラゴンゲートという、短距離路線で次元の違うスピードを見せている3頭にかかる期待は大きい。

1964年生まれ。グリーンチャンネル『地・中・海ケイバモード』解説。NAR公式サイト『ウェブハロン』、『優駿』、『週刊競馬ブック』等で記事を執筆。ドバイ、ブリーダーズC、シンガポール、香港などの国際レースにも毎年足を運ぶ。

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