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【天皇賞・春】めっちゃ可愛いおばけ!? ゴースト初GIへ「無事だったからこそ前向きに」

  • 2021年04月28日(水) 18時05分
馬ラエティBOX

名前とは裏腹にかわいらしい芦毛のゴースト(ユーザー提供:U^ェ^Uさん)


馬房のネームプレートにおばけのイラストが描かれた馬がいます。その名も、まさに「ゴースト」。担当する酒井慎調教助手は隙あらば(?)ゴーストの持ち物におばけのイラストを描き、愛情を注いでいます。しかし、前走・阪神大賞典ではまさかの競走中止。診断の結果、心房細動でした。レース翌日には回復し、短期放牧を挟んで順調に調整できていると話します。「調教を積むほど具合が良くなるタイプ」で、天皇賞・春に向けて状態を上げているゴーストについて伺いました。

(取材・構成:大恵陽子)

※このインタビューは電話取材で行いました

転厩前はヤバい噂が流れていたが…今はめっちゃ可愛い子!


──ゴーストはデビュー2戦目から橋口慎介厩舎に所属となりましたが、担当された時の第一印象は?

酒井 昨年、北海道に行く時から担当したのですが、うちの厩舎に転厩してくる時に「とんでもなく気の悪い馬がいる」みたいな噂が流れていたんです(苦笑)。誰がやる? となった時に、ワンアンドオンリーとかを担当していた甲斐(純也)さんが手を挙げられました。その後、僕は毎年北海道に出張に行かせてもらっていて、ゴーストが北海道に行くことが決まっていたので、甲斐さんから「連れて行って」と言われてゴーストを担当することになりました。

──橋口厩舎に転厩してくる時、そんな噂があったんですね! 去勢してからの入厩になりましたが、実際のところ性格はどうでしたか?

酒井 めっちゃ可愛いです! 僕は怖い時は知らなくて先入観もないので、「噛まない、蹴らない、めっちゃ可愛い子」と思っています。目は左右から見ると別馬のようですけど、それも可愛いくて、人間のことはどちらかと言うと好きで、顔も撫でさせてくれます。

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噛まない、蹴らない、めっちゃ可愛い子!(提供:酒井慎調教助手)


──去勢してそこまで性格が変わるんですね! そういえば、ゴーストの馬房のネームプレートにはおばけのイラストが描いてあって可愛いですね。

酒井 「おばけ イラスト 可愛い」って検索したのを見よう見真似で自分なりにアレンジして描いています。担当しているカバジェーロではカバのイラストを描いているのですが、それに比べたらおばけってすごく簡単で(笑)。楽しく仕事をしたいタイプで、新聞記者さんやカメラマンさんに褒められると嬉しくて、栗東に入厩するたびに描いています。

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左から初代(西宮Sの頃)、2代目(万葉Sの頃)


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こちらも左から3代目(阪神大賞典の頃)、現在


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それぞれ表情の違うおばけが!(提供:すべて酒井慎調教助手)


──すごく愛情が伝わってきます! 担当して初めて迎えた函館・横津岳特別こそ7着でしたが、その後は掲示板を外さない堅実な走りを見せていますね。

酒井 横津岳特別は人気がなかった地方馬のシンボが逃げ切り勝ちで、正直、信じ切れなかった部分があったのかなと思います。2走前の万葉Sは中京・芝3000mというあまり前例のない特殊なコースで難しさもあったと思います。それでも、絶望的な位置からがんばって5着に来てくれました。

──夏から秋にかけて2勝クラス→準オープンと連勝していますが、これだけ堅実に成績を残せるのには何か変わった点などがあったのでしょうか?

酒井 僕が今まで橋口弘次郎厩舎(解散)から見てきたオープン馬はムッキムキの筋肉をした馬が多かったんですけど、開業獣医さんがおっしゃるには、去勢すると女性ホルモンの影響で柔らかい筋肉になることが多いようです。たしかに、ブラッシングをしていてもカチカチの筋肉というよりも柔らかみのある筋肉です。なので、調教を積んでいても正直、あまり体に変化を感じません。性格もおっとりしているので、調教を積んでいってピリピリしてくる感じではないんですよね。変化という変化はあんまり分からないですけど、牧場から帰ってきた時はボテッとしていたシルエットが、だんだん絞れたシルエットになって、追い切りの動きも変わってきます。

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隙あらばイラストを…この通り、調教ゼッケンにもおばけ!(提供:酒井慎調教助手)


心房細動明けでも、調教を積むほどに状態アップ!


──騙馬特有の筋肉の柔らかさがあるんですね。前走・阪神大賞典では心房細動のため競走を中止し、心配されたファンも多かったです。改めて、当時の状況を教えていただけますか?

酒井 元々、集中力がふわって切れたり、すごくズブい面があるようで、札幌でルメール騎手で勝った時も「なまらズブい」とコメントを残していました。道中で手応えが怪しくなることを(鮫島)克駿は分かっていたからこそ、追うのをすぐにはやめなかったと思うんですよね。その後、止まり方がすごくて競走中止して、見た目には「脚元ではないだろう」とは思ったんですけど、ゴーストの元に行くのがホント足取りが重たくて……。

──嫌なことが頭をよぎったんですね。

酒井 獣医さんが心音を聴いて、「心房細動ですね」と言われたんですけど、レース後はどの馬も息を切らしているし、正直分かりませんでした。栗東の厩舎に帰った後も息が入ってキョトンとはしているんですけど、獣医さんが聴診器で聴いたら「まだ治っていないですね」って。僕ではまだ分からないですね。

──もう何年も馬に携わってらっしゃいますが、それでも外見からでは分かりづらいのが心房細動なんですね。レース後はどんな風に過ごしましたか?

酒井 レースの次の日に、獣医さんから「もう大丈夫ですね」と診断を受けて、短期で放牧に出ました。

──たしかその頃、酒井助手は落馬で怪我をされていたような…。

酒井 そうなんです。不注意というか、技術不足で。でも、ゴーストをどうしても自分で担当したかったので、痛み止めを2錠飲んでがんばって仕事しました。今回、自分が体験してみて、ジョッキーって本当にすごいなと感じました(苦笑)。

──たしかに、ジョッキーのみなさんは骨折しても全治より早く復帰されますもんね。酒井助手も大事には至らなくて何よりです。さて、ゴーストは心房細動明けとなりますが、状態はいかがですか?

酒井 長い間休ませてはいないので、体もそんなにボテッとしていませんし、いつものレース後より脚元もスッキリしています。毎週、克駿が乗ってくれているんですけど、21日に追い切った時は「西宮Sを勝った時と同じくらい、抜群に具合がいいですね」と言ってくれました。あの時は、アルゼンチン共和国杯を目標に入厩してきたんですけど、出走枠に入らなくて目標を2週間延ばしたのがすごく良かったんです。調教を積むほどに具合がよくなるタイプのようです。

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西宮S勝利時。この時と同じくらい抜群に具合がいいそう。(C)netkeiba.com


──では、順調に調整ができているんですね。

酒井 そうですね。これは無事だったので言えることなんですけど、前走の競走中止を含まなかったら、すごく長い期間で調教を積めていると捉えられます。なので、他の馬よりもアドバンテージがありますね、みたいな話をしています。

──阪神大賞典で競走中止の瞬間はさぞ肝を冷やしたでしょうが、無事だったからこそ言えることですね。

酒井 本当にそうです! 無事だったからこそ、調整過程を前向きに捉えることができます。

──改めて、天皇賞・春に向けての気持ちを教えてください。

酒井 具合は本当に良さそうです。前走の阪神大賞典は、重賞戦線で戦っている馬たち相手にどれだけ通用するかを図るのにちょうどいい一戦やなと楽しみにしていたのですが、結果的に心房細動で分かりませんでした。もしかしたら全然通用しないかもしれませんが、まだ分からないので楽しみの方が大きいです。舞台はGIになりますけど、具合もいいですし、どれだけやってくれるのかな、と期待しています。

(※文中敬称略)

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