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先行き不透明なイベントの行方

  • 2021年04月29日(木) 18時00分

終息後も以前のように開催できるのか不安が募る


 例年であれば、毎年7月下旬の土日に開催している浦河町の馬イベント「シンザンフェスティバル」の準備が始まる頃だ。しかし、新型コロナ禍により、各地で開催予定の夏イベントは、多くが中止もしくは延期などの措置が取られつつあり、我がシンザンフェスティバルも、昨年に引き続き、今年の開催も厳しいであろうというムードになっている。

 27日(火)、浦河町役場にフェスティバル実行委員とJRA日高育成牧場総務課、浦河町軽種馬生産振興会青年部、ひだか東農協などの関係者が集まり、連絡協議会が開催された。

 その協議会の冒頭、事務局(浦河町役場産業課)より提示されたのは、「中止」もしくは、10月に予定されているジョッキーベイビーズ(東京競馬場)が実施される場合、「北海道地区予選を関係者のみで行う」というプランである。

 シンザンフェスティバルとジョッキーベイビーズ北海道地区予選は同一日に開催しており、これらを合わせて「うらかわ馬フェスタ」と称する。シンザンフェスティバルの方は、このところの新型コロナの感染拡大がより一層深刻度を増していることからも、通常開催は不可能と結論が出され、それに対しての異論は出なかった。

 ただ、ジョッキーベイビーズの方は、JRA日高育成牧場によれば「未だ結論が出ていない」とのこと。より正確に言うと「中止する、と決定したわけではない」との回答である。

 例年、ジョッキーベイビーズは、10月初旬の毎日王冠の日、最終12レース終了後に東京競馬場の芝コースで実施されてきた。近年は北海道から沖縄まで全国8地区からそれぞれ代表が前日から東京競馬場に集まり、実際に騎乗するポニーを抽選で決め、かなりの時間を割いて練習を重ね、本番に臨んできた。

 その地区毎の代表は、各地で行われる予選で決定する。ほとんどが走路を使用したレース形式で行われ、着順によって決められる。そのために、予選の募集要項が発表されるのは例年だと6月中旬になる。それに則り、各地で概ね7月〜9月の間に予選が実施されるのだ。

生産地便り

一昨年の北海道予選の様子


 未だJRAも明確に方針を打ち出せないでいるのは、言うまでもなく新型コロナ禍の終息見通しが立っていないからである。今の時点では、5月9日までの東京開催と5月2日までの阪神開催が無観客に変更されたということや、関東関西にあるウインズも5月9日まで営業中止する、という発表のみで、その翌週以降のことは決まっていない。

 今後の新型コロナ感染拡大の状況を見極めた上で、その都度判断していく、ということなのだろうが、このところの変異コロナウイルスの蔓延状況を見ると、そう簡単には感染者が減少に転じて行かないように思える。だとすれば、当分の間は、観客を仮に入れるにしてもネット予約者のみであろうと思われ、以前のように不特定多数が自由に制限なく入場できるようになるのは、かなり先のことになるのではないかと諦めに似た気持ちにもなってくる。

 シンザンフェスティバルは、周知の通り、浦河町で誕生した5冠馬シンザンの功績を称え、馬事振興、地域振興のためにその名をイベントに拝借したものである。

 シンザンは昭和36年4月2日に浦河町姉茶の松橋吉松牧場で産まれた。今年は、奇しくも生誕60周年になる。生きていれば、今月2日には満60歳を迎えたわけである。新型コロナ禍さえなければ、フェスティバルの時にでも還暦祝いとして何かの記念行事ができたはずだが、この状況ではそれも叶わない。

生産地便り

▲今年で生誕60周年を迎えたシンザン、▼放牧帰りで斉藤優氏に連れられる様子


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 そして、何より気になるのは、今後コロナ禍が終息した時に、果たしてこれまでと同じようにフェスティバルを開催できるか?ということ。イベントには多くの人々の協力を仰がなければならず、加えて資金も要る。コロナ以前とコロナ以後とでは世相が激変してしまう可能性もある。予測がつかない問題だけに、不安感ばかりが募ってくる。

岩手の怪物トウケイニセイの生産者。 「週刊Gallop」「日経新聞」などで 連載コラムを執筆中。1955年生まれ。

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