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GI発走直後の落馬といえば

  • 2021年05月13日(木) 12時00分
 先週のNHKマイルカップで、3番人気に支持されていた藤岡佑介騎手のバスラットレオンがスタート直後に落馬し、競走を中止した。残念ではあったが、人馬ともに無事だったのが何よりだ。矢作芳人調教師のコラムによると、日本ダービーに向かうことを考えているという。

 バスラットレオンは非常に状態がよかったようだ。矢作師はそのコラムに「アクシデントや故障は往々にして状態が良い時に起こる」と書いている。

 なるほど、いつも以上に活力があるがゆえに、勢い余って脚を滑らせたり、バランスを崩したりしてしまうのか。

 大舞台のスタート直後の落馬として、まず思い出されるのは、1987年の有馬記念で3番人気に支持されていた根本康広騎手(現調教師)のメリーナイスの落馬だ。そのレースの4コーナーでは、1番人気のサクラスターオーが故障を発生して競走を中止した。前月の天皇賞・秋で初めて馬券を買ったばかりのビギナーだった私は愕然とした。

 10番人気のメジロデュレンが勝ち、7番人気のユーワジェームスが2着。枠連4-4は1万6300円(当時は馬連、三連単などは発売されていなかった)の高配当になった。

 当時、私はフジテレビの報道番組「FNN DATE LINE」の特集枠の構成に携わっていた。職場に競馬が好きな人が結構いて、映画『優駿』に使うレースシーン撮影のため、同年のダービーでは24台のカメラを用意して、出走したすべての馬をスタートからゴールまで追いかけた話などを聞いていた。そのダービーで6馬身もの差をつけて勝ったメリーナイスはとんでもなく強い、という話も聞かされていたので、当然、買い目に入れていた。

「ゴール前で1-1になりそうだったのが、1-4になって、最後は4-4になったな。あれも競馬なんだよ」

 何しろ34年も前のことなので、記憶にはあやふやなところがある。その言葉は覚えているのだが、誰が言ったのかは、今ひとつ自信がない。報道部のベテラン社員で、東大ボート部出身のAさんだったか。それとも、メリーナイスが勝ったダービーでもカメラを回していたというカメラマンのひとりだっただろうか。

 いずれにしても、4-4の万馬券を獲ったという自慢話だった。Aさんだったとしても、カメラマンの人だったとしても、健在なら、今は80代なかごろか、それ以上だ。

 お元気だろうか。お元気なら、新型コロナウイルスのワクチン接種の予約を無事済ませることはできただろうか。

 私と同世代の知人たちは、親のワクチン接種予約でヒーヒーいっている。自治体のシステムの不備に苛立ち、親のワガママにワナワナし、終いには、早々に予約できた人から自慢話を聞かされてキレそうになり……と、大変である。

 集団接種など、ここ数十年で初めてのことだから、混乱するのは当然なのか。

 ここ数十年で初めてというと、私のトレセン取材も、そうだ。正確には「トレセン不取材」なのだが。

 私が初めてトレセンを取材したのは、前述した87年の有馬記念の少し前のことだった。「FNN DATE LINE」の特集枠で有馬記念を扱うことになり、Aさんと一緒に行ったのだった。

 以降、日常的に、というほど頻繁ではないが、ちょくちょく東西のトレセンに取材で訪れるようになっていたのだが、去年はついに、一度もトレセンに足を踏み入れなかった。近くまで出向き、関係者に出てきてもらって取材したことがあっただけだ。

 まあ、状況が状況だけに、仕方がない。競馬がスケジュールどおり開催されているだけでもよしとすべきなのだろう。

 スポーツ誌「ナンバー」のダービー特集の原稿がようやく一段落した。15枚、10枚、8枚の3本だった。短期間にそれだけの〆切をこなすと、さすがに気が抜ける。

 そのひとつがリモートでのインタビューとなり、私も初めてZoomなるものを使うことになった。心配なので、インタビューの前に編集者とリハーサルをさせてもらって、よかった。自宅兼仕事場ではリビングにワイファイのルーターがあるため、廊下を隔てた仕事部屋のデスクトップパソコンだと何度もフリーズしてダメだということがわかった。背景が仕事部屋の書棚だといかにもそれっぽくて雰囲気があるのだが、仕方なくSurfaceを持ってリビングに移動し、久保田政子画伯によるディープインパクトの油彩をバックにインタビューした。

 実際に使ってみて、便利なのでびっくりした。電話よりずっとスムーズにコミュニケートできる。リアルの取材では、聞き手の私と取材対象が向き合って話し、私の横に座った編集者がときどきカットインしてくるというパターンなのだが、ほぼそのままの関係を保ってインタビューを進められる。これなら、コロナが収束してからも、海外など、離れたところにいる相手の取材に使えそうだ。

 これから、がん検診と健康診断の結果を聞きに行く。結構時間が経っているのに向こうから何も連絡がなかったということは、きっと大丈夫なのだろう。

 大丈夫といえば、我が軍こと読売巨人軍は大丈夫なのだろうか。戦績そのものは悪くないのだが、菅野と坂本の離脱の影響が、今後じわじわと出てきそうだ。また、これは独り言だと思って聞いてもらいたいのだが、早く大城とコバちゃんを入れ替えないと、今年は阪神に優勝されてしまうのではないか。

 阪神の超大型新人のサトテルをサトテツと言いそうになる競馬ファンは私だけではないと思うが、チームプレーのスポーツでも、ひとりの存在で全体が大きく変わるものだ。我が軍はコバちゃん、阪神はサトテルがキーになる。

 独り言はここまで。

 いつもながらとりとめのない話になってしまった。

 では、病院に行ってきます。

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作家。1964年札幌生まれ。Number、優駿、うまレターほかに寄稿。著書に『誰も書かなかった武豊 決断』『消えた天才騎手 最年少ダービージョッキー・前田長吉の奇跡』(2011年度JRA賞馬事文化賞受賞作)など多数。netkeiba初出の小説『絆〜走れ奇跡の子馬〜』が2017年にドラマ化された。最新刊は競馬ミステリーシリーズ第6弾『ブリーダーズ・ロマン』。プロフィールイラストはよしだみほ画伯。

関連サイト:島田明宏Web事務所

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